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誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
序章:やって来たのは5000年後
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閑話:世界のダンマス達

 ダンジョン通信。

 それは多くのダンジョンマスターが利用し、日々の情報交換が行われている掲示板のような存在。

 邪神レグリアスにより管理されているため強制表示される名前は偽れず、中には使用しないダンマスもいるにはいる。

 しかし情報収集の観点で言えば、やはりなくてはならない存在だと言えよう。

 そんなダンジョン通信の【強い魔物の目撃情報】という集いでも、新たな情報が飛び交っていた。



タツヤ「そういやさ、バジュラ山の中腹にいたシャドウムーンベアが何者かに連れ去られたって聞いたんだが、お前らどう思う?」


冷血「どう考えてもガセネタだろう。その行動に何の意味がある?」


タツヤ「いや、俺もそう思ったんだが目撃したダンマスがいるらしいんだよ。正確にはソイツの眷族なんだが、血塗れになったシャドウムーンベアが拘束魔法に掛けられて、遠くに運ばれてったらしい」


ルーシア「それ、ただの熊じゃない?」


タツヤ「それがよ、シャドウムーンベア特有の三日月のアザが、首の辺りに有ったんだってよ」


冷血「光の加減でそう見えただけだろう。ばからしい」


ルーシア「まったくね。どうせ作り話なら、もっと面白おかしく作れないのかしら」


タツヤ「いや、まだあるぞ? グロスエレム砂漠を飛び回っていたデザートイーグルが、半分焼けた状態で連れ去られたって話だ」


冷血「半分焼けた――って、どういう事だ?」


タツヤ「これまた妙な話なんだが、連れ去られる直前にファイヤドレイクにブレスを吐かれたのを見たんだってよ」


冷血・ルーシア「ファイヤドレイク?」


タツヤ「おう。だもんだから砂漠にファイヤドレイクが現れたと思いきや、またもや拘束魔法で連れ去られたんだとよ」


冷血「いや、内容に無理が有りすぎるだろう。結局は半殺しにされて連れ去られたというんだろう? 高ランクの魔物を連れ去る理由が不明だし、そもそもBランクだのAランクだのを簡単に倒せるはずがない」


ルーシア「そうねぇ。そんな輩がいるのなら、もっと話題になってもよさそうなものよね」


タツヤ「やっぱりデマかなぁ……。割と信用できる奴から聞いたんだが」


 大抵のダンマスはDランクの魔物を眷族としており、Cの眷族ともなればベテランの領域だ。

 そんな彼らにしてみればBランクやらAランクやらは雲の上の存在であり、眷族として使役していれば(たちま)ち有名人である。

 このことから所詮は作り話だという雰囲気になり、この話題は終わった――かに見えたが、新たなダンマスの発言により急展開を迎えることに。


パトリック「やぁタツヤ、早くも新しい情報を掴んだぞ。今度もどえらい内容さ」


タツヤ「やぁ――じゃねぇよ。やっぱりお前の情報はおかしいって話してたところだぜ?」


パトリック「おかしなものか。それだったらメスが生まれないゴブリンなんざ世の摂理(せつり)に反しまくっているだろう? 俺が話すのは、そんなどうでもいい内容じゃない。極めて信憑性(しんぴょうせい)の高い話さ」


冷血「ほぅ、タツヤの情報源はキミか。ならば聞かせてくれ。真実かどうか、キッチリと見極めようじゃないか」


パトリック「OKOK、じゃあ聞いてくれ。バジュラ山から山一つ越えたところに寂れた農村があるんだが、なんと、遥か上空から双子の女の子が降ってきたそうだ」


冷血「……それのどこがどえらいんだ?」


パトリック「そう急かしなさんな。もちろんこの話には続きがあって、なんと、その双子は血塗れだったそうだ」


ルーシア「空から落ちてきたのなら当然じゃない? 落ちてきた理由は分からないけど」


パトリック「違う違う。その双子はピンピンしててさ、怪我をしてる雰囲気じゃあなかったんだと。しかもしばらく経ったら、ワイルドホークに乗ったこれまた別の女の子が現れて、件の双子を回収してったそうだ」


タツヤ「ワイルドホークに乗ってたって!?」


冷血「それが本当ならBランクの魔物を使役してることになるんだが……」


パトリック「チッチッチッ、驚くべき点はそこじゃあないのさ。なんとなんと、その女の子は土手っ腹に大穴が空いたブラストドラゴンを拘束してたんだとさ!」


タツヤ・冷血・ルーシア「ブラストドラゴン!?」


パトリック「そうさ。ブラストドラゴンと言えば(シングル)ランクの魔物だ。けっしてマグレじゃ倒せねぇのは百も承知の事実ときた。こんな大物を捕える奴ぁどえらい輩に決まってるだろう?」


