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奴隷商とリフォーム

 眷族の二人――ザードとホークを伴い、プレイモアへとやってきた。

 この街の領主であるコルザレスと、ラファエロ商会の会長の座にいるラファエロを捕まえるためよ。


「アイリはん、どっちから手をつけるんや?」

「ラファエロ商会からよ。この商会ったら犯罪者じゃない奴隷を扱ってるから、彼らを解放してやろうと思ってね」


 奴隷と言えば犯罪奴隷と決まっていて、それ以外の奴隷――つまり拐われてきた子供なんかは違法奴隷と言われている。

 そう、ゴールドキャニオンを含む5ヶ国の商業国家では違法であり、万一バレると領主といえど、たちまち犯罪者となるってわけ。


「なるほど。そのために()()へ来たので御座るか」

「そ。諜報員の働きで、()()()()()()がラファエロ商会の傘下だと判明したからね」


 目の前にあるのは、ラファエロ商会と繋がっている奴隷商会。手間だけど一軒ずつ回って違法奴隷を解放するつもりよ。

 どうせ領主のコルザレスは知ってるだろうし、確固たる証拠を用意して断罪するためでもあるわ。


「いらっしゃいませ。本日はどのような奴隷をお求めでしょう?」


 さっそく中に入ると、物腰の柔らかい初老の男が出迎えた。

 どうしよう……この際ストレートに言っちゃおうかな?


「大きな声じゃ言えないけれど、犯罪奴隷以外の者が居るって聞いたわ」

「フフ、もちろんで御座います。当商館は犯罪奴隷などという汚物は扱っておりません。どうぞご安心を」


 何が安心なのかと突っ込むのは後にして、この商館なら全員解放しちゃってもいいわね。


「じゃあ全部貰ってくわ」

「はい、ありが――――え? ぜ、全部……で御座いますか?」

「そうよ。すぐに用意してちょうだい」

「か、畏まりました!」


 半信半疑ながらも地下へと駆けていく初老の男。

 そして現れたのは、種族が様々な少年少女多数と10人近い黒服の男たち。


「しめて金貨5000枚となりますが……お支払いは大丈夫でございましょうか?」

「問題ないわ。最初から払う気なんてないもの」

「左様でございま――――は?」

「違法奴隷なんだから当たり前でしょ」

「チッ、ふざけた真似を! おいお前た――」


 初老の男が背後に()()()()()黒服へと振り返る。


「コイツらは全員ブチのめしたで? 後はお前はんだけや」

「覚悟致すがよい」

「ヒッ!?」


 はい残念。ザードとホークによって制圧された後でしたっと。


「か弱い子供を(たぶら)かすなど卑怯千万! いざ、天誅を受けよ!」


 ビシィッ!


「フガッ!?」


 ザードの峰打ちにより、初老の男も気絶した。


「すまぬ、(あるじ)よ。加減を誤り、骨を砕いてしまったで御座る」

「あらら。まぁ生きてるみたいだし、気にしなくていいんじゃない?」

「かたじけない」


 さて、負傷した初老の男なんかより、奴隷にされていた子供たちよ。

 ザッと見渡すと30人は居るし、彼らを元の家庭に送り届けないと。

 コキ使うけど、ここも諜報員に任せよう。

 確か日に日に人員が増えてるらしいし、やりがいを感じてくれれば幸いよ。


「じゃあみんな、今から奴隷の首輪を外すから一列に並んで」


 一目で奴隷だと分かるように、彼らの首には奴隷の首輪っていうのが付けられている。

 コレを外さなきゃ身分が奴隷のままなので外す必要があるのよ。

 とは言え、神の力が働いてて力ずくで外すのは不可能。

 じゃあどうするかと言うと、私ならではの特別な方法がある。


「……は、外すって……契約もなしにどうやって外すの?」

「そうだよお姉ちゃん。キチンとした契約を交わさなきゃ、一生このまま――」


 パキパキン!


