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誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
序章:やって来たのは5000年後
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挑発と挑戦と遭遇と

『納得いきませんわ! このようなバトルは無効でしてよ!』


 ――等とほざいているのは、ご存知銀髪セミロングのレミット。

 他人がミラクルのダンジョンを使って挑むのはおかしいって、今さらな事を言い出したのよ。


『いや、アンタも納得してたじゃない』

『いいえ、これは卑劣な罠です! さてはミラクルと共謀して、部屋の掃除をさせた仕返しのつもりですわね!?』


 仕返しって、やっぱり都合よく使ってたんじゃないの……。


『お取り込み中失礼しますが、バトルの勝敗は覆りません。約束を守らなければペナルティが発動しますよ?』

『部外者は黙っててくださらない!?』

『審判ですので部外者ではないのですが……』


 面倒なやつねぇ……。

 もういっそのこと、ミラクルとバトルさせようかな?


『レミット、ミラクルとバトルした結果なら納得するわけ?』

『ええ、それなら納得しますわ。なぜならわたくしとミラクルの勝敗は、25勝0敗でわたくしのパーフェクト勝利ですので』

『…………』


 まかさの全敗だったとは……。


「ねぇミラクル、レミットの部屋を掃除したのって25回?」

「凄い! なんで分かったの!?」


 誰でも分かるんだけどね、普通なら。


「じゃあ今日でレミットの部屋掃除は卒業しちゃおうか」

「え……卒業って?」

「バトルして勝つのよ。今なら負けないでしょ?」

「あ、そうか! あたしにも眷属ができたんだものね、それなら勝てるかも!」


 勝てるかもどころか圧勝よ。

 Sランクのブラストドラゴンを眷属にしといて敗北はあり得ないわ。


『レミットさん、あたしと勝負してください。眷属同士の一対一で!』

『フッ、望むところですわ。もしもわたくしを負かしたら、一生涯ミラクルのメイドとして勤めて差し上げましてよ』


 よく分からないけれど、メイドが手に入るっぽい。


『わたくしの出す眷族は、ゴブリンジェネラルですわ。さぁミラクル、貴女の眷族をお出しなさいな』

『あたしのは正確に言うと眷属だけれどね。じゃあブラッシュさん、お願い!』

「ハハッ! ミラクルたんのご命令とあらば、例え火の中水の中!」

 

 ミラクルが出したのは、ブラストドラゴンのブラッシュ。

 私とミラクルに向ける視線はキモいところがあるものの、現アイリーンでは最大級の戦力と言えるわ。


『では双方納得の上という事で、この後もジャンジャンバリバリと――』

『は・や・く・お願いしますわ!』

『おっと失礼。ではDランクのゴブリンジェネラル対Sランクのブラストドラゴンの試合を始めます』

『……はい? Sランク? 今Sランクと仰いまし――』

『では試合開始!』

『ちょっとぉぉぉぉぉぉっ!』



 このあと無茶苦茶泣いた。もちろんレミットが。その様子は見苦しいので、ある程度落ち着いたところで話すことに。



『酷いですわ、あんまりですわ、寄って集ってわたくしを苛めるなんて!』

『レ、レミットさん落ち着いて……』


 相当自信があったんでしょうね。ミラクルに対して無敗なら仕方ないかな?


