譚の七 闘酔者 その七 人形遣いの娘 その参
「はっは、なぁる”音玉の鈴”そぎゃん使い方もあるとな、聴覚からの入力で相手の脳を揺さぶる。叶わぬなら己に使っての肉体の酷使か、ばってん、足りんな、届かんぞ、まだ」威声と鋭い突きが一合、鈴音の皮膚を一枚、突き抉る。
「人の創りし、新たなる人」満身創痍、真白な服は、赤く斑に染め抜かれる中、彼女は吐息をつくように声を奏でる。
「其は、この世の理を離れるが故に」肉体は、妖の身をもってしても耐えられぬ超加速に悲鳴をあげながらもさらに速く「その在りよう故に、もう一人の殺神者」
「そぎゃんこったい。二人とも、神の束縛から逃れ、新たな箱庭と新たな誓約をなすための存在っちゅう点では変わらんな。して、おんしの芸はそれで仕舞いかの、じゃと、こっちも閉幕じゃの、無尽!!」あくまでゆうくりと見える槍刃は数十に分かれ、その鋼の舞が彼女の速さを越えて襲う。
しかし、「がっ!!」次の叫びは、那択のものだった「何っ!?」たたらを踏むようにして、数歩、その後ろからのさらなる双爪を交わし、再び対峙する。
「はっは、幻術でもなか、先ほどまでの超加速とも違う、貴様、なんばした?」試すように、槍刃が振られ、彼女を突き抜けるかと見えたが、再び彼女はその刃の前から文字通り掻き消える。
「手間暇、かかりますのよ、これ」対峙する鈴音には口調ほどの余裕はなく疲労の色が濃い、それでも彼女は意志をもった眼差しで相手を見つめる。「一つ、貴女に問います。それは貴女自身の望みなのですか」
「さてな、創られた時からそうだったからな、それがわっしの意志かどうかなぞ考えた事もなか、ここまでわっしと喋った喰いモンもおんしが初めてじゃきな、ばってん、やる事は、いつも一つさぁね、おんしのその生ば喰らいて、汝れを我がものとするだけさね、ええかげんこん瞳ば開かせたかと!!」その槍先は微塵の揺らぎもなく彼女を捕らえる。
「ならば貴女が私に勝てる道理がありません」穂先が彼女をかすめ、白い服には朱色の装飾がまた一つ、