表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/118

もう1つのパーティ

「ん……ここは……」


 おっと、()()の1人が目を覚ましたらしい。


「ここはダンジョンの中よ」

「ダ、ダンジョンだぁ?」

「そ。アンタのお仲間にも教えてあげたら? ついでに言うと、普段誰も寄り付かないダンジョンだから、いくら叫んでも無駄よ」


 いまだ気絶中の三人を指すと、仲間の傍らへと()うように移動していく。

 ちなみにアイリーンに特設した牢獄の中だから、特に拘束はしていない。

 ダンジョンそのものを改築中のため、コアルームの近くにしか設置できなかったのが微妙にイラッとくるけれど。


「お前ら起きろ! 早く起きろって!」


 チャラそうな男の叫び声に反応し、他の三人も次々と目を覚ました。


「あ、あれ? 俺は確か詰所にいたはず……」

「な、なんであたし縛られてんの!?」

「おい、どうなってんだよこれ!」


 チャラそうな男その二と、二十代くらいの女二人も現状に気が付く。

 コイツらは洞窟で捕えた奴らとは別の冒険者パーティで、(さき)の三人と同じくプレイモアの領主に買収された連中よ。

 コイツらも騎士団に所属してるけど、非番という事で元マリオーネのダンジョンには来なかったよね。

 だからギンとクロに頼んで捕えてもらったのよ。


「はいはい、静かにしてちょうだい。これから大事な尋問を始めるから、質問には正直に答えること。いいわね?」

「よかねぇよ! 俺たちが何したってんだ!」

「その通り! さっさと拘束を解かなきゃ痛い目みるよ!?」


 鉄格子の中だってのに何で強気なんだか。

 そんなおバカな連中に立場ってものを理解させないと。


「そこのチャ()。「俺たちが何したっ!」って言ってたわね? まさか1ヶ月前の事を忘れたんじゃないでしょうね?」

「1ヶ月前――だと?」

「そうよ。プレイモアの領主に依頼されて、レジェンダ商会を襲ったじゃない」

「レジェンダ商会…………ああっ! あの商人夫妻のやつか!」


 ズバリ指摘してやると、手をポンと叩いてスッキリした顔を見せてきた。どうやら本当に忘れてたらしい。

 チャ毛以外の三人も次々と思い出し、鼻で笑いつつ当時を振り返る。


「ハッ、あの間抜けな商人共がなんだってんだ? バカが死んだ――それだけだろ?」

「あんな簡単に騙される奴らが商人とかさ、ハッキリ言って笑い話じゃない?」

「ああ、笑っちゃうね! おまけに「あなた方のような頼もしい冒険者と出会えた事に感謝致します」――だとさ!」


 お人好しって感じの商人だったのね。

 そんな善人を殺してノウノウとしてるとか、コイツらの神経を疑うわ。


「じゃあ思い出したところで質問よ。レジェンダ商会が潰れた後、ラファエロ商会が急速にシェアを広めてるけれど、何か知らない?」

「なんでそんなことを話さなきゃ――アガガガガガ!」

「「「!?」」」


 壁に取り付けたレバーを押し上げると、突如として反抗的なチャ毛が苦しみ出す。

 拘束はしてなくても何も手を打っていないわけじゃなく、コイツらの体内に特殊な装置を埋め込んだのよ。


「言い忘れてたけど、テキトーな事を話したり生意気な態度を見せたら今みたいに電流を流すから。アンタからも仲間に教えてあげなさい」


 電流って言っても理解できないかな? まぁ理解しなくても関係ないけど。


「こ、この小娘の言ってる事は本当だ。マジでさっきは死ぬかと思ったぜ……」

「ホントかよ……」

「「…………」」


 半信半疑な顔をしつつも一応は信じたみたいね。

 ま、私としては何度でも反抗してくれて構わないんだけども。


「もう一度聞くわ。ラファエロ商会に関して何か知らない?」

「そ、それは……」


 チャ毛が視線を宙に泳がせた。何か知ってるのは確実ね。


 クイッ!


「アガガガガガ!」

「質問に答えなさい。じゃないと死ぬまで電流を流し続けるわよ?」

「わ、わがっだ! わがっだがら、やめでぐれーーーっ!」


 答える気になったっぽいので、電流をストップさせた。


「実はラファエロ商会の――」

「お、おい、それを喋ったらマズイぞ!?」

「そうよ、下手するとあたしら全員殺されちまうじゃん!」

「テメェ、さっきから聞いてりゃ生意気だぞ、()()()()が!」



 プチン!


 この女、私に対してクソガキって言ったわね?

