譚之陸 業 その四
「まーさん、いなくなっちゃう?」
状況をいまいち理解しきれていない童女は、それでも精一杯の彼女達なりの理解を疑問の形で口に出した。
「そぉうなんだっ、一見ちゃん、乙音ちゃんのせいでね」復活するなり彼は彼女達に精一杯の同情を示し、二人をひしと抱きしめるとおいおいと泣き出し始めた。
「いやだあぁぁ、乙音のばかぁぁぁっ!!」
それにつられるようにして二人も泣きだした。
「ああっ、拓磨さんっ。きっとあなたは二人 の愛の為、一人 死地に赴かれたのですね。まっていて下さいね私しも今お側に…、二人の愛の力でなみいる障害を跳ねのけましょう」なにを勘違いしたのか彼女は両の瞳に星をちりばめ、そう叫ぶとあさっての彼方へと走り去った。
「誰か、あのねぇちゃん止めてくれよぉ…、ま、過ぎ去ったた事はしょうがないという事で」走り去った、猫娘を見送りつつ背中に刺さる非難の視線の集中に耐えかね、彼女はあさっての方に視線を固定したままで呟くようにそう言った。
「そうだな、とりあえずここで時間を潰していてもしょうがないわけだ。で、拓磨を追うぞ、雀さん 案内してくれますね」
「は…い」一人周りの迫力に呑まれ ぽつねんと孤独を味わっていた少女はようやくそれだけを言った。
「ただ、先に言っておくがな僕はまだ君を信用していない、後ろから刺されたくなければ不審な行動はしない事だ」笑みを落とした眼差しで彼はそれだけを言った。
「は…い」今度は彼女は心なしかほんのちょっとだけ力強く頷き、青瀬はその様子をどことなく好意的な表情で見つめていた。
「なぁんてぇことを言うんだ、青瀬くーんっ!? こーんな可愛らしい人がそんな事をするわけないじゃないか、前言撤回しろっ!」女性上位主義者は悪友の言動を聞き咎め、虚実の涙にかわって今度は怒りをその額に浮かべた。
「なら、お前がずっと彼女の側にいろよ、今は争っている場合じゃないんだ」付き合ってられるかと言った風で彼は吐き捨て、無視された一弘はちょっと寂しそうだった。「そう言いながら、最初に私をイジメ始めたのは誰よ」反撃開始とばかりに彼女は彼を横目で睨んだが、彼はにこやかに笑って彼女に近づくとこっそりとこう言った。
『ところで先日より仕掛けておいた監視カメラに昨夜の情事が映し出されているのだが、記念ビデオはいらんか、ん?』
「…(赤っ)」