お兄さん
わたしは日本に生まれた普通の中学生だった。
両親から愛されて、いつもご飯を食べて、
なにも変わらない生活をしていた。
でも、あるとき友だちと悩んでしまった。
つまらない喧嘩だった。
それが、5日目に入った日のことだった。
わたしは、学校から帰っているときにコンクリートに挟まれている、たんぽぽを見つけた。
そのたんぽぽは今のわたしと似ている気がして、
持ち帰ろうとした。
それでたんぽぽを摘み取った瞬間、地面が光り始めた。
本当に突然の出来事だった。
光の先で、わたしはお兄さんに会った。
お兄さんの目には光が灯っていて、
それでも何かを諦めているような目だった。
お兄さんは、わたしの手を掴んだ。
その手は優しくて、懐かしいような気がした。
考えてみると、昔、お父さんとお母さんにもこうされたことを思い出した。
お兄さんは、基地のようなところへ案内してくれた。
だからわたしは感謝の意味を込めて、たんぽぽを
渡した。もう会えないんじゃないかと思った。それで
もしかしたら、わたしと似ている花だけは、連れて行って欲しかったのかもしれない。
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あれから、一か月がたった。
「なんで、なんで…」
わたしはお父さんやお母さんに会えないこの状況に、
涙を流していた。
寂しい、寂しいよ。
他の"ゆうしゃ"という子たちはいたけど、
うまく馴染めなかった。ここに来る前に、友だちと
喧嘩をしてから、どうしたら良いのかわからなかった。
なんで、喧嘩なんかしちゃったんだろう。謝りたい。
謝って、また仲良くしたい。
ガシャッ 不意に、扉が開かれた。
そして、扉からあのときのお兄さんが出てきた。
「「「おじさん!」」」
子ども達も、お兄さんを知っているみたいだ。
「おお、久しぶりだな。」
ここを管理しているというおじさんが言った。
「ここを脱獄するやつがいないか見に来たんだよ。
俺がいた方がいいだろ?」
「そうか。」
おじさんが少しはに噛んでいった。
それから、お兄さんは子ども達におもちゃ、のようなものを配り出した。
そして、わたしの番がまわってきたらしい。
「おい、泣くな。花を持ってきてやった。お前、花が好きなんだろ?」
そういって、お兄さんは花らしきものを差し出した。
「なにこれ?」
「花くんだ。俺の手作りの。」
て、手作り… 目がすごい上に突っ張ってるし、鼻も、しの字に曲がっている。なにこれ?
「そ、その… ありがとう。
…それは置いておいて、じゃあな!じゃなかったの?」
「だから…脱獄しないか見張っているんだよ。」
「じゃあ、これはなに?」
「………じゃあな。」
ツンデレというやつだ…見張るためだったら、おもちゃなんて持ってくるわけないのに。あと、ポケットから前にあげた、たんぽぽの押し花がでてるし。
「あっ、まってよ。またね!」
「………。」
なんか、泣いていたのがバカらしくなってきた。
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