譚之弐 忌譚 その弐
「よほうっ! 拓うっ、面白いものってなんだ? 小母さんから聞いて来たんだけどよっ、この天才様の頭脳を真夜中に叩き起こしたからには つーまらないことだったら、ただじゃあおかねぇぞっ! と」
「おじゃまする」
そのうちの一つは一弘の声、そしてもう一つの声はあまり聞き覚えのない声だった。
「来るなっ!!」僕は必死の思いで叫んだ。
「ほほうっ、人様を呼んでおきながら今度は来るなと言う。そのような所業が許されると思いてか? さらにはそう言われては来ずにはおれられぬ人の性をくすぐるとは、おのれ貴様っ! いつの間にそのような小賢しいマネを覚えよった!!」
「|好奇心が勝った(と、いうわけで)、そちらへ行くぞ」僕の叫びを無視して、ずかずかと彼らは僕の部屋へと入ってきた。そして、再度 僕の体が前に引っぱられる、意志ある左手を中心として、『くそっ、油断してなくてもこれかっ!』
奴の力は凄まじく僕一人ではどうしようもなかった、だから僕はその手が一弘に伸びるのに抗えはしなかった。
「こらあっ、拓うっ親友の首を締めてなんとするううぅっ……
「なるほど、面白い事とはこれか”うわべだけの親友! 長年の恨みが犯行の原因か?!”ってところだな、明日の新聞の見出しは」
初めて見る顔の質の悪い冗談がこの状況の中で僕にわずかながらも冷静さを取り戻させた。
「こいつは、反射神経だけは支配できないっ!!」<SCRIPT>青瀬</SCRIPT>
「わかった」言って奴は、必死に自分の左腕を押さえ、咬まれる激痛に耐えている僕に、母と同じ事をやりやがった、初対面の他人に一瞬の逡巡もなく。
「けは はあっ、くはっ、くほっ…、全く、なんで、俺が、こんな目に、会わなくちゃあ、ならないんどうおぁっ!」
「日頃の行いが悪いせいだろうよ」言って、極度の緊張状態にある兵士が冗談を言って心を落ち着かせるという話を思い出していた。
「まだ平静でいられるとは たいしたもんだ」
言って彼が消えて数分後、僕の左手には家中からかき集められた家電製品という名の重しが 青瀬と そう名乗った男の提案で僕の腕に乗っかっていた。
その真ん中が空洞になっているのは、顔がそこにあった家電製品を喰らったからだ。
「君には一応感謝はするが、どうしてこんな事を無慈悲に実行できる」
僕の左手に山のように積まれた家電製品を見上げて僕が不平を鳴らす。と、「青瀬だ。探偵の卵をやっている」というよくわからん答えを返された。
「海よりも深く感謝してほしいな、僕がこなければ、こう あっりとはしのげんかったんだぞ。まあ、一傍観者としてさっきの殺人現場を見ておくというのも魅力的ではあったのだがな。まぁ、それも ここに僕がいなかったと実証できるならばの話なんだが… 非常に惜しいことをした」
「…」本当に残念そうにそう言う彼に僕は、そのセリフが冗談なのかどうかを尋くのはやめにした。