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譚の七 闘酔者 その弐 醜き獣

醜き獣


 過去あの時のように、己自身の血臭に呼び覚まされた己自身の中に埋め込まれた細胞の中に潜む普段は眠っている意志を解放、一瞬の遅滞、そしてその様々の意志が獲物ひょうてきにむかって集約。

 

 用いられる意志は食慾(しょくよく)、己が身を満たし支配する感情かんかくは歓喜! 己の内に巨大なる生命を取りこまんとする混在的な喜び。ただ一つのおもいが彼女自身を支配する。そこに浮かぶは無垢なほどに残酷な童女の笑み


 脳裏を駆けめぐるは受け継がれてきた生命きおくの断片、意志を持たぬ刃、人より生み出された人に在らざる者、人に在らざる者を狩るために生みだされた。ただの走狗イヌ、首輪に呪いまじないを、あやかしを喰らい。取り込み続けねば己自身に喰らい尽くされるという呪いまじを、ほとばしる喜悦かんき、今、この瞬間、彼女は彼女自身の生を実感する。


 鋭敏となる感覚、世界が変容する、世界はこんなにも色彩にあふれ、音が満ちている。生まれ変わるという表現が適切なほどの変容、今なら世界の隅々まで手が届きそうな程の錯覚を生み出す超感覚、世界の一部に擬態している、その異物を認識、そこに向かって無造作に刃を突き出す。


 切り刻むという単純な作業の流れのそこに違和感が生じる。対象の脈動と痙攣、ほんの数刻後にそこに立っていたのはすでに別の存在モノであった。ぞろり、という視線が世界の隙間に擬態しているはずの自分に注がれる。恐怖に伴う作業の遅滞、本能が逃亡を提案するのを理性によって制御きゃっか、勘違い、常に自分が狩猟者側であるというのは大きな間違いだ。フラッシュバック、根本から造り替えられねじ曲げられた自身の死を望む自分、死、シ、し、存在の消失、自己を認識する自身の消失、拒絶、拒絶、その甘美な死の糸は恐怖だ。生命の噴出、自身はこんなにも生きたがっている。


 色彩が変わる。生命と生命の散華、その舞もいすれ終局を迎える。終幕はいずれかの生命の終焉さんげ!!


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