譚之陸 業 その七
「どっちにしても寝覚めは悪かろうが」
「問題はだ、彼女がまだ生きているかどうかだな」
「それならぁ、大丈夫ですぅぅ。どろろはつぎの獲物が手にはいるまでぇ いまの獲物を保存しようとしますからぁ、三月は仮死状態で生かされますからぁ」
「そうか、急に立ち止まったのはそういうわけか」
「はいっ、捕食活動の停止中は 他の活動はほぼ休止します、でもぉ、いまのうちに助けないと、防衛本能のため、つちの中にもぐってしまってぇ、救出はほぼ不可能になりますねぇ、ただぁ 体内に異物を抱えている。いまの状態からぁ もぐってしまうまでにあと五ふんくらい時間がありますねぇ」
「おーい青瀬ぇ、方針は決まったかぁ? そろそろ俺達が絶体絶命になりそうなんだけど…」
彼は迫りつつある大口をひきつった笑いで見つめていた。
「ま、時間稼ぎながら、考えるさ」
言って彼は、おもむろにライアットガンを取り出し、ぶっ放した。
「……」
「知り合いにもらった」
目だけで問う友人に彼は何事も無かったかのようにそう告げた。
「……、一度、お前の友人には会っておく必要があるな」ようやく彼はそれだけを言った。
「るせーな、妖怪相手だとな、人間が武器持ってようやく対等以下くらいなんだよ」
「なるほどな、銃弾くらって生きてる生物ってのはチョットな」身体の半分以上を吹き飛ばされて再生を始めた物体を見つめて彼は嘆息した。
「ところで一弘、二発目ヨロシク。しばらく手が動きそうにない。試し撃ちしなくて良かったな…」
「すでに絶体絶命ですかぁ!?」
「心配しなくても、どろろをつかっているってことは殺すつもりはないみたいですよぉ。いまのところはですけどねぇ」
なんのなぐさめにもならない のほほんとした場違いな声が辺りに無情に響いていった。