 初期のエレインもそうだったけど、見下してくる連中は決まってこのフレーズを使うのよ。

 こういう連中には徹底的に思い知らせてやる!


 クイッ!


「「「アガガガガガ!」」」

「今度クソガキって言ったら――」

「ややや、やめてくれぇぇぇ! お、お前らも余計な事は言うな! これ以上はマジで死ぬぞ!?」


 他の3人も身をもって理解したらしく、急におとなしくなった。

 特に口の悪い女は怯えるように私を見上げる。

 なんだろ、そんな顔をされると益々虐めたくなって――いやいや、私にそんな趣味はない。

 表情豊かなミラクルを見て刺激されたのかしら。


「じゃあ改めて聞くけど――」

「アイリちゃ~ん、さっきから悲鳴が聴こえるんだけど……」

「あ、ゴメンねミラクル、うるさかった?」

「う、うん」


 コアルームの隅にあるから響くのよねぇ。


「おいアンタ、誰だか知らねぇがこっから出せ! もち礼はするぞ!」

「「「ちょっ!?」」」


 おっと、この口の悪い女、まだそんな事を言う余裕があるんだ。これは連帯責任ね。


「アイリちゃん、この人たちってそんなに悪い人なの? あたしにはそうは見えな――」

「さっきミラクルの事をド貧乳だってバカにしてたわよ」

「――それはヒドイよ! あたしだって好きでそうなったんじゃないのに! 絶体に遺伝のせいなのに! アイリちゃん、コイツらブッ殺していい!?」

「「「ヒイッ!?」」」


 ミラクル対して貧乳というフレーズは予想以上に破壊力が有るらしい。これからは用量用法を守って使うようにしよう。

 ――ん? そう言えば、私に対しても失礼な事を言ったような…………まぁいいや。


「落ち着きなさいミラクル。殺すかどうかはルトに決めさせるから、それまでは殺しちゃダメよ? 一応はDPが手に入るんだし、我慢してちょうだい」

「……分かった」


 ふぅ、危ない危ない。ミラクルが暴走しないようにエレインにお願いしとこう。


「じゃあラストチャンスよ。ラファエロ商会とプレイモアの領主について、知ってる事を話しなさい。じゃないと――」

「ももも、もちろん言うさ! 実はラファエロ商会には――」


 チャ毛が言うにはプレイモアの領主には娘がいて、ラファエロ商会の会長の息子と結婚する事が裏では決まっているらしい。

 これは一部の者しか知らないらしく、捕えた元冒険者パーティは娘の護衛をしたのが切っ掛けで知ったのだとか。


 何と言うか、プレイモアの領主は親バカね。

 これで死人が出てなければマシだったけれど、ルトの両親が死んでる以上許すわけにはいかない。


「他にもあるぜ? ラファエロ商会は裏で奴隷商をやってやがんだ。辺境の村から子供を拐ってけば、いい金になる」


 ラファエロ商会も潰した方がいいわね。

 そっちも後で考えよう。


「情報提供ありがと。じゃあミラクル、後はテキトーに遊んでていいから」

「テ、テキトーって……」

「そういえばコイツら、貧乳は生きる価値がないとか言って――」

「うん、分かった!」


 クイッ!


「「「アガガガガガ!」」」


 あらら、御愁傷様。

 さっそくミラクルから洗礼を受けてるわ。


「ま、待ってくれ! 裏切ったのは俺たちだけじゃないはずだ!」

「そうよ、確か【アサルト】とかいうパーティも同じように動いてたの! あたしらだけこんな目に合うのはおかしいじゃない!」

「ああ、あの中年男3人組ね。それなら――」


 カチッ――――ズズズズズ……


「「「!?」」」


 石の壁がスライドして隣の牢獄と繋がると、そこに投獄していた【アサルト】の三人組が(あらわ)になる。

 但しダンジョンで負傷したままだから、ボロボロになって気絶しているけれど。


「コイツらの事でしょ? すでにアンタら以上の仕打ちを受けてるから、そのまま放置してあるわ」

「「「…………」」」


 すでに瀕死の3人を見て、彼ら4人は言葉を失う。

 こうはなりたくないとか思ってる? それを決めるのはミラクルね。


「じゃあミラクル、私は出掛けてくるけどミラクルの胸を見て鼻で笑ってたからって、悪用したらダメよ?」

「うん、分かった!」


 クイッ!


「「「アガガガガガ!」」」


 間違って死なせないよう注意して、プレイモアの街へと向かった。

 領主とラファエロ商会の重役を捕まえるためにね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