2章 ー04
透子…崖かけ落ちたところを白拓に助けられる。
白拓…見目は良いが口の悪い妖かし。人間嫌いの野狐らしいが、透子を助ける。
快…すねこすりの男の子。人懐こい笑みをよく浮かべている。
「あぁ、そうだな」
「そんな訳ないじゃない!」
透子は白拓の袂を叩いて、彼から離れると快に近づいた。
「どうかしたの?」
「あの、朝餉の準備が出来ました」
快がばつの悪そうな遠慮しているような面持ちで透子に言う。
「有り難う。ばっちゃんと食べても?」
透子がにっこりと笑うと「勿論、良いですよ!」と、快も笑顔になった。
(朱奈さんは私に"白拓に惚れるな"とか言ってたけど、ちょっかいを出してくるのは白拓の方じゃない)
白い目で白拓を見ながら、朱奈にそう言ってやりたい心境の透子であった。
「あの、透子さん」
「なぁに?」
膝を折り、透子は快に目線を合わせる。
「僕一人で運ぶのが不安なので、手伝ってくれますか?」
快はもじもじと指をいじっている。
「勿論、良いわ」
透子はそんな快を可愛く思い快諾する。
「ではお膳を持ってきます!透子さんはちょっと待ってて下さいね」
「え?」
快は小走りで出て行った。
快に向けた手は空を切り、白拓がクスクスと笑う。
(何よ)
透子は白拓をジロリと見る。
ニヤリと笑うではなく、目元に笑い皺を作って笑う白拓に胸がギュッとなる。
(嫌味なくらい綺麗な人……)
ナツに会う為か白拓は黒の袴を履いており、それがまた良く似合っている。
透子の視線に気づくと白拓はニヤリと笑った。
「透子さん、お待たせしました。なんで不機嫌そんなんです?」
快がきょとんとした顔で透子を見た。
「別に不機嫌じゃないよ。さ、行こう」
透子は快を促す。
(あの顔は自分の顔立ちが良いのを分かっている顔だわ)
白拓の余裕のある顔が思い出された。
透子はふんっと膳を持つとナツの部屋に入って行った。
快がボロが出ないよう廊下で引き下がった。
ナツは透子の機嫌の悪さを指摘したが、透子は否定し、ご飯を掻き込んだ。
偶然なのか透子の好きな大豆の煮物があり、一瞬胸が苦しくなったが、それを無視して大豆を咀嚼する。
(白拓は妖かし、白拓は妖かし……)
分かっているがあの苦手な薄茶の瞳には惹き付けられるものがある。
透子は脳裏に浮かぶ美しい妖かしの姿を掻き消すかのように大豆を咀嚼し、それを飲み込むのだった。




