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知識を得る為に


「貴方の、お名前は?」


 エリカは自己紹介した後、愛翔に訊ねる。


「あっ……っ」


 愛翔は頬を紅くしながら、恥ずかしそうにエリカから目を逸らす。可憐な顔をしながら不思議そうに見てくる彼女を凝視出来ないのだ。

 悪魔の特徴である角や、背中にある小さなコウモリの羽に良く似た翼がありつつも、普段の服装をしている彼女に、どう答えるか判らないでいた。

 普通に自己紹介すれば良い——簡単な事でありながら、愛翔には、この世界に来て数時間も経たない内に異性に逢っているのだ。

 他にもいる中、ちゃんと会話した事がない。受け答えしておらず、何もしていない。愛翔は恥ずかしそうに頬を掻いている。


「フフッ、恥ずかしがらなくていいですよ?」


 エリカは小さな笑いを零す。小さな子供のように恥ずかしそうにしている愛翔を揶揄っているようにも思えるが、気遣っているのだ。

 愛翔は更に恥ずかしがる中、キニゴスが。


「こいつは愛翔、東郷愛翔って言う奴だ——新兵だ」


 キニゴスは呆れつつも、彼を手で指しながら自己紹介した。


「ちょっ、キニゴスさん!?」


 キニゴスの行動に愛翔は戸惑う。そんな愛翔の何、エリカは不思議そうに首を傾げる。


「トウゴウアイチ? 不思議な名前ですね?」

「あっ、そ、そう言う訳じゃ……」


 愛翔は恥ずかしそうに目を泳がせる。そんな愛翔にキニゴスはジト目で彼を見る中、溜め息を吐くと、二人に。


「此処で話すのは止めろ。患者や医者に迷惑だ」


 キニゴスが師適すると、二人は周りを見る。患者である人達や医者、その身内がいる中、彼等の事は気にせずに其々の事をしている。

 自分達は通路の曲がり角で会話している——邪魔になるかもしれないからだ。

 愛翔とエリカはキニゴスの言葉で納得し、三人は彼等の邪魔にならないように移動し、エントランスに着くまでの間、話を再開する。

 三人は並びながら話をする(左から愛翔、エリカ、キニゴスの順になっている)。


「じゃ、ところで、エリカはどうしてここに? 知り合いの誰かが……」


 キニゴスの言葉に、エリカは首を左右に振る。少し怒っていた。

 

「不謹慎よ? 誰も倒れていないわ」

「悪い。それよりも、お前は何故?」

「私はお父さんに頼まれて、この病院で出前をしていたの」

「出前——ああ、それでここに」

「そうよ、お父さんとお母さんが忙しい代わりに私が来たの」


 エリカとキニゴスは話をする。彼女は食堂で手伝いをしながらも、出前の仕事をしている。厨房にいる父や母の為に、時には出前をして、向かう事も多い。

 ここにいるのも、出前が理由なのだ。愛翔は二人を交互に見る中、自分は忘れられていると思い、困惑する。

 そんな彼に、エリカは気づき、不安そうな面持ちで謝る。


「あっ、ご、ごめんなさい。東郷さん、でいいですか?」

「あっ、だ、大丈夫です——えっと」


 エリカは微笑む。


「エリカで良いよ? 私は気にしない」

「エリカさんで、良いかな?」

「歳が近そうだし、さん付けは止めてほしいけど……まあ、東郷さんの自由だから、気にしないわ」


 愛翔はエリカの言葉に驚きつつも、訊ねる。 


「そ、それよりも、エリカさんはえ、偉いですね——お父さんとお母さんの手伝いなんて」


 愛翔はエリカを褒める。エリカは何も言わず、目を伏せながら優しい笑みを浮かべる。


「いいえ、私は私の出来る事をしただけ……お父さんとお母さんには大切に育ててもらった恩がある。それを返す為に、少しでも安心させたくて、お手伝いしている——それだけなの」

