第2話 餌
〈トントントントン…〉
何か、階段を下りる音が聞こえる。
「ミャーかな」
寝ていた私は重い瞼を擦りながらいそいそと身体を起こした。
ウチには一匹、ミャーという猫がいる。
ミャーは普段は二階で寝ているが、餌の時間の午後2時になると餌が置いてある一階の台所へ下りてくる。
その時、トントンと足音が鳴るので分かりやすい。
「はいはい、今行くよ」
よっこらせと重い腰を上げ、猫が待っているであろう台所へ行こうと自室のドアに手をかけた。
「あれ?」
ふと、時計を見る。
午後3時。
餌の時間ではない。
ミャーはここ数年、餌の時間を間違えたことはない。
「ボケたか…?」
しかし
「みゃー…」
ドアの向こうからミャーの鳴き声が聞こえる。
『早く餌をくれ』
そう言っているようだった。
「みゃおーん…」
「ああハイハイ、今行くからね」
鳴き声につられるように思わず返事をして愛猫の元へ行こうとした。
その時。
「みゃー」
ビックリして振り返ると、自室の隅の方からミャーがノソノソ現れ、大きく口を開けながら欠伸をしていた。
「あれ?」
扉の向こうにいるはずのミャーが私の部屋にいる。
ミャーが私の部屋にいる時は、餌を食べ終え眠くなる時だ。
ということはミャーは時間通り餌を食べたことになる。
「じゃあ、あの鳴き声は…」
確かめようと、手をかけていたドアノブをゆっくり回そうとしたとき、開けかけていたドアの隙間から…
「…ァァァ…ヴァァァァ…ァァ…」
あのまま部屋を出ていたら…そう考えると、今でも鳥肌が立つ。