表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
第8章:封印の地ガルドーラ
106/118

復活の兆し

「総員退避させなさい。許可を出すまでガルドラの調査は中止です」

「分かりました!」


 報告にきた青年冒険者が慌ただしく戻っていく。

 それを見届けたメンヒルミュラーは姿勢を崩し、私のよく知る口調に戻る。


「な~んかヤバイ事になりそうじゃ~ん? どうするアイリっち?」

「う~ん……」


 封印の地ガルドラか。

 脳内図書館によると、封印された悪魔は不死身に近いらしく、多くの兵士や冒険者が命を散らした末に封印に成功した。

 以来その土地は誰も寄り付かず、奥地がどうなっているのかすら分からないと。

 封印されてるであろう悪魔もどんな姿か記されてないし、本当に存在したんだろうか?


「どうしたのアイリっち?」

「妙な話だと思ったのよ。魔道国家ガルドーラがどうなったとか、悪魔とやらをどうやって封印したとかが記録されてないんだもん。そもそも封印が解けたらマズイんだから、再度封印する方法を残すのが普通よ」


 とはいえ、本当に悪魔がいるんなら放置はできない。

 もしかしたらGAが言ってた母体が眠ってるのかもしれないし、この目で確かめる必要があるわ。


「行ってみるわ。もし悪魔と遭遇したら、キッチリと倒しておくから」

「さっすがアイリっち~、頼りになる~♪」



 復活するかもしれない悪魔を倒すべく、封印の地へと向かうことになった。

 具体的な場所は、プラーガ帝国から北に向かい、国一つを跨いだところにある場所よ。


「あの壁の向こうがガルドラ。魔道国家ガルドーラがあった場所よ」


 モフモフと共に平原へと降り立つと、やや離れたところに万里の長城のような防壁が見える。

 この防壁もまんまガルドーラのものだけど、あの国がどうなったかの記載は一切ない。まるでアイリーンみたいにね。


「しかしよかったんですかい姉御? メンヒルミュラーの奴に都合よく使われるような真似をして」

「多分だけどね、アイツに都合よくって考えはなかったと思うわ。面倒になったら組織を放り出して失踪するだろうし」


 それに妙に感がいいから、私に振ってきたのも私と関連性があるって思ったからなのよ。

 きっとそれは正解で、この世界を知るヒントがガルドーラにあるんだと思う。


 ジジジジジ……


「姉御、結界ですぜ」


 防壁に近付くと、行く手を阻むように紫色の網が宙に張り巡らされてるのが見える。

 記録によると、あらゆる生命体を通さないって記されてるから、ネズミ一匹通ってはいないはず――なんだけど……


「結界が弱まってるのか、あちこちに穴が空いてるわね」

「へぃ。これなら俺でも通過できまさぁ。ちょっくら偵察してきやす!」


 防壁を飛び越えたモフモフが、結界をすり抜けて行った。さてさて、何が見つかるやら。



 フィキーーーーーーン!


「くっ!?」


 この感じ、またアイツだわ!


「やっぱり来たのね……」


 防壁の上で腰掛けているのはやはりミラ。


「……また邪魔をする気?」

「今回は邪魔しないわ。せいぜい気をつけて行ってきなさい。総力戦になるだろうから、アンジェラだけじゃなくリヴァイも呼んでおくことね」


 まさかリヴァイの存在まで知ってるとはね。

 この世界の謎と一緒でミラの素性も気になってくる。


「アンタは……ミラはどこまでこの世界を知ってるの?」

「知りたい?」

「できることなら」

「いずれ教えるわ。()()()()()()()()ね」


 また意味深なことを……。


「今言えることは、この先にいる悪魔に情けは無用ってことよ」

「ふ~ん? やっぱり悪魔はいるんだ。そしてその正体も知っていると」

「ええ。見たら分かるけど、絶対に油断したらダメよ? 例え相手が知ってる顔でもね。この世界のは()()()()()()から。じゃ、せいぜい死なないように頑張りなさい」


 シュン!


 上から目線の忠告を行い、どこかへと転移した。

 それにしても知ってる顔? 悪魔とやらは誰かに化けて出るんだろうか?

 ったく、どうせ知ってるなら弱点とか教えていきなさいっての……。


「姉御、ただいま戻りやしたぜ! 壁の向こうは――って、どうしやした? 辛気臭い顔してやすが」

「ちょっと考え事をね。それよりどうだった? 何か見つけた?」

「へぃ。少し先に森がありやしたが、動物や魔物は居やせんでした。かなり広い森でしたんで、一旦引き返してきたんでさぁ」


 国一つがあった場所だから相当広いだろうし、手分けして探した方がいいかもしれない。

 総力戦になるってミラも言ってたし、他のみんなにも手伝ってもらおう。


 シュシュシュシューーーン!


