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アゲインスト・レグナ  作者: 神猫
<Chapter1>始動
2/3

<1ー2>希望


「救世主・・・だと?」



「そう、君にはこれからある物語を変えてもらわないといけない・・・と言ってもわかりにくいか・・・まずはこれを見てくれ」

そう言って少女が取り出したのは一冊の本だった。

だが、その本は奏翔には見覚えがあった。


ここへと導いたはずの本命、奏翔の記憶の最後に残っている本とそれは全く同じ形をしていた。

古びた赤茶色の表紙を開き、少女は恐らくその本の最後のページであるはずの所を見せた。


そこには表紙と同じように古いのか、擦れた文字で一文だけ書かれていた。


『世界は、終わりを告げた』と




「見えたかい?・・・これが君が変えなければならない事、君の使命となる元凶だよ」


「・・・」

何も言葉が出てこなかった。

何の力もない奏翔にはあまりにも壮大すぎる事を使命と言われ、それを使命としてこれから生きていかなければならないのかという現実にスタートを切る前から心が折れそうになっていた。



「君にはこの本を頼りに世界を崩壊へと導く者を討ち滅ぼしてもらう。それと、このままじゃ、いつ世界が終わるのかもわからないからね・・・よっと」

次に少女は今度はその本の最初のページを奏翔へと見せた。

そこには黒色で囲った四角の中にまた擦れた白色の文字で、

『50000000』・・・五千万と書かれていた。


「これが、世界が終わるのを教えてくれる、タイマーみたいなものだよ。

この四角に表示される数字が全てゼロ、つまり1億へと桁が上がった時に世界は文の通り、滅びる。その前に君にはこのタイマーを止めてもらわなくちゃならない。当然、失敗する事は出来ない・・・・

どうだい?今までの事を理解できるかい?」


「・・・ああ、大体の事はわかった」

言葉の通り、奏翔には言われたことが全て理解できた。

だが、

「・・・だったとしても、なんで・・・何で俺なんだッ!俺なんかには何の力もないはずだ!地球の人間から選ばれるならもっと適した奴がごろごろいるだろ!今までも特にただ普通の生活を送っていたはずの俺なんかが、何でそんな大役に選ばれたんだ!!」


そこが限界だった。ただの人間という役を演じていた小役には当然の反応だった。


あまりにも、事態が大きすぎる。

今、話された通りなら、もし、奏翔が失敗した場合、奏翔は自分の命を落とすだけでなく、一つの世界、その場所に人が住んでいるのならそれ共々を巻き込み、その全てを崩壊させてしまうという事だった。


奏翔が英雄になるだのという目標を持って生きて来た人間だったなら喜んで引き受けたかも知れないが、そんな事を考えた事も、望んだ事も一度としてない。


勇者の物語ならばありがちな過程なのかも知れないが、実際に直面すれば訳が違う。


高校生という歳でなくても、人一人では抱えきれないほどに責任が大きいという事を心から理解できた。

そして、そんな事を初めて会ったばかりの少女に言われれば、奏翔という人間の限界にはすぐに達した。


よって、奏翔は激怒した。心の底から叫んだ。


だが、その少女はそんな奏翔を見ても、奏翔の言葉を聞いても顔色を変えることもなく微笑んでいた。

「大丈夫。なにより君には、それを成せるだけの力がある」




「力・・・?」


「うん。腕力などの肉体的な力などがあるのかは分からないけれど、ただ一つだけ分かることがある。それは、君の心はこの世の誰よりも強い」



「・・・もう既に折れかかっている俺の心のどこが強いっていうんだ」

力があると言われ、少しだけの希望が見えたかと思えば、自分でも分かるほどの限界値の少なさの心が力と言われ、声に力を失くした奏翔に少女はさらに言葉を連ねる。



「それに・・・」



「君には・・・どうしても叶えたい願いがあるはずだろ?」

「・・・!?」

下を向き、俯いていたはずの奏翔が勢いよく顔を上げる。


「なんで・・・それを・・・」

その顔は驚きに満ちていた。

「君が、この使命を終えた時。君はその願いをきっと叶えることができるよ」


「いったい、どういう・・・」

          『ゴーンッ』

詳しく聞こうと奏翔が訪ねた瞬間、突然大きな鐘の音が響き渡った。


「ごめん、どうやら時間みたいだ・・・・」


「・・・嘘、だろ。まだ聞きたいが沢山あるんだ」


「今はこれだけしか話せない、でも救世主となる君に一つだけ道標になるキーワードを教えてあげる」

慌てる奏翔に、少女は話す。

「『奇跡』という言葉を覚えておいて。その言葉がこの物語を綴るためのカギだよ」

徐々に周りが白い光に覆われていく中、少女は少年へと希望を託した。



「それじゃあ、これで。次会えるのは、いつだろうかな~」

そう言った彼女は光が強まる方へ歩いていく。

「ま、待ってくれ!お前の・・・お前の名前は何なんだ!?」


「僕かい?僕は・・・」

世界が、奏翔の視界が真っ白に染まっていく中、それでもはっきりと分かるほどに振り返った少女は笑ってこう言った。

         「・・・天使、だよ」



そうして、奏翔の意識は途絶えた。

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