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警告の鐘音


「ったく、何を言い出すかと思えば、図書館で調べ物か?」

「へ、変かな?」

「変? 誰が? 解らない事を調べるのは良い事だし、誰も怒らねえよ」


 愛翔とキニゴスは今、街の中を歩いていた。キニゴスは隣にいる愛翔に呆れている。愛翔はキニゴスの様子を伺いつつ、謝る。

 彼等が街を歩いているのは、愛翔が図書館で調べ物をしたいと言い出したからだ。キニゴスは驚きつつも、愛翔は、この世界を知るには、調べたいと。

 歴史があるのならば、その知識を永遠に、後世に伝える為には残している筈だ、と。キニゴスは彼の言葉に疑いを持ちつつも、彼の言い分を理解していた。

 疑いはありつつも、街の中を歩いているのも、彼を図書館がある場所へと案内している為だ。キニゴスは呆れている中、愛翔は街の中を見渡す。

 街の中は活気で溢れていた。老若男女関係なく、大人から子供まで、街の中で賑わっている。買い物をする者達、露店をしている者達、散歩をする者達、中には見回りをしているであろう兵士達もいる。

 こんな世界にも平和があるのは、驚きだった。この帝国が活気なのも、彼等や彼女等のお陰なのだろうか?

 否、そうに決まっている。また、馬車の中にいた時も、沢山の歓声や黄色い声がしたのも、この帝国の者達が出したのだろう。

 愛翔は周りを見渡す中、声もした。


「ママ、あれ買って〜〜」

「安いよ安いよ〜〜新鮮なジャガイモが五つで青銅二枚! 二枚だよ! 早いもん勝ちだ〜〜」

「あそこの店にある装飾品、結構良いのがあるらしいわよ! 行きましょう!」

「今晩の夕食何にしようかしら〜〜」


 街の人達は笑顔で、自分達のすべき事をしている。当たり前の日常を、久しぶりに見た気がする。幼い頃、最近になって、商店街を歩いた時もこう言った光景を何度も見ていた。

 自分が本来いた世界にはもう——解っていた筈なのに、それを認めたくないとさえ、愛翔は思っていた。


「どうした? 街の中がそんなに気になるのか?」


 キニゴスが怪訝そうに訊ねる。


「……うん、この街の人達、皆、凄い元気で、嬉しそうだから」

「それはそうだ、この街はダークライト帝国——俺達悪魔族の長であり、大王であるソロモン王が治めている」

「そ、ソロモン王?」


 キニゴスは深く頷く。


「ああ。ソロモン王は悪魔達を統べ、その下には守護者達と呼ばれる悪魔達もいる」

「悪魔達……その人達って、どんな人達なの?」

「さっき逢ったろ? バエル将軍にブエル様——俺が尊敬する師もそうだ」

「ブエル、さんたちが守護者? そんなに凄い人達なの?」

「凄い人達だぜ? ソロモンの守護者として相応しい人格と、多大な功績を残している」

「守護者達って、ソロモン、王さんの下にいるだけでなく、強い、の?」


 キニゴスは頷く。


「ああ——しかし、守護者にはそう簡単になれる物じゃない——厳しい条件がある」

「条件って……どう言った物が多いの?」

「歴史に名を残せる程のな? 例を挙げるならブエル様は凄いぜ?」

「ブエル様って……さっきの?」


 愛翔は戦場で逢った人物を思い出す。その一人がブエルである。とても優しそうな男性で、衛生兵達に的確な指示を出した人の事だ。

 初対面の自分でも優しく、気遣うように命令していた。未だにどんな人かまでは判断出来ない——自分なりの考えでは、まともな人ではないのかと彼は思っていた。

 愛翔はブエルの事を思い出しつつ、キニゴスに訊ねる。


「何をした人なの? 兵士達を助けたから?」

「ちげえよ。ブエル様は数年前、悪魔族の間で流行っている伝染病の治療薬を何度も開発した」


 キニゴスの言葉に愛翔は目を見開く。彼はブエルがそんな凄い事をした事に驚いている一方、キニゴスは説明を続ける。

 彼は、ブエルはソロモンの守護者の一人だけでなく、大きな功績を残したのだ。