「む? 出番でござるか?」

「……そうみたい」

「おっしゃ! ワイのオンステージにしたるでぇ!」

「そうはいかない。お菓子はルーが見つける」

「ミリーも見つける」

「なんじゃ、お菓子を探しとるのかや?」

「つまり食材の確保ですな」

「食材だべ! 全部平らげてやるべ!」


 召喚したのはザードにペサデロにホークのBランクメンバーと、ルーにミリー、リヴァイにアンジェラにレイクのAランク以上の眷族という豪勢な顔ぶれよ。


「はいはい、みんな落ち着いて。探すのは食べ物じゃなくて、この先に封印されている悪魔よ。かなり手強いらしいから充分に注意して」

「ほぅ、それは楽しみじゃ。アンジェリカへの土産話には最適じゃろう」


 どうせならアンジェリカも連れてくるんだったかな? いや、連れてくる手段がないか。


「フム……清掃の途中だったのですが、強敵とあらばやむを得ませんな」

「リヴァイもゴメンね? 急に呼び出しちゃって」

「いえとんでもない。アイリ様のお役に立てて何よりですぞ。……して、あの森の中に強敵とやらは居るのですかな?」

「そこまでは分からないわ。森の中なのか森を抜けた先か、とにかく手分けして探すのよ。資料によると鉄塔の中に封印されてるらしいから、それらしき建造物を探してちょうだい」


 大まかな指示を出し、眷族たちを散開させる。


「さて、私も探さなきゃね」


 上空へと飛び上がり、下に広がる森を眺める。

 すっかり秋も終わりそうだっていうのに緑色を強調しているところは不自然な気がしないでもない。

 鳥も見当たらないし、ちょっと気味が悪いわ。


『大変マスター、一大事』

『ミリー? 何かあったの!?』

『フルーツを期待したのに一つも実ってない。これは由々しき事態』


 ズルッ!


『ミリー、頼むから真面目に探――』

『こちらルー。花も咲いてないからハチミツもない。この森の存在価値を疑う』


 ズルルッ!


『アンタらね……、お菓子なら後で好きなだけあげるから、今は捜索に集中しなさい。それともお菓子はいらない?』

『『とんでもない! お菓子は必要、絶対!』』

『なら全力で探してちょうだい』

『『イェス、マスター!』』


 ったく、手のかかるゴーレム姉妹だわ。


『こちらザード。川に差し掛かったが怪しいところはないで御座るな』

『……こちらペサデロ。沼地を発見したが、特に何もないもよう』

『ホークや。洞窟や思ったらただの洞穴だったわ。なにんにもないでぇ』

『レイクだべ。腹が減って力が出ないべ』


 その後も次々と報告が入るものの、有力な情報はなし。

 私も上空から探してるけど、塔なんて見当たらない。そう思っていたら森を抜けちゃったわね。

 脳内辞書にもハッキリとした場所は書いてないし、せめてヒントでも――――あ!



「そうだ、ハッピィが居るじゃない!」


 ハッピィとはガルドーラにあるエルフの里を守護している精霊よ。彼女なら何か知ってるかも。

 ……でもよく考えたら、エルフの里が今もあるとは限らないのよねぇ。


「確か座標だとこの辺りのはず……」


 森を抜け、平原の先にある別の森までやってくると、地上に降りて周囲を探る。

 エルフの里は目に見えない結界により空間を歪ませてるため、普通に迷い込む――なぁんてことは起こりえない。

 じゃあどうやって入るのか。これ、私ならなんてことはなく、場所さえ分かれば強引に入れたりする。

 ま、神のギフト様々ね。


「――っと、さっそく発見」


 普通の木がポツンと立っているところを起点に、周囲の空間が歪んでるのを確認。

 奇跡的に当時と同じ状態で残ってたわ。


「中の様子はっと……」


 歪みに侵入すると、そこも同じく森の中。

 これも当時と同じで、先に進めばエルフの里が見えてくるはず。


 ――だったんだけど……。


「普通に森があるだけで、さすがにエルフは居ない――と」


 目的はハッピィという精霊様だから、エルフが居ないことに関してはスルーしておく。


「里はなかったけど、ハッピィの居た場所なら座標で分かる。中央広場がこの辺りだったから、こっちの方に社があって…………あ~やっぱり反応はないか」


 探ってはみたものの魔力も感じないし、ハッピィはすでに居ないか別の場所に移ったか、そんなところか。


「仕方ない。無駄足だったけど帰――ん?」


 (きびす)を返したところで、身体が何かに引っ張られる感覚を得た。

 誰かが呼んでる?


「まさか!」


 もしやと思い、もう一度魔力を探ってみたところ――


「見つけた、ここね!」


 何故か空間と空間の間に挟まれ、身動きが取れなくなっていたハッピィを発見した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