冷血「だ、だがそれは本当だったらの話であって――」


パトリック「なんとなんと、目撃された農村では少量ではあるものの、竜の血を回収できたときたもんだ。売れば金貨の山となり、次見た時にゃあ町へと変わってても何ら不思議な事じゃあない。さっそくオークションへと出されてて、今でも値段がつり上がってるそうだ」


冷血「ほ、本当なのか? だとしたら……」


ルーシア「どうやら本当みたいよ。【オークションの珍品】っていう集いを覗いたら、確かに竜の血が出品されていたわ。しかも今日付けでね」


タツヤ「おいおい、こいつぁビッグニュースじゃないか! 竜の血が出品されてるなら、ドラゴン系の魔物に傷を負わせた奴がいるって証拠だ。パトリックの話が本当なら、ブラストドラゴンが生捕りにされた事になるぞ!」


パトリック「その通り。僕としちゃあここの集いにいるダンマスなら何か知っているんじゃと睨んでたけど、誰も知らないって感じだね」


冷血「そりゃそうだ。そんなのに心当たりがあるなら誰も驚か――いや、ちょっと待て。確か昨日、強い魔物を探してた少女がいたぞ!」


パトリック「本当かい!?」


タツヤ「ああいたいた! 確かアイリって名前で、デザートイーグルとシャドウムーンベアとブラストドラゴンの居場所を知って、さっそく行ってみるって言ってたな!」


冷血「これはさすがに偶然とは思えん。アイリがその3体を倒したのか、他の誰かに頼んだのかは不明だが、彼女が何かしらの事情を知っている可能性が高い」


パトリック「なるほどなるほど。それは是非とも本人に聞いてみたいところだねぇ」


 誰しもがアイリへと着目する。

 例え先の3体は倒してないと発言しても、しばらくは疑惑の目で見られる事は避けられない。

 しかし、ここへきて新たな情報が舞い込み、アイリに対する疑惑が決定的なものになろうとしていた。


ルーシア「ちょっとちょっと、大変よ! 今他の集いで話題になってるんだけれど、ボルディール王国で内乱が発生したんだって!」


タツヤ・冷血「内乱!?」


ルーシア「ええ。なんでも王族が一日で消滅したとかで、貴族達が争いを始めたそうよ」


パトリック「その話は僕も聞いたよ。どこからかダンマスを捕えてきて、王の目の前で召喚を行わせたんだとか」


タツヤ「それって昔流行っていた異世界の勇者を召喚するってやつか? 今じゃ鳴りを潜めているが、昔はプラーガ帝国で盛んに行われてたらしいな」


冷血「まさか今になってやり出す国が出てくるとは。またそういう時代が来るのか……」


ルーシア「それもあるけど、私が言いたいのは呼び出された何者かが王族を皆殺しにしたって事よ。そうじゃなければ一日で王族が消滅するなんて起こらないもの」


タツヤ「じ、じゃあボルディール王国はとんでもない何かを召喚したってのか?」


冷血「また厄介な事を……」


パトリック「あ、思い出した! ボルディール王国の城から飛び立つ存在を、偶然捉えた奴がいるんだよ」


タツヤ「ホントか!?」


パトリック「うん。ソイツの特殊スキルが念写というスキルで、見たものを紙や壁に写せるんだ。今画像をアップするよ」


 パトリックによって上げられた画像には、ミラクルの手を握って飛び立つアイリの姿が写されていた。

 これを見た三人は目を見開き、(あご)が外れんばかりに驚く。


タツヤ「こ、こ、この子は……」


冷血「ああ、間違いない。昨日ここに出入りしていたアイリという少女だ」


ルーシア「王族皆殺しに強力な魔物を狩った存在。やっぱりあの少女なの……」


 ダンジョン通信では名前と共に顔もハッキリと映されるため、昨日見たばかりのアイリの顔は鮮明に残っていたのだ。


パトリック「なるほどなるほど。どうやらそのアイリという少女がキーのようだね。これはまた世界が荒れる予感がするよ」


タツヤ「どうしよう、俺おもいっきり先輩面しちまったよ……」


冷血「彼女が温厚な性格である事を祈ったほうが良さそうだな」


ルーシア「でもこういう感じなの久しぶりよね? 昔は強いダンマスが多かったらしいけど、今じゃ冒険者や軍隊から身を守るのが精一杯だし……」


パトリック「これからの彼女の動きに注目だねぇ」


 ついにダンマス達の間でも、アイリの存在が目立ち始めてきたようだ。


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