譚之弐 忌譚 その仇
沈黙
「貴様、妖怪オタクだろうが、その意地と誇りにかけてなんとかしやがれっ!」学内でもトップの成績をおさめている彼が嫌われている性格上の理由のもう一つ すなわち妖怪オタクである事を一弘は当てにしてみた。
「できるならとっくにやっている、僕はそのためにに来たんだからな」と、この男にしては珍しく気弱な顔と声とでそう言った。
天使が二人の間を通り抜け
「そう言えば、なんでお前が来たんだ?」
彼の真摯な顔に気を取り直し、彼はそう尋いてみた、一弘は短気であった。そして同じように気を取り直すのも早かった。
「興信所の息子の情報収集能力を甘く見てもらっちゃあ困るな、随時この地区にはうちの職員が張っているのさ」
「ちがううっ! そんな事を尋いているんじゃあないっ!」
「わかってて言っているんだがな」
|悪戯っ子の笑みを浮かべて(ちょうしをとりもどして)彼は言った。
「なぉさら悪いわっ!!」
激昂して再び一弘はテーブル越しに彼に詰めよった。
「顔を近づけるんじゃない、暑苦しい」
「話せば、どけてやる、なんならこのままキスでもしようかあぁ陽くうぅんっ?」
我慢の限界といった態で彼は、ろくでもない冗談を言った。
「…、奴には借りがある、ただそれだけの事だ」
「なんとかならないのかよっ!」
再び柔和な笑みを浮かべた青瀬にそれ以上の事は尋かず一弘は再び同じセリフをひとり口にした。
「そうさなぁ…、今の僕らにできるのは彼が鬼に変わるその前に殺してやることくらいかねぇ」
「それしかないのかよ?」
「あとは祈るだけだよ。今のところはな」