表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
第4章:教えます、アマノテウス攻略法
64/118

明かされる史実

 翌朝になり、城の開放時間と同時に訪れたために門番をイラつかせながらも、宝物庫へと足を運んだ。

 今日こそ失われた5000年(私にとっては)を解き明かそうと意気込んだものの……


「へ~、じゃあカミーユさんはスピード出世したんだね」

「い、いやぁ、それほどでも……」デレデレ

「…………」


 私の横でイチャつく二人は今日が初対面。

 ――にも拘わらず宝物庫でイチャイチャイチャイチャと。

 方やセイレーン方やお城の兵士と、いったい何してくれてんのやら……。


「それでそれで? カミーユっちは好きな人とかいないの?」

「好きな人! い、いえ! 自分は仕事一筋でありますから……」

「ま~たまたぁ。そんな事いって実は――」


 こっちは真面目に文献を漁ってるってのに楽しそうにもぅ……。

 いや、逆に考えれば集中できるから良いのかもしれない。


「ね、ね、アイリもそう思うよね?」

「……そうね」

「ほらぁ、やっぱり~」


 私に絡んでこなければたけど……。


「……コホン。しかしアイリ殿は勤勉であられますなぁ。進んで歴史を学ぼうとする冒険者は皆無ではないかと」

「あ、露骨に話を逸らそうとしてる~。やっぱり下心がアリアリなんだ~、このこのぉ♪」

「い、いえ、そういう訳では……」


 知識を得ようとする冒険者は少ないってのは、いつの時代も同じか。

 逆に一部の勤勉な冒険者は高ランクの冒険者として名を馳せたり――


「ん? 冒険者ギルド総本部?」


 文献に(さき)の一文が出てきた。

 5000年前の世界に総本部なんてなかったはず。


「冒険者ギルドの総本部を知らないでありますか? 過去に(さかのぼ)れば、グロスエレム教国の崩壊と同時にできたという話ですな」

「という事は、教国のあった場所に総本部があると?」

「はい。グロスエレム砂漠の中心にあり、周辺国は手を出しにくいと聞いております。更に各国の勇者や騎士団長、ベテラン冒険者などが国を捨てて集まっているため、小規模ながらも大国と同等の戦力を保有しているとか。そもそも始まりは――」


 物知りなカミーユさんによると、教祖が代わるごとに財政が悪化していき、ついには国家破綻に至ったのだとか。

 貴族は逃げ出し平民は難民として離れ、残ったならず者は徒党を組んで周辺国を脅かした。

 そこへ颯爽(さっそう)と現れた元勇者がならず者を蹴散らし、冒険者ギルドを立ち上げたのが始まりらしい。


「そこへ退役軍人や引退したベテラン冒険者などが集い、他国がおいそれと手を出せない状況を作りあげた。これが2000年ほど前の出来事ですな」

「なるほど」


 冒険者ギルドの総本部ね。

 これは一度行ってみなきゃだわ。



「今日はありが――」

「楽しかったね、カミちゃん。また遊びに来てもいい?」

「も、もちろんであります! じじじ、自分でよければいつでもお相手を!」

「マジ? じゃあじゃあ、次のオフは~」


 いつまでやってんのよアンタら……。

 というかセリーヌ、アンタは年中ぶっ通しでオフでしょうが。


「ほら、さっさと帰るわよ」


 グィッ!


「おぅえ! だ、だがらぐびをじめないでっで……」


 セリーヌの首を掴んで城を出ると、人気(ひとけ)のない所へと移動する。

 周囲に誰もいないのを確認し、ナーウィンの街付近へと転移。

 冒険者ギルドでアマノテウス攻略の報告を行い、宿で情報を整理することに。


「ねぇ、なんだって国境跨いの街に転移したわけ?」

「一旦落ち着くのと、この街を通ってゴールドキャニオンに渡るためよ。通過記録を残さないと不法入国になるから、後々バレると面倒くさいのよ」


 特に商会に所属してると、商会全体がキナ臭い目で見られちゃうわ。


 ポフッ


「……で、さっそく昼寝?」

「いいじゃない別に。夕方になるまで文献漁ってたんだから疲れたのよ」

「でもさ~、アイリってば猛スピードでペラペラ捲るだけだったじゃん? あんなんで内容覚えてんの~?」

「ああ、それね。もちろん覚えてないわ」

「……へ?」

「私自身は覚えてなくても、目を通した内容はいつでも思い起こせるのよ」


 これは【ミルドの加護】による恩恵で、頭の中に図書館が出来てるって言えばいいかな?

 その図書館にはいつでもアクセスできて、知りたい情報を瞬時に引き出せるのよ。


「それって凄くない? まるでお婆ちゃんの知恵袋じゃん!」

「はいはい。セレンの前では言わないでよね」


 お陰で大部分の世界情勢も把握できたし、今回は大収穫だった。

 但し、不可解な部分もある。


「セリーヌはアイリーンって街を知ってる?」

「アイリーンなら知ってるよ。5000年前にアイリが作った街でしょ?」

「うん正解。じゃあその後どうなったかは?」

「その後? え~と…………あれ? どうなったんだっけ?」


 これが不可解な部分よ。

 アイリーンはよほど有名だったらしく、5000年経った今でもキチンと記録に残っている。


 ところがよ? どうして無くなったとか、どこかに移転したとか、そういった記録が一切ないのよ。


 つまり、アイリーンはダンジョンの中にある珍しい街で、色んな種族で賑わってました~って書いてあるのに、じゃあその後はどうなってるの~? って部分がスッポリ抜け落ちてるのよ。