『苛めでも何でもいいから、約束は守ってもらうからね?』

『むぅ……仕方ありませんわ。こうなったら潔くメイドとして勤めて差し上げましょう」


 あ、素直になった。実はメイドに憧れてたって事は――――さすがにないか。


『……一応確認ですけれど、時々お邪魔する程度で構いませんわよね?』

『うん、それでも構わな――』

『何言ってんの二人とも。こっちのダンジョンに住み込んでもらうに決まってるじゃない』

『『ええっ!?』』「ええっ!?」


 レミットとミラクルのみならず、エレインまでもが驚きの表情を見せる。

 でもダンジョンコアは持ち出せるんだから、理論上は可能なのよ。


『悪い話じゃないはずよ? 居候の私が言うのもなんだけど、担当する階層を分担して管理できるし、何より強い眷属がいるダンジョンに居れば安全じゃない?』

『それは……そうですわね』

『これからもアイリーンを徐々に強化していくから、共同でダンジョン運営しちゃえばいいのよ』


 ミラクルの事だから、親しいダンマスが殺されたら心底落ち込むに決まってる。

 だったら目の届く所に住まわせるのが最適でしょ。


「はぁ……まったく、アイリ様には脱帽いたします。そこまで頭が回る者は、世界中探しても見つかるかどうか。これはアイリ様の案に乗るべきでしょう」

『そうだね。それにレミットさんと一緒に生活できるなら、きっと毎日が楽しいよ!』

『ま、まぁそこまで言われては断れませんわね。今からそちらに移住いたしますので、宜しくお願い致しますわ』


 こうしてレミットがアイリーンで生活する事になった。

 とりあえずはコアルームを拡張して共同で使う事にし、寝室を増やしてバスルームまで用意したわ。

 特にバスルームは好評で、さっそくミラクルとレミット、それにエレインと私を加えた四人でバスタイムという流れに。


「はふぅ~。お風呂って気持ちいいね~」

「まったくですわ。今までは体を洗うだけでしたが、これからは毎日お風呂ですわね」


 ミラクルとレミットの顔が綻ぶ。

 特にミラクルは口まで湯船に浸かり、ブクブクと音を立てていた。


「しかしDPは大丈夫なのですか? 眷属の寝室だけでもそれなりに消費したはずですが」

「今回は私のDPを使ったから問題ないわ」


 なにせ兆を超える単位で貯まってるから、多少の浪費は気にならない。むしろアイカやゴーレム姉妹のおやつ代の方が多いのではと思えるくらいよ。

 ――って、そんな事より()()に入ろう。


「ところでレミット、何でも一つ言う事を聞くって話は覚えてる?」

「ええ、覚えてますわ。いったい何をさせようと言うのです? 言っときますが、胸を大きくする方法を聞かれても知りませんわよ?」

「違うわ!」


 さりげなく胸の大きさでマウントを取ってくるとは思わなかった。

 私だってあと何年かすれば――って、そんな事はどうでもいい。


「……コホン。私が聞きたいのは、昨日から挙動不審な理由よ」

「う……」


 露骨に視線を逸らしたわ。やっぱり何か隠してるわね。


「レミットさん、いったい何があったの?」

「そ、それは……」


 言い逃れる術がないのか、視線を宙に泳がせていたレミットがついに土下座を!



 ドボン!


「ゴボボボボ! ゴボゴボゴボボボボボ、ゴボボボボボボボ!」

「ちょ、レミットさん! 何言ってるか分かんない上に、そのままだと窒息しちゃうよ!?」


 ザパァ!


「ハァハァ――ご、ごめんなさい。もう一度言うけれど、魔女の森にいるダンマスは弱小揃いだって吹聴してるヤツがいましたのよ。それでついカッとなってしまい、だったら攻略してみなさいと……」

「逆に挑発したと。それはダンジョン通信を使った話ね?」

「ええ。向こうも同じダンマスですわ」


 なるほど。周辺国が動いてるのも無関係じゃなさそうね。

 それにカゲマルと接触したのもソイツの可能性が出てきたわ。


「そのダンマスの名前は?」

「アマノテウスという白髪のクソジジイでしたわ」


 アマノテウス? どこかで聞いたような気が――いや、思い過ごしかな。


「本当にごめんなさい。意地でも攻略してやる的な事をほざいてましまので、いつか攻め込んで来るのではと……」


 これでレミットの挙動不審な理由が判明した。

 ぶっちゃけ大した事じゃなかったわ。私にとってはね。


「済んだ事は仕方ないわ。一緒に生活する以上見殺しにはしないから、そこだけは安心して」

「そうだね。もし攻め込んで来ても、あたしの眷属で撃退しちゃうから大丈夫だよ!」

「その通りです。アイリ様に楯突いて無事で済んだ者は一人もおりません」

「あ、ありがとう皆様! わたくしもできる限りの事はさせていただきますので、何卒よろしくお願い申し上げます!」


 さて、今度はアマノテウスってヤツに探りをいれよう。

 裏で動いてるのがソイツなら、キッチリと締め上げる必要がある。


「話はまとまったようだね。今度は僕の話を聞いてほいんだけれど」

「「「!?」」」




「「「キャーーーーーーッ!!!」」」


 バチーーーーーーン!


 気付けば金髪の青年が傍らに立っていた。

 更にこの白い衣を着た青年には見覚えがある。ええ、有りすぎるくらいに。


「僕はどうしてビンタをされたのかな?」

「その台詞、()()()()()()にも聞いたわ」


 そう、あの時から何も変わってないわ、この天然神様は。


「まさか二度も同じ事をやらかすとか、実は確信犯じゃないでしょうね?」

「確信犯? よく分からないけれど、裸を見たところで僕には何も影響しないよ。だから安心してほしい」

「うん、前にも言ったけど、そういう問題じゃないからね? 分かったら早く出ていって!」

「う~ん、下界の者の考えは相変わらずよく分からないな……」


 天然神様はブツブツ言いながらバスルームから出ていった。

 ……ったく、どうして入浴中に現れるやら。


「ね、ねぇアイリちゃん。あの変態さんとお知り合いなの?」

「なぜか堂々と覗いてましたけれど、これって犯罪ですわよね?」

「アイリ様、侵入者を感知するアラームが発動しなかったのですが、ヤツは何者ですか?」


 そして質問攻めに合う私。

 レミットにもバレちゃうけれど、こうなったら仕方ない。


「あの青年はミルドという名前で、私に加護を授けた神様なのよ」

「「「……え?」」」


 この期に及んで冗談を? という顔をする三人。

 残念だけど、冗談ではなく本当の事なのよ。


「詳しくは本人を――いや、本神を交えて話しましょ」


 何やら話があるみたいだしね。

 きっと私が召喚された事に関してじゃないかと思うんだけれど、いったいどんな話が飛び出すやら。


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