「「「……え?」」」


 二人の首輪にそっと触れると、音を立てて砕け散った。

 私にはイグリーシアの神であるミルドからもらった加護があって、この加護により状態異常に掛からないのよ。

 それを応用して壊したってわけ。


「ほら、他の子も並んで並んで」


 本当に奴隷から解放されると分かり、少年少女たちから歓喜が漏れる。

 やがて全員の首輪を外し終わると、フランツの拠点へと預けた。後は諜報員たちが上手くやってくれると思う。

 私はというと、再びプレイモアへと舞い戻ったわ。

 あ、もしやこれって、全ての商館を回るまで転移での行き来を繰り返さなきゃならないってことじゃ……。


「ところでアイリはん、コイツらはどないするんや?」

「コイツら? ……ああ、コイツらね……」


 よく考えたら黒服たちもダンジョンに連れてかなきゃならないかぁ。

 部屋足りるかな……。



★★★★★



「ふぅ……どうにか5階層までできたね」


 あたしミラクルはアイリちゃんからの言いつけでダンジョンの改築に取りかかっていて、今ちょうど5階層まで終わったところなの。

 そこでちょっと休憩して、また改築に戻るつもりよ。


「お疲れ様ですマスター。しかしよろしいのですか? 1階層から5階層まで骨組みしか出来ていない状態ですが」

「それは仕方ないよ。全部仕上げようとしたらDPが足りないし」

「でしたら階層を増やさなければ――」

「それはダメ。5階層に街を作るのがあたしの目標なの」


 アイリちゃんの話では、5階層にはいろんな種族がしがらみなく暮らしていたらしい。

 だったらあたしも作らなきゃ。かつてのアイリーンを復活させるんだ。

 なぜなら、あたしは恐怖のダンジョンマスターであるアイリの子孫なんだから!


「なぜか熱血な少年漫画の雰囲気を感じますが、だからといって全てのDPを注ぎ込む必要もなかったと思います。アイリ様からご利用は計画的にと仰せつかったではありませんか」

「はぅ!」


 そういえばそうだった。

 効率よくDPを貯める事を優先しなさいって言ってたっけ。


「これでは逆に説教されかねませんよ?」

「せ、説教……」


 それは嫌だなぁ……。アイリちゃんの拳骨って痛いし……。


「こうなっては仕方ありません。また()()をやって、ご機嫌をとりましょう」

「アレ?」

「アレと言ったら犬のモノマネに決まってるではありませんか」

「そ、そうなんだ……」


 アレ=犬のモノマネね。うん、これは忘れないように覚えておこう。


「ここにホーク殿から頂いた貴重な資料がございます。これによりますと、アイリ様のいた世界では、コスプレなるものが流行っていたと書いてあります」

「コスプレ?」

「見た方が早いです。こちらをどうぞ」


 渡された資料をめくると、あたしくらいの女の子やキレイなお姉さんが可愛い服を身につけていて、皆こちらを向いて様々なポーズをとっているのが分かる。


「みんな楽しそうな顔をしてるね。身につけてるのはレアアイテムなのかな?」

「いえ、身につけてるのは殆ど自作らしいです」

「自作なの!? こんなキレイな人たちが職人さんなんだ!」

「職人とも違うらしいのですが。というよりわたくしが注目したいのは、これらの衣装を身につける事で、犬のモノマネを更にパワーアップできるという点です」


 エレインが言うには、「可愛い衣装で可愛いモノマネをすれば、可愛いと思われるのは当然の事」――なんだって。


「これぞ可愛いのトリプルコンボ――K3(ケースリー)です!」ドヤッ!


 いや、そこでドヤられても……。


「時間がありません。より精度を高めるため、アイリ様が戻られる前に衣装を完成させましょう!」

「完成させる――って、今から!?」

「もちろんです。あの二人にも手伝わせましょう」


 よく分かんないうちに、全員で衣装を作る流れになっちゃった。

 上手く作れるか不安かなぁ……。


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