 有名なら逐一記録されててもおかしくない。

 むしろ記録されてないのが異常なのよ。


「もう一つ質問。今現在アイリーンはどうなってると思う?」

「そんなの、とっくの昔に無くなってるに決まって――あれ? そういえばいつの間に無くなったんだろ?」


 はい、コレよ。

 有名なはずのアイリーンがいつの間にか無くなってると認識している。

 たぶんカミーユさんに聞いてもセリーヌと同じ回答が返ってくるはずよ。


 まさか全員がいつの間にか忘れてるなんてあり得ないし、仮に無くなったのなら記述されてなきゃおかしい。

 もうね、まるで全ての人の記憶が操作されてるかの――いや、アイリーンそのものが消されたと言ったほうが正しいかもしれない。

 これは……


「面倒だけど、世界中を回って一つ一つの史実を繋げていくしかないのかも」

「え? もしかして世界旅行!? なにそれ楽しそう!」

「あ……」


 つい声に出してしまった……。

 面倒なセリーヌを連れて面倒な旅? ちょっと考えさせてほしい。


「ね~ね~、あたし旅行に行くならダンノーラがいいなぁ」

「あ~、ダンノーラねぇ……」


 文献によると、5000年前にレジャーアイランドとして開国したらしく、今では観光先スポットとして大人気なんだとか。


 そう、ここで注目したいのは5000年前って部分よ。

 ひょっとしたらと詳しく調べたら、裏で画策した人物の中に()()()とバッチリ記録されてやんの。

 私はいったい何を仕出かしたのやら……。


「けどまぁ、旅行に行くのはまだ先ね。今はアイリーンを復活させて、キチンと足場を固めなきゃ」

「え"~~~? つまんな~ぃ」

「そんなに行きたきゃ一人で海を越えて行きなさい。セイレーンなら余裕でしょ?」

「だから余裕過ぎてつまんな~ぃ」


 ああ言えばこう言う……。

 もういっそのことマリーベルのところに預けてこようか?

 あの人も大概面倒だし、同類で気が合うかもしれない。


『アイリ様、今よろしいでしょうか?』


 おっと、久しぶりにギンからの念話だ。


『どうかした?』

『はい。少々マズイ事が起こったらしく、ミラクルさんが取り乱してるようでして』


 マズイ事?

 

『分かった。なるべく早く戻るようにするわ』

『お願い致します』


 商会の運営に不備でもあったのかな?

 今日1日はゆっくりするとして、明日にでも帰ろ――


 フィキーーーーーーン!


「グッ!?」


 まただ、またこの感じ!

 ()()()()が時を止めたのよ!


「いくらなんでものんびりし過ぎよ」


 昨日と同じ格好で現れた、白い仮面の金髪少女。

 案の定セリーヌはベッドで横になったまま動かず、その隣で例の少女が座っていた。


「今度は何の用? まさか昨日の今日で戦うつもり?」

「んなわけないじゃない。一つ助言するけれど、ミラクルを助けたいなら今すぐ戻りなさい。じゃないと手遅れになるわよ?」

「……手遅れ?」

「信じる信じないはアンタの勝手よ。ただ一つ言えるのは、今のミラクルじゃ仲間の死は乗り越えられない。救えなかったと気付いたら、永遠に心を閉ざしてしまうでしょうね」


 仲間の……死? 永遠に心を閉ざす……。


「アンタには現状を覆すだけの力がある。悔いのない選択をしなさい」


 シュン!


「消えたか……」


 昨日と同じく仮面の少女はどこかへと転移し、時間が動き出した。


「セリーヌ、すぐにアイリーンへ戻るわ」

「……へ? なんで急に――おぅえ!」


 セリーヌの首を引っ掴んで宿を出てゴールドキャニオンへと入国し、人が居ないのを見計らってアイリーンへと転移した。

 そんな私を待ち受けていたのは……



「離してエレイン! 早く――早く助けに行かなきゃ!」

「落ち着いてくださいマスター。まだ()()()と決まったわけではありません」

「その通りですわ。まずは正しい情報入手が先決でしてよ?」


 取り乱しているミラクルを数人で必死に宥めている。

 ここまで荒れてるのは初めて見たわね。


「落ち着きなさいミラクル。いったい何があったの?」

「アイリぢぁぁぁん!」


 号泣しながら私に飛び込んできたミラクル。

 やがて顔を上げると、涙ながらに訴えてきた。


「たずげてアイリぢゃん! 聖徳(しょうとく)さんが――聖徳(しょうとく)さんが――」

「聖徳?」


 聖徳って言うと、魔女の森の西側にダンジョンを構えてたダンマスね。

 ミラクルとも仲が良いとか。


「ひざじぶりに通信じだら、ダンジョンが無いって表示ざれでぇぇぇ!」

「ええ!?」


 ダンジョンが無い――つまりダンジョンが攻略された?

 アマノテウスは捕えたはず。まさか他にも魔女の森を狙ってる奴が……。


(今のミラクルじゃ仲間の死は乗り越えられない)


 あの少女の台詞が脳裏に甦る。

 迷ってる隙はないわ!


 ガシッ!


「行きましょ。行って直接確かめるのよ!」

「ア、アイリちゃん!?」

「ちょ、置いてかないでよぉ!」


 気付けばミラクルの手を掴み、アイリーンを飛び出していた。


これにて第4章は終わりです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