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やるべきこと

WEB小説大賞って、何だろう?


「じゃあ、ボクは行くね?」


 数分後、パイモン、愛翔、エリンとエミリの姉妹はある話をしていた。

 その話はパイモンが三人とは別行動をとる意味で別れるからだ。

 パイモンは守護者の一人であり、多忙の身。愛翔の為に相談に乗ったのも、彼の不安を少しでも和らげるため、守護者として兵士を心配する義務もある。

 パイモンは愛翔、エリン、エミリの姉妹を見た後、愛翔と向き合う。


「愛翔君、ボクにできることは相談だけだったのかもしれないけど、少しは元気を出したかな?」


 パイモンは不安そうに訊ねると、愛翔は深く頷く。


「はい、少し元気が出ました——ありがとうございます」


 愛翔は頭を下げる。そんな彼に愛翔は首を左右に振る。


「そんなに畏まらなくても大丈夫、ボクは気にしない」


 愛翔は頭を上げ、パイモンを見ると、彼は微笑んでいた。


「ボクは守護者として出来ることは出来るだけやった——それが上手くいくとは限らないけど、君は立ち直れると信じている」

「……はい!」

「それでいいんだ。じゃ、ボクは城に戻る——彼等、バエル将軍達にお礼を言いたいからね」


 パイモンは彼等に背を向けると、そのまま歩き出す。彼が目指す場所は、帝国の中でひと際目立つ城、ソロモン城へと向かうため。

 そこにいる常駐している守護者達のお礼をするために。お礼の理由は、自分が遠征している間、ベルリンを守ったことをだ。

 パイモンはそのことを早く言いたく、誰にもぶつからず、迷惑をかけずに周りに配慮しながら歩くのだった。


「…………」


 そんな彼に愛翔は憧れを抱く。彼の助言は愛翔の心に大きな変化を与えていた。

 この世界に来て、分からないことだらけの彼にやるべきことを教えてくれた。自分に出来ることを教えてくれた。

 それをやるのは愛翔自身でありながら、愛翔自身にそのやるべきことを見つけさせていた。愛翔がやるべきこと、それは、この世界で知識を身につけること。

 この世界には秘密がある——知識や歴史がある。どの世界でも当たり前にあるとは言え、彼はそれをやる前に戦に向かってしまい、天使を殺めた。

 そこから先は後悔するだけだった。食欲もなく、吐くだけだった。

 キニゴスに誘われる意味でエリカの食堂でキニゴスが突然過去を話したこと、その後、自分を救ったであろうシチュウーで食欲が戻った。

 色々遭った中、パイモンの助言は守護者として、大きな手掛かりを与えてくれた。愛翔はパイモンに感謝していると、エリンが声をかける。


「愛翔、愛翔」

「あっ、え、エリン、どうしたの?」


 愛翔がエリンに訊ねると同時に、振り返る。エリンは微笑んでおり、エミリも微笑んでいた。


「少しは楽になった?」

「えっ? ……あ、ああ、うん。パイモンさんの助言でやるべきことが見つかったんだ」

「そう、良かったわ」


 エリンは胸を撫で下ろす。愛翔が少しだけ元気になったことに安堵したのだろう。


「愛翔、貴方が元気になってホッとしたわ」

「エリン、うん、少しは元気になったよ。それに……やることも見つかった」

「えっ?」


 彼の言葉にエリンとエミリは目を見開く。そして、愛翔は言った。


「遅くなったのかもしれないけど、俺は、この世界で知識を得る——それが俺の、やるべきことだって」








「我の作戦はどうだ? アスモデウス」

「悪くはないだろうな? まあ、夜遅い中、パリの奴らを恐怖で包む——悲鳴を上げさせる」

「俺は反対だ……ドーツの西半分に攻められる危険はある上、他の国からも攻められる」

「バルバトス侯爵の言う通りです……これは流石に、少数とは言え、兵士達を喪いかねませんし、この作戦を指揮した者が討ち死になる」


 その頃、謁見の間では、バエル、ブエル、バルバトス——そして、長い黒髪に、血のような真っ赤な目をした悪魔、アスモデウスもいた。

 彼等はある話をしており、その話で揉めていた。しかし、そんな話の前にブエルとバルバトスは訝しげな顔をしている。

 作戦に不満がある訳ではない、その指揮を執るバエルに嫌悪している訳ではない——彼等が怒っているのは、アスモデウスがいるからだ。

 いきなり、謁見の間に来るや否や、何の理由もなく、何をしているのかと話しかけてきたのだ。ブエルとバルバトスは怒る中、バエルは何も文句も言わず、軍議をしていたことを教えたのだ。

