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譚の七 闘酔者 その陸 殺神者(さつじんしゃ)

 ぞぷりっ、という感触はとうてい刃と刃が交じわった感触ではない。例えるならば鉄のあぎとを持った昆虫に身体中を食い荒らされるというおぞましいほどの感触、ぎちぎちぎちぎちという異音が自身を這いずり回る。その違和感が彼女からその身を離しても消え去らない。


「その身に蠱毒こどく邪法げほうを埋め込まれた外道の一族か」


それは、生をもてあそぶ呪縛、細胞の一つ一つが、飢えに耐えきれず自分自身を喰らい始める痛みにも似た恍惚エクスタシィ、それに裏打ちされた醜悪なる生き様、しかしそれがわたしの、


「それが私の存在理由レゾンデートル!!」


翡翠と言う名の生命を喰らいつくす中で思い知らされる自身の生い立ち、自分の殺してきた命をその身に取り込むことによってのみでしか味わえぬ人外の法悦、喜悦、狂嬉。


目の前には、自身を貪り喰らわれた一人の女がいた。螳螂とうろうの斧を持つその容姿は血にまみれ、身体中を蝕むぎちぎちぎちぎちという異音がする。


それでも彼女は、そこに居た。勝利を確信していたはずの敗北に動じるでもなく再び自らの死地へと赴く。


彼女をむさぼり喰う中で流れ込んでくる彼女の生命、人としての生命を絶たれた過去、その全てを受け入れる。


そして、そこには一人の女が居た。号泣するように、その超然たる美貌はろうろうと、ろうろうと産声うぶごえを上げる。




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