「え、エリカさん……」


 エリカの言葉に、愛翔は何も言えなかった。同時に、彼女の正直な感想に驚いてた。彼女は自分が出来る事をしているだけでありながら、両親を気遣っている。

 その言葉と、彼女の表情は優しさに満ち溢れている、慈母のような優しい少女だと、愛翔は思った。


「ふふっ、ごめんさない。自慢みたいなことを言って」

「あっ、い、いえ、立派です!」

「おい」


 愛翔はエリカに対して、好印象を抱く中、キニゴスは横から口出しするように、二人を交互に見る。


「東郷、エリカ、話の途中で悪い——エリカ」


 キニゴスはエリカを見てながら訊ねる。


「お前、出前が終わったのならば、早く店に戻れ——親父さんとお袋さんが大変か、心配するぞ?」

「あっ。い、いけない」


 エリカはそれに気づき、二人を交互に見ると微笑みながら。


「またね二人とも、今度——そっちに時間があったら、また逢いましょう」

「そうする」

「ありがとう、東郷さんも時間があれば来てね? 時間があれば良いから」


 エリカは二人にお辞儀をすると、そのままエントランスの方へと向かい、病院を出て行った。


「…………」


 そんな彼女の後ろ姿を見ていた愛翔はじっと見ていた。自分とキニゴスとは歳が近そうに見えて、両親の為にしっかりと親孝行している彼女に、ほのかな感情を抱いていた。

 その感情は何かまでは判らない中、悪魔と言うイメージが払拭出来ないでいた。悪魔は大抵……刹那、キニゴスが彼の肩を二、三回叩く。

 

「おい、エリカに惚れたのか?」

「えっ!?」


 愛翔はキニゴスの問いに驚きながら、キニゴスの方を見る。彼は少し揶揄うように笑っていた。愛翔は顔を真っ赤にする。


「ち、違います! しっかりとした人だと思っただけで、そんな事は……!」

「違うのか? まあ、あいつの両親が働く食堂の飯は美味いぜ? ハンバーグやカレーは舌鼓するくらいだからな?」

「キニゴスさんは、何度も足を運んだんですか?」


 キニゴスの言葉に、彼は少し笑う。


「ああ。すんげぇ美味かったぜ? あんな料理を作れる程の料理人であるあいつの親父さんは立派だぜ?」

「……そうなんだ」

「俺が新兵だった頃は……って、何を言わす?」


 キニゴスは愛翔の言葉に怒ると、彼を指差そうと……それは止めて、手で指す。


「お前は誰だ? 何も知らない上、日本とかをと言う国に来たって言っても、誰も信じられねえぞ?」

「あっ……そ、それは……」


 愛翔はキニゴスに指摘され、何も言い出せないでいる。自分の正体を知りたがる彼の問いに答えられないでいる。

 自分は生前、人間だった、何て信じてもらえない。彼や、周りにいる人達は皆、外見は人間の姿をした悪魔であり、天使も例外ではない。

 そんな自分が人間と言っても、何をされるのかは判ってもらえない。もう一つ、悪魔と天使は何故、争っているのか? 何故、そんな事になったのか? と。

 愛翔は、どうすれば良いのか、と悩む。自分にはそんなに知識はない。あるのは学校で習ったくらいであり、更には……ある事を思い出す。


『解らなかったら、調べる——そうしなさい』


 ある人の言葉が脳裏に過る。その言葉を思い出し、愛翔は瞠目する。調べれば良い——そんな簡単な事に気づかなかった。

 また、その言葉は愛翔に対し、悪魔や天使の歴史を調べろと言う事を教えている。そうすれば……更に愛翔は、ある事に気づく。

 調べると言う事は……悪魔と天使の歴史を知ろ、と言う事。愛翔はそれに気づくと、キニゴスに。


「キニゴスさん……お願いがあります」

「どうした?」


 キニゴスは怪訝な顔で訊ねると、愛翔は戸惑いつつも、訊ね返した。


「ありますか? あの建物を、色んな知識がある場所を、図書館みたいな場所を」

こんにちは、作者です。

 此処で少しだけ豆知識を入れます、この世界では食事は、人間達が摂取する物と同じです。不気味な料理は一切出しません。

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