譚之四 ほつれあう その弐
ひゅいんっ!
僕が半ば覚悟を決めたとき、風を切って黒い点が飛来した。
「誰だっ!」振り返った奴の視界に、いつもの笑みをおとした陽の真剣な顔があった。
「当たらなかったか」
「麗しき友情とでもいうやつか、人間よ、忠告しておいてやる。勝算のない闘いは死を招くだけだぞ」言って不用意に陽に近づいた奴の視界が、不意に逆しまになった。
「不思議か? 手の中のもんに気をとられすぎたな、実をいうとたんなるキーホルダーさ」
言って彼はチャラチャラといわせていた両手を開いてみせた。 憤怒の形相で彼をにらみつける男の手に何かが触れた。
「ビー玉…、こんなものでっ…」
「そんなものでも使いようによっては、色々と貴様らをコケにするのに使えるものさ」
「フンッ、人間風情がっ!」決まり悪そうにしながらも奴は青瀬に素早くつめ寄ったかと思うと、彼の真上に跳んだ。
速いっ! 陽には一瞬、奴が消えたように見えたはずだ。
『青瀬っ、逃げてくれっ、くそっ、鎮まれ鬼っ!!』
奴は僕が焦れば焦るほど歓喜にのたうつようだった。
「俺を甘く見て俺の背後を取ろうとし…、
「うぎゃーっ!」 しかし、聞こえてきたのは予想と反する悲鳴 だった。背後の呪糸に引っかかって、鳴く」
「きっさまーっ!」 ”悪戯っ子の笑み”を浮かべて陽はゆっくり と振り返り、「俺の”紙切れ”の呪力に騙されたな」言ってしばし二人は糸を挟んで向かい合い、青瀬は懐から取り出した紙切れを無造作に呪糸に押しつけた。ばじゅっ!という小気味のいい音をたてて糸が焼ききれた。
「忠告しておいてやろう、勝算のなくなった戦いは自らの死が代償だ」
「誘いか、その手に乗るかっ!」 同時に奴はそう叫ぶと青瀬が現れた路地の方に何かを見つけて走りこんだ。
「侮りがたしと見解を改め、目標を変え…、四雷爆散、地雷符!!」声と同時に爆発音、それに悲鳴が重なる。