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「愛によろしく」など

私には叶わなかったしあわせ

作者: 維酉

〈梅雨色〉


梅雨色に染まった傘の透明はかえってこない きみが好きです


「Dなんて似合わないかな」「そんなことないよ」「そうかな」「そうだよ」「そっか」


いままでの愛の言葉を加算して答えを出すと5ぐらいだった


いつだって七月六日の記念日を忘れるために生きる系少女






〈コスパのいい毎日〉


「百均で希望も取り扱います。コスパのいい毎日をどうぞ!」


消費して暮らしはいつも単調な色をしている 雨は降らない


好きだった曲を流してなんとなく嫌いになってまた好きになる


からっぽを絶望と呼ぶひとびとは本当の絶望をしらない


珍しく雨の降らない週末に雨の真似して濡らしたりした






〈寿命を四十二秒伸ばした〉


朝早く死人のニュースが流れ出す部屋の隅で生きながらえてた


新聞の一面に自殺者の話 わたしの名前でないのが奇妙


手慰みにチラシを箱のかたちにし寿命を四十二秒伸ばした


飛び降りた彼女が揺れる彼岸にもいずれゆくから恋をしている






〈微妙な月〉


素足とはベランダに出るためのもの つまり微妙な月が出ている


ベランダとは頬にキスするためのもの つまり微妙な月を見ている






〈空箱〉


空箱に高いコンドームを入れてベッドの下に仕舞ったりとか


空箱にみかんケーキが入ってたことを知るのはわたしだけでいい






〈金曜日のセックス〉


いくつかの凹んだビール缶にしろひとによっては愛になりうる


宇宙から隕石が降る妄想をきみに抱かれるときはしている


私には叶わなかったしあわせは誰かのもっとよい夜である


死にたいと思ったときの支えにはならない 金曜日のセックスは


歌よりも大事なものがある夜にべつのおとこの夢をみている


抱擁に安堵していた梅雨はこれ この梅雨であるの そのはずだった


吐瀉物が哀しい吐瀉物が虚しい吐瀉物が苦しい吐瀉物が


街灯の消える時間に帰るのが土曜日の寂しさになってく


お隣に失礼します これからも隣に失礼していいですか






〈シイラはわたし〉


低気圧の影響により午後からは雨となります(宇宙はまっしろ!)


人魚なら夜の闇でも海として泳いであえぐいきものなのに


いっせーのせーで飛び込む人魚らの群れに加わるシイラはわたし






〈愛とか〉


私たち終わりにしよう 愛とかが丸めたティッシュにならないうちに


誰よりもきみの握った庖丁に殺されたいと思ってたのに


簡単にひとを殺せる世の中で使わない歯ブラシだけ永遠


懐かしむことも忘れた七月の雨はおやすみを告げて夏へ

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは(^-^)/ 短歌ですか、いいですね。でも私、俳句ならほんの少しだけ分かるのですが、短歌のセオリーというやつは全くです……。 口語なので、俵万智っぽいなあと思いました(七月六日も…
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