 二人はバエルの言い分に疑問を抱きつつも、彼に逆らうこともせず、アスモデウスを軍議の仲間に入れ、話を続けることになった。

 アスモデウスを嫌う二人にとっては屈辱的で窮屈なだけだった。そんな中、アスモデウスは笑いながら言った。


「俺はどんな戦いにせよ、鬱憤を晴らせばいいし、多くの天使達の泣き叫ぶ顔が見たいからな!」


 その発言にブエルとバルバトスは歯軋りする。彼の発言は天使を見下している意味にも近いからだ。

 ブエルがそれを指摘しようとすると、謁見の間を出入り出来る扉が勢い良く開いた。

 突然のことで周りは其々の反応を見せる。ブエルとバルバトスは驚き、バエルは目を細め、アスモデウスは「あん?」と呆れていた。

 彼等が向いた方、扉の方には一人の悪魔がいた。パイモンだ。彼は、アスモデウスに対して、憤慨している。


「パ、パイモン君!? どうしてここに!?」


 ブエルは彼がここにいることに驚きつつ訊ねると、パイモンは憤慨を止めるように作り笑顔になって、ブエルを見る。


「ボクは遠征をしている間、ベルリンの東半分を守ってくれたブエルさんやバルバトスさんにお礼を……」

「おいおい、そんな顔しても怒っていることは丸見えだぞ?」


 アスモデウスが呆れながら、話しかけると、パイモンは再び憤慨する。

 

「話しかけるな! ボクはお前が嫌いだ……! あの時のことを忘れていない……!」

「あの時……あ、ああ〜〜っ、あれか?」

「覚えているのか……! お前は陥落させた街で兵士達に女性や子供達を殺すよう命じたことを、ボクは忘れていない! それだけじゃない! お前は美人の天使達を嬲り、慰め物にしたことも命じているのをボクは知ってる……!」


