3章 ー05
意外にも緊張して冷えた透子の頬より白拓の指の方が温かかった。
「なら、あの老婆だけ生かしてやろうか?」
つーっと透子の頬を過ぎ、喉元で指を止めた。
(駄目!)
透子は白拓の爪で皮膚が傷つかないよう目だけに力を込める。
「……ねぇ、白拓」
そっと白拓の指に自分の指を絡めて握る。
「きゅうび様は今、封印されているんだよね?だったらまた人類滅亡前に封印されるかもしれないよ」
白拓は面白そうに透子の指を握り返す。
「そうだな。それでも構わない」
ニンマリと白拓は笑う。
「でもそれだったら、白拓の嫌いな無駄な殺生と同じだわ。もう平和な世だもの。もう内戦なんて起こらないわ。もし、起こったとしたら、その時は私を煮るなりなんなり、きゅうび様の封印を解けば良い」
白拓は笑みを消して透子を見つめた。
透子も負けじと睨むように見つめ返す。
「本気か?」
ずいっと白拓が顔を寄せる。
「えぇ」
あと10センチもないところに白拓の顔があり、叫びそうになるのを堪えて、透子は頷いた。
薄茶の目に凝視されて、透子の体が僅に震える。
白拓はそれを面白そうに笑い、透子の手の甲を自分の頬に当てた。
透子は逃げ出したい気持ちであったが、余裕のある白拓に負けじと、背筋を伸ばす。
「今の世ならきっとどちらも傷付かずに暮らしていけるわ」
透子は真っ直ぐに白拓を見つめる。
『白拓、仲良く暮らせるならそれに越したことはないと父さんは思う』
白拓の脳裏に懐かしい声が響いた。
「……分かった」
白拓はふっと煙管に息を掛けそれを糸屑に戻す。
透子は彼の一言に肩を下ろした。
「では、再契約な」
(しまっ…!)
離れようとした時には既に時遅し。




