第8話 ★ 全武力委任権 ★
真由はすぐに司令室に戻っていた。
再び本土からの直通電話が来ていたのだ。
今度は紛れもなく内閣総理大臣その人からのものだった。
DVの操作パネルを触る。
モニターには白銀 隼人の顔が映っている。
「お待たせして申し訳ありません。将官が海上自衛隊戦略兵器開発課近畿支部バベル司令葛城です。」
「私は内閣総理大臣白銀です。時間がありませんので、早速本題に入らせていただきます。どうぞ掛けてください」
白銀はモニター越しに真由に手を出す。
「失礼します」
「では、先日アメリカが宣戦布告を行ったのは風間からお聞きですね?」
「はい」
「我が日本も日米安保に基づき、アメリカ側に付くことは周知。ですが、今回の戦争は明らかに仕組まれたもの。これが内閣府と諜報省の出した結論です」
真由は無言で頷く。
「先程、アメリカ国防総省からまほろばをハワイに向けて出港させろ、と言ってきた。よって、司令らにはまほろばでハワイに向かっていただきます。」
「了解しました」
真由は敬礼する。
「ですが、葛城司令にはもうひとつ日本国からの命令を受けていただきます」
どういうことだ、と首を傾げはしないが不思議に思う。
何より、『日本国』と言ったことに。
「それは、人類の未来のためにあなた自身がアメリカから要求されたことに対して理不尽や無意味さを感じたときはそれを拒絶していただきたいのです。」
これには真由も咄嗟に反応することができなかった。
古来から日本は戦争に対して消極的なことで有名だ、というより周知の事実だ。
同時にアメリカに言われたことは何でもするというイメージもある。
力関係、日米安保から考えれば当然なのかもしれないが。
だが、この人はそれをここで終わらせようとしている。
ただ命令されるからする。
そうではない。
PassiveではなくAcutive。
意思を持って行動する。
従って、理不尽なことがあれば拒絶する。
やっと日本の政治家にわかる人がでてきたと安堵する真由。
「それに際して、緊急時のみ日本の全軍の統帥することができる全武力委任権をあなたにお渡しします。」
これにはさすがに驚きを通り越していた。
文民で軍を統率したがる政治家が軍に一時的なものとは言え完全に軍人が統率権が握ることになるのだから。
何にせよ、せっかくの贈り物を不意にする手は無い。
「万が一のときは頼めますね?」
「わかりました。謹んでお受けします。人類の未来のために。」
白銀は満足とばかりに頷いて、
「では健闘を祈ります。」
と言ってモニターはブラックアウトした。
「全武力委任権、か・・・・・・」
これは責任重大だな、と苦笑する真由だった。
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