第7話 ★ 通達 ★
-訓練施設B-
隊員らはやはり兵らしくもう既に全員中に入っている。
一方でまだ集合時間になっていないので話し声が部屋のドア越しに漏れ出てくる。
一際目立っているのはやはりこの三人、か。
「なあ、これおそらく開戦の報せだぜ」
「お前もそう思うか」
「あまり不用意な発言は控えたほうが良いわよ、羽下」
「誰が馬鹿だ!!」
初めに話しかけて、ばかと呼ばれている男は羽下 涼 21歳。
階級は中尉。
まほろばでは戦術長担当。
羽下にのているのが音場 洋介 21歳。
階級は大尉。
まほろばでは航海長を担当。
二人は部署はまったく異なるが、自衛隊に入る前からの知り合いらしく仲が良い。
そして、貶しているのが本郷 美咲 17歳。
階級は少尉。
まほろばでは索敵長。
長が付くには早いように感じるが、自衛体内では勉学、スポーツ(軍の訓練)でも優秀。
その抜群の成績によって、まほろば搭乗員に選ばれた。
「ふーん、私はばかとしか言ってないのに反応するなんて心当たりがあるのね」
「なにをー!!」
と言って、おそらく口論が始まる。
真由は溜め息をつく。
この特に二人は揉め事が多いのだ。
(少し早いけど、まいっか)
ドアのセンサーに手を翳す。
「葛城司令に敬礼!!」
一斉に手が動く。
「直れ」
真由は着席を促す。
「昨日、日本時刻1630(ひとろくさんまる)にアメリカがソ連に対して宣戦布告を行った。」
隊員らはみな驚愕の表情になっている。
マジかよ、という呟きも聞こえる。
真由は一通り静まってから口を開いた。
「これによって、日本は日米安全保障条約の下、アメリカの軍事的支援を行うこととなる。よって、まほろばも出撃することとなるだろう。諸君、現在よりまほろばは出撃態勢に移行。いつ、命令が下っても良いようにしろ。また、まほろば搭乗員に関しては長期任務の可能性を考慮して本土との直通電話の使用を許可する。」
来たーーーー!!みたいな叫び声が響き渡る。
これは真由も大目に見る。
何せ、彼らは約一年近く本土に帰れていないのだから。
「だが、制限を設ける。発信は一人一回まで。但し、繋がらなかった場合のみ、後で再度発信すること
は可能である。以上だ。解散!!」