表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モノクロームと花束  作者: indi子
6 世界は彩りに満ちている
57/64

6 世界は彩りに満ちている ⑮


「まあ、あれだ……もしお前がこんな俺でも良いっていうなら、高校を卒業した時に、ちゃんと話をしよう」




 センセイのその言葉に、私は何度も頷く。センセイは見えてないのに「良かった」と胸を撫でおろすように言っていた。 


 リネン室を出ようとしたとき、私はセンセイの手を握った。




「おい、三原……」




 センセイは振りほどこうとするけれど、私はぎっちり握ったまま。絶対に離そうとはしない。




「だって、危ないじゃないですか?」


「でも、人目があるだろ。離せって」


「嫌です。……私はもう決めたんです、センセイの手はずっと離さないって」




 センセイはそっぽ向いていたけれど、耳がまた赤くなっているのが分かった。言葉がなくても、それだけで嬉しくて仕方ない。私はセンセイの手を引いて、ゆっくりとした足取りで病室まで戻った。




「そうだ、私、センセイに渡したいものがあるんです」




 センセイはベッドの中に戻っていく。彼のお腹のあたりまで布団をかけたあと、カバンのポケットを開けた。




「何だよ。……変な物じゃないだろうな」


「疑り深いんだから。センセイ、手を出してください」




 手を出したセンセイの手を掴み、手のひらを天井に向けさせた。その上に、私は空色のお守りを置く。




「何だ、コレ」




 センセイは両手で揉む様にそのお守りの形を探っていく。




「学校の近所の神社で買ったお守りです。センセイの病気が治りますようにって」


「受験生が神社で何祈ってんだよ。俺の事じゃなくて、自分の事だけ考えてろよ」


「もう、素直じゃないんだから。……センセイの好きな、青色にしたんですよ。まるで空の色みたいな」




 センセイが持つお守りをつつくと、その手をセンセイが掴んだ。センセイの手の温度が熱くて、胸がどきんと弾む。




「……ありがとう」




 小さな言葉は私の耳にすっと飛び込んできた。私はベッドのへりに座って、センセイの手を握り返す。




「このお守りの色を見るのが楽しみだ」


「……はい!」




 センセイが笑うと、私も嬉しくなってしまう。互いに笑いあっていると、川畑さんと小雪さんがくたびれた様子で戻ってきた。二人とも驚きのあまり叫んで、一安心した後に……口々にセンセイの事を叱り始めた。センセイは助けを求めるように私の手をぎゅっと握ったけれど、私は「センセイが悪いんですよ、みんな心配してたんですから」と手を柔らかく握り返す程度にとどめて置いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