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譚之八 神の箱庭 サトリ抄 その弐

そうして彼女の夢も幻のごとく流転する。


 さわさわと梢を揺らすその姿は残酷なその情景には似合わない程に清涼としていた。


 無数の枝が人を差し貫くその姿のそこに、嫌らしさは微塵も無かった。人が動植物を食うように、当たり前にそれは、人を喰う。


 さわさわとふゆふゆと梢が揺れ、幻のように人が消える。振り向くその姿は、その光景が夢、幻のごとく、玄妙にそこに現出された。


 呆とする男の側に女が立つ『ぬるが良い』

一言、それだけを残して女は男の側を通り抜けた。


 それが緑祐と男との一度ひとたび目の出逢い。


月の光がそよと注ぐ中、再び二人は出会う。

「見逃すのは先夜せんやのみと申したはず…」

変わらず女は、幽玄として囁く。


「ならば、夜が明けるまでつきうてもらおうか」言うと男はおもむろに、彼女を写し始めた。


 静謐の中、その瞬間を、その情景を切り取るかのように、筆が空気を引き裂く、繊細に時に大胆に、それは、不可思議な空間じょうけいだった。


 何故それを許したのか、何故男を留めなかったのか、ただ彼女は、己が写される様子さまを見ていた。


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