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誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
第8章:封印の地ガルドーラ
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ミュラーとの再会?

 冒険者ギルド総本部の総長――ミュラーに案内され、オアシスの中央にある邸へと上がりこむ。

 左右に並ぶメイドさんが(こうべ)を垂れる中、更に奥へと進んで行き――というかなぜメイド? 通路に敷かれた赤いカーペットや両脇の壁画もそうだけど、邸の外装も金やらミスリルやらで豪華だったし、まるで貴族の邸みたいね。


「こちらです」


 目的の部屋に着いたらしく、中へどうぞ的な感じに扉を空けてくれた。

 中は……うん、金ピカで目が痛くなりそう。

 この総長、ローブは地味なのに実は派手好きだとか?


「どうかなさいましたか?」

「いや、別に」


 悪趣味ね――という言葉を飲み込み、素直に部屋へと入る。

 ついてきた青年エルフも入ろうとすると、ミュラーが手で制した。


「総長?」

「貴方は席を外しなさい」

「な!? まさか二人きりで部屋に籠るおつもりで!?」

「何か問題が?」

「大有りです! 侵入者と二人きりなど危険すぎます!」


 ま~だ侵入者とか言ってる。

 侵略する気ならバカ正直について来ないっつーの。


「貴方がいたところでアイリ殿をどうにかできるとでも? 力の差が分からない訳ではないでしょう? 分かったなら従いなさい」

「…………」


 モフモフの無双を思い出したのか、途端に顔を青くして黙り込む。

 ほどなくして渋い表情で会釈をすると、そそくさと立ち去った。

 そう、それでいいのよ。こちとら気が立ってるんだから、刺激しないでほしいわ。


「ではテキトーにお寛ぎください。いまお茶を用意させますので」


 モフモフと横並びにソファーに座ると、ミュラーも正面へと腰を下ろした。

 さっそく本題に入ろうとしたところで、ミュラーが含み笑いを始め……


「クッ、クククク……」

「……な、なに?」




「アッッッハハハハハハ! まっさかまだ気付かな~い? マジで!? ちょ~ウケるんですけど!」

「はぁ!?」


 含み笑いから一転、腹を抱えて大爆笑を始めた。

 それにまだ気付かないって、いったい何の事を……


「ねぇねぇアイリっち、ウチだよウチウチ」


 そんな馴れ馴れしくオレオレ詐欺みたいに言わないでほしい。

 だいたいこんなに頭悪そうな女なんか知らな――



 いや、一人だけいたわね。

 5000年前にグロスエレム教国が存在した頃、あまりにも問題児な国だったから、当時の教祖を私の眷属と入れ替えたのよ。

 わけあって裏ではホムンクルスを量産してた国だったから、それに魂を吹き込んで――ってそんな話はどうでもいいか。

 その時の名前はメンヒルミュラーで――ってまさか!



「メンヒルミュラー!?」

「な~んだ、覚えてるじゃん。冒険者ギルドの総長が元眷属とか、ちょ~盛り上がる展開っしょ!」


 盛り上がるかどうかは別として、5000年もの間活動していた事実に驚いたわ!

 というか猫被り過ぎぃ!


「モフっちも久しぶり! 相変わらず渋いね~。元気してた?」

「……ああ」


 ミュラーのハイテンションに、モフモフも眉間を押さえて素っ気なく答える。

 私も頭痛がしてくるのを我慢して、聞くべき事を聞かなきゃね。


「アンタが総長なのは置いといて――」

「え~? そこ重要なんだけどな~」

「いいから! ……コホン。何だって私に賞金を懸けたわけ?」

「だってぇ、気付けば知らない場所で冒険者ギルドの総長やらされてたしぃ、も~ぅワケわかんないから誰かに相談したかったの~」


 気付けば? もしかして、メンヒルミュラーも私と同じように――いや、まだ分からないわね。

 私の場合はミラクルに召喚されてだから、それとは少し違うっぽいし。


「そしたらさ~、ボルディール王国やゴールドキャニオンからアイリって子が活躍してるって話が流れてきて、これはもう元ご主人に違いないな~って感じでアイリっちを呼ぼうと思ったんだ~」

「まさかとは思うけど、私を呼ぶためだけに賞金を懸けたの?」

「ピンポーン♪ アイリっちの事だから、こうしたら絶対怒鳴りこんで来るだろうな~って思ったんだ~。ビンゴっしょ?」


 悔しい……実に悔しい。こんなアホっぽい奴に踊らされるとは……。

 はぁ……なんというかもう血からが抜けてきたし、怒りも消え失せたわ。


「理由は分かった。とりあえず賞金は取り下げてちょうだい。どうせフェルマーの予言なんか信じちゃいないんだろうし」

「あ~、あのいかにも~な怪しい予言ね~。賞金は取り下げるけど、予言が気になるのは嘘じゃなかったり~?」

「んん?」

「なんかさ~、今年の冬を迎えると共に世界が終わるってゆ~のが予言みたいな~? だからね~、冬になれば()()()()に戻れるのかな~なんて思ったり~。その辺をアイリっちにも聞きたかったんだよね~。ぶっちゃけどう思う~?」


 元の世界……つまり5000年前の世界にってことか。


「何とも言えないわね。もしも予言が本物だとして、世界が終わるのと元の世界に戻るのとはイコールにならない気もするし。そもそもの話、簡単に過去に戻れるなら苦労しないでしょ」

「……へ? 過去って何の話~?」

「何って……5000年前に戻れるかって話をしてるんでしょ~が」

「え~? そんな話だったっけ~? 過去に遡って何するの~?」


 おかしい。どうも会話が噛み合ってない。


「おいミュラー、姉御は5000年後の世界に召喚されちまったんだぞ? だったら5000年前に戻ろうとすんのが当たり前だろうが」

「おお~! そういうことなんだ~!」


 ようやく理解したらしく、手をポンと叩いて納得の表情。

 けれど直後、トンでもない発言が飛び出すことに。


「でもでも~、ここってば5000年後の世界じゃないっぽいよ~?」

「……え?」

「だって~、二ヶ月くらい前までグロスエレム教国の教祖だったんだよ~? それがさ~、気が付いたら冒険者ギルドの総長やらされてたんだもん、こんなの絶対おかしいじゃん!」


 二ヶ月くらい前といえば、私がミラクルに召喚された時期と重なるわね。

 そしてメンヒルミュラーの記憶だと、5000年もの時間は経過していないという。

 だとしたら……ここが5000年後じゃないとすれば、この世界はいったい……。



 バタン!


「総長ーーーっ、大変です!」


 トンでもな展開に頭を抱えてると、冒険者の青年が慌ただしく部屋に飛び込んできた。


「……コホン。どうしたのです? まさか茶菓子が切れてましたか?」

「それどころじゃありませんよ! 封印の地を見張っていた仲間から、封印が解けそうだとの通達が!」

「まさか!」


 封印の地ガルドラ。

 そこの封印が解けそうってことは、封印されていた魔物が復活しそうって事!?


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