 悪魔族の間で蔓延する伝染病の治療薬を幾度なく開発している。悪魔族の多くは助かり、絶える事もなくなった。

 ソロモンから守護者として選ばれ、更には悪魔族にとって、ブエルは皆の医者として、慕われている。

 愛翔はキニゴスからブエルがソロモン王の守護者に選ばれた事を教えられた後、ある事を訊ねた。


「……バエル将軍って人は?」


 彼はバエル将軍の事を訊ねる。先の戦でケルベロスの背中に跨がり、天使の兵士達を倒して行く姿を目撃している。

 その姿に戦慄し、恐怖した。あんな人がソロモンの守護者の一人ではないか、と疑っている。理由は、戦場でキニゴスがバエル将軍と言ったの為だ。

 それが理由とは言えないだろう——しかし、彼もまさかとは思い、疑っていた。愛翔の問いに、キニゴスは頷く。


「バエル将軍もそうだ」

「あっ、そうなんだ……」


 愛翔は頭を抱える。ああ、やっぱりそうだったか、と。キニゴスは愛翔の様子を気にしつつも、説明を続ける。

「バエル将軍は悪魔達の祖先であり、ソロモン王の右腕として、多くの戦いで勝利し、神の二人を倒している」

「神?」


 キニゴスの言葉に愛翔は驚く。神? どういうことなのか? 神とは、あの神の事なのか? と。キニゴスの言葉に疑問を抱きつつ、彼の説明を続けてもらおうとした。


 刹那、街全体に鐘の音がなる。大きく、街にいる者全てがその音に驚く。愛翔も例外ではない——彼は、その音が何なのか? と驚いていた。


「ちっ、ガープ様が天使の奴らが動いたのを、察したのか!」

「えっ? が、ガープ様?」


 愛翔はキニゴスの言葉から『ガープ』と言う人物の名を聴いて、困惑する。

 愛翔が気にするのをよそに、キニゴスは走り出した。


「あっ、ま、待ってよキニゴスさん!」


 愛翔はキニゴスの後を追いかける為に走り出す。不意に周りを見る。周りの人達は困惑や、不安と言った表情を浮かべている。

 愛翔は周りを気にしてしまう中、キニゴスに気づき、彼を追いかけるのだった。





「私が行こう……」


 その頃、バエル、ブエル、バルバトス、ルシファー、バティン、アスモデウスは会議をしていた時、鐘の音に反応し、更にはガープが出した物だと気づき、ある話をしていた。

 意見は沢山ある中、ある人物が名乗り出ていたのだ。その人物は、ルシファーだった。彼の言葉に周りは彼を見やると、彼の隣にいるバティンが。


「自分主君! 自分参加! 許可願望!」


 バティンはルシファーに自分も参加したいと名乗り出る。自分はルシファーの護衛の役目がある、そう言った理由だった。


「否、今回は私だけで充分だ、バティン、今回はお前を連れて行かない」

「自分主君! 命令否定! 自分不安!」

「大丈夫だ、敵は神がいようが負けはしない」

「自分主君! 自分参加! 絶対希望!」

「バティン……お前の気持ちは」

「俺も行こう」


 そんな中、バルバトスが名乗りを上げる。周りはバルバトスを見やる中、バルバトスは腕を組む。


「ガープからの情報はまだ来ないが、いざという時に俺も行こう」

「八番参加!? 相手不明! 愚神参加! 予感絶対!」

「それでも俺は行く——ルシファーひとりよりも、俺も行った方が良い」

「八番言葉! 主君侮辱! 自分激怒!」


 バティンがバルバトスに詰め寄ろうとする。それをブエルが苦笑しながら止める。


「落ち着いてくださいバティン、ルシファーさんは強いです。バルバトスさんも知識は豊富であり、上手く支えられます」

「自分不安! 自分参加! 自分願望!」


 バティンはブエルに対し、そう願う中、ルシファーは頭を抱え、バルバトスは微かに笑みを零し、アスモデウスは不気味な笑みを浮かべ、バエルは何も言わず見ていた。

 刹那、ある声が聴こえ、周りは一斉に声に反応する。そして、こう告げられていたのだった。


「天使の軍! ベルリン付近で行軍中! その数、三万!」

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