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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ナキゴエ


 ある冬の寒い朝、私は交通事故にあった。


 目の前で担架に乗せられた私が、救急車に運ばれていく。

 もう助からないと知らないで。


 病院の一室で、私の心臓の音が止まった。

 室内にいるのは、医者と看護師だけ。


 遅れて両親が来た。

 それから大好きな彼が来た。


 目を腫らして、冷たくなった私を見て泣いていた。

「私はここにいるよ。泣かないで」

 私の言葉も、肩を叩こうとした手も全てすり抜けていく。


 ああ、なんて冷たいんだろう。


 葬儀も終わって49日が過ぎた

 みんなが泣いていた。それがとても胸が痛かった。

 ある日、神様は私に言った。


「君には生まれ変わるチャンスがある。君の望みはなんだい?」

「早く生まれ変わりたい。早くあの家に帰りたい」

「枠はある。ただし、人間ではなく、新しく飼われる猫だ。それも5年後に交通事故で死ぬ運命になる。人の言葉も喋れない。涙を流すこともできない。それでもいいのか?」

「それでもかまいません。泣くことができなくても、鳴くことはできます。5年しか生きられなくても、5年もあれば私のことを忘れてくれるでしょう?」



 私は猫に生まれ変わった。親戚のお家で生まれた真っ白な青い瞳の猫。

 色んな人が仏壇の前に座って、そこにいない私に手を合わせてくれる。

 涙を流す人もいた。


 にゃー


 ただ私はないた。


 恋人も来た。

 いつも泣いてた。

 最期にそばにいなくてごめんって。

 私もないた。


 1年、2年、時が過ぎて、だんだん家に来る人も少なくなった。

 4年目にはとうとう誰も来なくなった。




 5年目の春、恋人が結婚するという話を聞いた。



 冬のある日、私は家を抜け出した。


 3日歩き続けて、隣町までやってきた。

 彼はとても幸せそうな顔をしていた。


 さようなら、このまま幸せに。

 このままみんな、私のことを忘れてください。



 お父さん、お母さん、二度も悲しませてごめんなさい。


 きっと私は






 地獄行き







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