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ベルリンの戦い(弐)


「騎馬隊が動いた模様!」


 第四陣で待機していたバルバトスの元に伝令兵が駆寄り、伝える。

 それを訊いたバルバトスは頷くと、腕を横に伸ばしながら命じた。


「お前は左翼の騎馬隊に、騎馬隊が第三陣の近くに来るまで、動くなと命じろ! それと」


 バルバトスは近くにいる愛翔の隣にいる兵士に。


「お前は右翼の騎馬隊に命じろ!!」

「「はっ!」」


 伝令兵とバルバトスに命じられた兵士はその場を離れ、其々、両翼の騎馬隊の方へと駆け出す。

 バルバトスはその後、先陣で戦っているルシファーの事を思い出す。


「(ルシファー……!)


 バルバトスはルシファーを心配する。

 彼は今、先陣で切り込んでいる。

 天使軍の先陣を崩しに掛かっている。

 二千五百の兵で二万近くの兵士を追い込んでいる。

 流石としか言いようが無く、猛将的で、守護者の名に恥じぬ強さを持っている。

 バティンと言う屈強な男と、ある人物を側近に持つ彼が自ら戦っている。

 彼は今、どうなっているか? 何とか追い込んでいるのか? 

 バルバトスはそう言った不安がある中、動かないでいる。

 怖いからではない、自分が指揮出来るようにルシファーが言ったからだ。

 何か遭った場合、自分に後を託したのだ。

 ルシファーはいざという時の保険を自分に託している。

 彼の事を考え、彼が先陣で戦うのを応援していた。


「(ルシファー、死ぬな……!)」


 彼がそんな事を考えている中、両翼の騎馬隊が動き始める。

 敵の騎馬隊が第三陣の横腹を突こうとしているからだ。

 バルバトスはそれに気づく、更には、ある事を考えた。


「皆の者! 俺達も動くぞ! 二手に分かれ、騎馬隊の横腹を突く!」


 そして、バルバトスは前にいる第三陣に。


「第三陣の両翼以外は先陣の兵士達の援護に迎え! 俺達が回り込むまで、耐えよ!」


 バルバトスの命に第三陣の兵士達は頷き、一気に駆け出す。

 バルバトスの部隊は、第四陣は二手に分かれると、側面へと回り込む。

 そんな様子を、近くにいた愛翔は驚きつつも、困惑しつつも何故か兵士達の走って行った方向へと走る。

 何も判らない状況の中、自分は行動するのだった。







「ふん!」


 ルシファー率いる先陣と第二陣、天使軍の先陣が戦う場所では、

 ルシファーが太刀で多くの天使を斬り捨てていた。

 突いたり、薙ぎ払ったりして、寄せ付けないようにしている。

 天使の兵士達は剣を持つ兵士、槍を持つ兵士で別れている中、皆、構えたまま少し動くだけだった。

 ルシファーの強さを、身をもって知ってしまった為、攻められないでいる。

 迫れば、太刀の攻撃を受ける——その瞬間を他の仲間達の死で知ってしまっている。

 それ以上に、彼は疲れの色を見せない。余裕な表情を見せていない——眉間に皺を寄せている。


「次はどいつだ? 私に挑む者はいないのか?」


 ルシファーはそう言った直後、素早い動きで近くにいた四人の天使達を斬り捨てて行く。

 天使達は突然の事で驚く前に、倒れてしまう。

 ルシファーは天使達を斬り捨てた後も、太刀を構えている。

 

「たあっ!」


 ルシファーに対し、剣を手にする歩兵が迫る。

 ルシファーは彼の剣を弾き、斜めに斬り捨てる。

 天使の斬られた場所から血が噴き出る中、ルシファーは足で突き飛ばす。

 今度は後ろから、槍兵が迫る——ルシファーは対処しようとした。

 刹那、槍兵は吹っ飛ばされる。

 ルシファーはそれに気づく中、天使の眉間には矢が突き刺さっており、天使は即死。

 ルシファーは何処から飛んで来たのかと思う中、飛んで来た方を見ると、ある兵士が駆寄る。


「ルシファー様!」


 その兵士は矢筒を背負い、弓を手にしている青年だった。

 キニゴスだった。彼も戦に参加し、第三陣で待機していた。

 バルバトスの命で先陣と第二陣の助けに向かうよう言われ、彼を含め、第三陣の兵士達は皆、動いたのだ。


「第三陣を動かすようバルバトス様に命じられました!」

「バルバ……!?」


 ルシファーは近くに兵士が迫る事に気づき、斬り捨てる。

 キニゴスは弓矢で近くに迫る天使を射つ。

 二人は背中を預け合うように背中をくっつけると、ルシファーはキニゴスに話しかける。


「騎馬隊を倒したのか!?」

「いえ、まだです!」

「なんだと!?」


 ルシファーが叫ぶと、キニゴスは近くにいる兵士を弓矢で射抜く。


「騎馬隊には騎馬隊で対処している間、第三陣の両翼以外はルシファー様を掩護するよう言われました!」

「そうか! 少しは持ち堪えよう!」

「はっ! この戦いに勝利を!」


 二人はそう話している中、天使達を相手にしていた。

 ルシファーは太刀で、キニゴスは弓で射抜く。

 其々の得意武器で対処する中、誰かが叫んだ。


「騎馬隊が逃げて行くぞ——っ!」


 その声に二人は反応する——しかし、どちらの騎馬隊かまでは判らなかった。

 悪魔の方か? もしくは天使の方なのか? 二人はそれを気にしながらも周りの兵士に警戒する。

 それでも、二人は負けるつもりはなかった。




「よし! 脇腹を突いたぞ!」


 その頃、バルバトスは遠回りになる中、敵の騎馬隊の横を突き、攻撃していた。

 敵の騎馬隊は突然横を突かれ、混乱していたのだ。

 更には、第三陣の両翼も横腹を突いて来た。これには騎馬隊も困惑する中、

 その隙を突くように悪魔軍は殆どを蹴散らしていた。


「ぐわっ!」

「ぎゃっ!」


 天使の騎馬隊は混乱する中、悪魔の兵士達に殺されて行く。

 対応しようにも、三方から来た為にどの方角の敵兵を対処すれば良いのかが判らないのだ。

 それでも、抗う兵士がいる。槍で悪魔の兵士を突き、薙ぎ払ったりしている。

 そんな光景を愛翔は槍を構えたまま見ていた。青ざめ、躰を震わせている。

 怖い、戦うのが怖い、と。平凡な生活をしていた彼にとって、この世界は戦争が基本である事を知らない。

 悪魔と天使が戦いあう中、彼の近くにいた悪魔の兵士が倒れる。

 彼がそっちの方を見ると、近くには天使の騎馬隊が槍で悪魔の兵士の腹を刺す。

 悪魔の兵士は口から血を吐く。「っ!?」その光景を見た時、愛翔は思わず。


「や、止めろ————っ!」


 愛翔は思わず駆け出し、そして、兵士の腹を槍の穂先で刺してしまった。

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