↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/60

譚之壱 紅葉旅館より その伍

「ちょっとまってくれ陽(よう)、全部って、あの事もなのかぁ?」半ば、あきらめながらも一縷(いちる)の望みを込めて僕は彼(やつ)を見た。

しかし、奴らはまるで僕がそんなことをなぜ聞くのかといった顔で(ふぜいで)「うんっ!」と声を見事に唱和さ(ハモら)せて言いやがった。

 一瞬、目の前が真っ暗になったがそれでも何とか気を取り直そうと努力している僕に、他の二つの声がさらに僕を深みへと誘う


「気にすることないよ、まーさん」

「そうそう、元気だしなって 人面疽(じんめんそ)にとっ憑(つ)かれるなんて人生において貴重な体験(こと)じゃない、自慢してもいいんだよっ、それにこの町じゃあそんな事は日常茶飯事の一つよ(いつものことよ)」それでも何とか立ち直った僕が、どーやら彼女達が僕(じぶん)のことを”まーさん”と呼ぶことに決めたらしいと気づいたときには、事態の重大さに気づいた蘇奈(そな)が、その顔を真っ青にして、「なぁっ!? よくあることだぁっ? 本当(マジ)かよ そりゃあっ!?、なら 俺は帰るっ!あんなみっともなくって食費もかかるものにとっ憑(つ)かれるなんて いややわぁっ!」と叫んで席を立ち上がりかける。が、童女(わらわめ)達と陽(よう)に押し止(とど)められ、


「うんっ、この間もねぇ三町目の三浦のじいちゃんがねぇとっ憑(つ)かれたんだけどねぇ、最っ初の頃こそ文句ばーっか言ってたんだけど、後でねぇ いい話し相手が出来たって喜んでいたよっ、そんでそのうちになんかじいちゃんが話しまくるんでつい最近 向こうのほうが根負けちゃってさ今はもういないんだっていって、落ちこんでいたんだよねぇ」


「せっかく、町内腹踊り大会で優勝した矢先だったのにねぇ…、だからお兄ちゃんも あんまり心配しなくていいんだよ」などとちゃちゃをいれる。

『どーでもいいが、人面疽(あれ)はそんな可愛いもんじゃないぞ』

「こらぁっ! 陽(よう)っ、いいかげん人の服を離さんかいっ!!貴様まあぁっ、親友の危機をなんと心得る!」

「嫌だな、お前がいなくなったら僕の身代わりに惜しげもなく差し出せる奴がいなくなるじゃないか。それにな、僕は貴様に悪友と言われている。その期待を裏切っちゃ悪いじゃないか」

「こういうときは裏切っていーんだよっ!!」

その青瀬(あおせ)の冗談とも本気ともつかないセリフにさらに一弘(かずひろ)がさらに蒼白になる。

 この陽(よう)の一見冗談なのか本気なのか見当のつかない質(タチ)の悪い冗談(げんどう)はいつも僕と一弘(やつ)を悩ませてくれる」

「なにいいっ! 聞き捨てならんぞそのセリフっ! ええいっ そういうやつにはこの俺様自ら発明してくれた”身代わり君Mark2”をくれてやるから、離せいっ、ええい離せというにっ!!」

「いらん、第一案山子(かかし)だろうが、あれは」

「それに、そういうなら一弘(かずひろ)、お前が陽(よう)に身代わりにされる前に使ったらどうなんだ?」

「拓うっ、何故そんなことを言うんだぁぁっ、あれは持ち歩くのが大変なんだぞおっ、非力な俺じゃあだめなんだぁぁっ!!」

『いや、そういう問題か?』暴れまくる一弘(かずひろ)を横目に僕はそっと心の中で呟いた。


 ◇ちなみにこれは全くの余談ではあるのだが、身代わり君Mark2の完成予想図 ―機械仕掛けのもう一人の一弘(かずひろ)を蘇奈(かれ)が小脇きに抱えている絵―は、”自由”という題名で後世(のちのよ)の彼の代表作となる。◇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。