譚之四 ほつれあう その参
『よーしゃねーなぁ、心配して損した』
「人間風情がっ!!」
言った男の身体は人間の姿をもうあまり保て ないようで奴の身体は鴉天狗のようなものへと姿を変えつつあった。
「俺の名は青瀬、本業は探偵だが、今は符術士の真似事をやっている」
「覚えていろ貴様っ! 次は八つ裂きにしてや るっ!!」
憤怒の形相で青瀬を睨みつけ奴は黒いコートを翼へと変じて、空へと消え去った。
「鴉の化生とは最初に思わんかったものなぁ …」
軽口をたたきながらも彼の顔には疲労の色が滲み出ていた、その証拠に彼の顔にはいつもの温和な微笑みがみがなかなか浮かばない。
*
「拓磨、立てるか?」 「ああ 何とかな、助かったよ…、んっ!?」 立ち上がろうとして地面についた僕の手が何 かを掴み、砂を噛む音をたてた。
「ビー玉!?、何でこんなところにも?」
「最初に飛ばしたヤツさ、奴の足元をすくったのはこっちだ」そう言われてよく道を見ると、あちこちに古典的 なトラップが仕掛けてあった。
「…、危ないな」しばし呆然とした後、僕はそれだけを呟いた。「普通に歩く分には問題ない、それより毎日ここを掃いている貴様がこれに気づかなかっことのたほうが問題だ。気づいていればあれほど奴に遅れを取ることもなかったろうに…」
「悪るかったな、自分の事に一生懸命でよ」
「拓うーっ、大丈夫うっ! 僕はもう心配で心配でハラハラだったのさっ!」 なおも問いかけようとした僕と青瀬との間に一弘 が割って入ってきた。
「どっからわいてでた?」
「ずーっとそこにいたのさっ、大変だったなぁケガないかっ?」「友達甲斐無ぇのな、お前…」
「心外だな親友よ、俺だって、俺だってな…」
「何をしていた?」
「ずーっとそこで祈ってた」
「…」
「そ、それだけじゃないぞ、陽ちんのトラップのエサにもなっていたんだぞ、地雷符のっ!!」
無言の圧力に耐えかねて一弘は取り繕うようにそう叫んだ。
『胸を張るな、胸を…』