↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/60

譚之四 ほつれあう 閑話 その壱

 その村では 鬼を神と崇めていた。

”鬼神(かみ)様…鬼神(かみ)様っ! …鬼神(かみ)様!!  我らの村に繁栄(さかえ)を! 我らを貴方様の庇護の御元(おんもと)におおき下さいまし、石女(うまずめ)に貴方様の御神力(おちから)をもって子を授け給え、鬼神(かみ)様、鬼神(かみ)様っ!  我らに守護(まもり)と繁栄(さかえ)をお約束下さいまし…鬼神(かみ)様!…鬼神(かみ)様!!…我らにっ! …我らにっ!! 我らだけにっ!!!”


 それは祈りというよりはむしろ呪いであった。

 人の心には闇が存在するという。

 だからといって誰がそれを責められるというのだ。

 

 長々と唄(うた)うように口ずさむ彼らの視線(かお)の中央(なか)、血に黒ずんだ質素な石壇の上、巫女(いけにえ)の衣装(よそおい)を纏わされた一人の少女が四肢の自由を奪われたまま横たわる。

 長い長い唄(いのり)が終わり、一人の男がしづかにその 手を挙げる。と、それを合図として少女の目が開かれた。

 

 夢と現つ(うつつ)をしばし彷徨(さまよ)った少女が、自身に迫り来る刃が現実の自身の身の上に降りかかる災いだと知ったときの聞くもの全ての体毛を一筋残らず逆立てずにはおかない最期の悲鳴。

 

 そして、女が四肢を封ずる麻縄と血の滲むのもかまわず暴れる(もがく)様は見るものすべてに狂気を漂わせた。

 そして、少女(おんな)は、動かなくなった。


 年に一度(ひとたび)、村の(この)者達は よそより見目麗しい処女(おとめ)をさらっては、それを贄として鬼神(かみ)に奉じた(ささげた)。


 別に驚くには値しない、人間が他の動植物達(ものたち)の頂点に立つと自認した(おもった)とき、最高の贄は人となったのだから…


 少女の美貌に貼りついた最期の恐怖(かお)。

噴水のように沸き上がった女(にえ)の血に彩られながら歓喜の表情をたたえる顔、顔、喜悦(かお)!


 *


 源初(はじめ)、鬼も神もいなかった。

すべて、人の欲望が産み落とした。


 血を食し続けた丸い石壇(いしづくえ)が現実の鬼(もの)となって彼らを支配するようになるのはまた後(べつ)の話である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。