 パイモンの美しい容貌が嘘のように、彼は憤慨する。アスモデウスに対し嫌悪しているのは、とある陥落させた戦いの際の彼の行動にあった。

 彼は悪魔の兵士達に惨殺を命じ、欲望を吐き出させるように美人の天使達を徹底的に犯すよう命じていたからだ。

 その戦いに参加していたパイモンから見れば戦慄的な光景であり、悪魔達の本来の姿を曝け出させていた。パイモンはその光景を永遠に忘れることもなく、消えることもない。

 アスモデウスという欲望を吐き出す悪魔を彼は嫌っている。それだけでなく、ある噂もある——彼はそれを指摘した。


「お前は確か、法律では禁じられていることを平然としていることも知っている……!」


 アスモデウスはニヤリと笑う。


「はっ! 別に良いだろう? 奴らの本来の悪魔達の欲望を吐き出させているんだぜ? おまけに子孫を残せるし、一石二鳥だろ?」

「巫山戯るな! 好きでもない奴の子なんて孕みたい奴がいるか!? 毎日犯され、最悪の場合、性病で死ぬかもしれないんだぞ!?」

「だったらなんだ? 法律を守って止めろってか? 悪魔なんて大抵、同じ女を抱いても飽きるだけだ? それとも何か? 男同士でやれってのか?」

「お前……!」


 パイモンはアスモデウスに詰め寄ろうとする。しかし、それを制止したのはブエルだった。彼は困惑しながら、パイモンに言った。


「止すんだパイモン君、アスモデウスさんに言ってもダメだ」

「っ!? ぶ、ブエルさん……!」


 パイモンは不安そうにブエルを見る。彼も不安そうでありながら言葉を続ける。


「私達は仲違いをしている場合ではない、私達の目的は領土の確保と国民の安全が最優先だ」

「…………」

「君の言いたいことは分かる——だけど今は落ち着くんだ、ソロモン王のことを考えて、耐えるんだ」

「……そうは言っても、アスモデウスのやり方は……!」

「分かるよ——彼は法を破り、多くの天使の女性達を慰め物にしていることは、守護者達の間では知っている」

「だったら……」

「それ以上は言ってはいけない、君を追い詰めるだけだ」

「……分かりました」


 パイモンは深く頷くと、落ち着き始める。ブエルは微笑むと、軽く背中を摩る。


「つらいのは分かる……君は……ごめん、それ以上は言わないでおくね」


 ブエルはそれ以上は言わなかった。彼は知っている、パイモンの過去をだ。彼は……つらい日々を過ごしていたのを。

 しかし、アスモデウスは二人のことをバカにするように笑う。


「傑作さだなおい? 危険な守護者達の美しい絆ってか?」


 彼の発言にブエルは視線を鋭くする。


「アスモデウスさん? 貴方は何を仰ってるんですか? 私達のどこか危険だと?」


 アスモデウスはニヤリと笑う。


「危険だって知ってるんだぜ? お前達は平然な態度をしていても、お前達はとてつもなく強いってな?」

「私達が、強い? そんなのは戯言です、貴方の見当違いだ」

「どうかな? お前達は守護者でありながら、守護者の中では危険な『悪魔デビル能力アビリティ』の所持者達」

「それ以上は言わないで、くれますか?」


 刹那、ブエルの様子が変わる——彼は鋭い視線をアスモデウスに向け続ける中、額に青筋を立てている。

 怒りを爆発させようとしている、アスモデウスに向けようとしている。その様子に周りは反応を見せる。

 バエルは無言で見据え、バルバトスは冷や汗を流し、パイモンは戦慄する。アスモデウスは顎を撫でるように顎に手を置く。

 謁見の間は一瞬でぴりっと重苦しい雰囲気に包まれる。アスモデウスの発言を元に、守護者の一人であるブエルが怒っている。

 彼の性格は心優しいのは誰もが知っている——しかし、優しい人程怒ると怖いという話はある。

 ブエルはそれに当てはまる人物だ。彼が怒っているのは、アスモデウスが余計なことを言ったため。

 その発言はブエル怒らせるには充分すぎる程だった。アスモデウスはブエルの様子に対しニヤニヤと笑う中、ブエルは青筋を立てるのを止め、目を閉じる。


「どうした? 何故怒らない?」


 アスモデウスが指摘すると、ブエルは顔をパイモンの方へと向ける。 


「本来ならば強く指摘しますが、此処は謁見の間。バエル将軍達がいる手前、私情で怒る訳にはいきませんからね」

「それが理由か? 軟弱もんだったのか?」

「侮辱したって構いません、しかし……」


 ブエルは目を開けると、彼を見ながら微笑む


「私はソロモンの守護者の一人——いかなる理由があろうと、私は自分の悪魔デビル能力アビリティを人の為に使いたい」

「それは偽善だぜ?」


 ブエルはそう言った後、アスモデウスは反論。刹那、誰かが手を叩く。

 その音は大きく、誰が叩いたのかは即座に判断出来る。パイモンでもなく、ブエルでもなく、アスモデウスでもなく、バルバトスでもない。

 叩いたのは、守護者で一番の実力者であるバエルだった。彼は眉を顰めながら口を開く。


「話を戻す、我等の目的は仲違いするための口論ではない」


 その言葉にアスモデウスはニヤリと笑う。


「ああ、そうだったな? フスランのパリ陥落作戦だろう?」


 アスモデウスの言葉にパイモンは眉を顰めながら指摘する。


「パリ陥落作戦? どういった作戦だ?」


 アスモデウスはニヤニヤと笑いながら教える。


「ああ、お前は来た後だから知らないだろうな? パリ陥落作戦は俺達悪魔の兵士が、天使の軍の領土であるパリを陥落させる」

「それは知ってるよ……? 何故それを繰り返すように言うんだ……!?」

「ああ悪い悪い、俺達はその領土を得るためにそこを攻めるってことだ。それも、時間に関係することだからな?」

「時間に関係?」


 パイモンは不機嫌そうに答えると、アスモデウスは深く頷く。


「ああ、それは奴らが完全に就寝している深夜に攻め込むってことだ。大軍ではなく、寡兵でな」

「その作戦は気に入らないね。寝込みを襲うなんて、完全に夢の中にいる彼等彼女等を悪夢に誘い込むようなものだよ……!」


 アスモデウスは肩を軽く動かす。


「はっ、俺達悪魔はそう言ったことが好きだ——義心しとか忠誠とかそんなのは偽善だ。悪魔は悪魔らしく、残虐な限りを尽くすのが本来の悪魔ってもんだ」

「……やはり、ボクはお前が嫌いだ」

「なんとでも言え。バエル、俺とお前の作戦はどうだ?」


 アスモデウスはバエルに意見を求める。バエルは腕を組みながら目を閉じている。

 バエルは何かを考えていた。アスモデウスと共同で考えた作戦を遂行すべきか? と。その作戦は深夜であり、時間との勝負。

 パリを深夜であるにも関わらず、騒がしい意味での惨劇を起こす。彼は悩む、素振りはない——。彼は既に決まっていた。

 この作戦の要はパリを陥落させること。四方から攻められる危険はありつつも、少しでも天使の軍に大打撃を与える切っ掛けになる。

 寡兵でも被害は最小限に抑えられ、大打撃はない。バエルは色んな思考を走らせる中、カッと目を見開くと、歩き出す。

 謁見の間を出入りする扉の方だった。近くにパイモンとブエルがいる中、彼は気にもせずに、扉に近づくと、彼は通路に誰もいないのを確認し、扉を閉めた。

 そして、こう叫んだのだった。


「これより、三日後にパリ陥落作戦を行う! このことは口外せず、兵士達にも口外しない! 口外するのは当日とする! ここにいる者、我を含め秘密に致せ!」

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