2章 ー03
崖から落ちた透子を助けた野狐・白拓。
その育ての親・ナツも治療し、回復した。
今後のナツについて話があるというがー
「え?ばっちゃんをここで?」
白拓の話が終わると透子は眉間に皺を寄せる。
一方、白拓は話が長くなると思ったのか、その場に腰を下ろす。
「お前追われていたのだろ?なら、ここで隠れている方が良かろう」
透子は白拓の正面に座る。
「それは分かりますけど……」
「けど、なんだ?」
「白拓は人間嫌いなのでしょう?それなのに、ばっちゃんまで……」
「あこまでの老婆なら人間も妖かしもさして変わりあるまい」
「ちょっと」
透子は半目を白拓に寄越す。
「……他に妙案でもあるのか?」
片足を起こして、そこに自分の顎を乗せ白拓が透子を見つめる。
「ないけど……」
透子は白拓の薄茶の瞳が苦手である。
自分の内部を見透かされているように感じるからだ。
「ならば、決まりだな。野菜の育て方も知っているだろう。快も喜ぶ」
ふっと白拓の口元が緩むのを透子は見逃さなかった。
(根は良い人のかもしれない)
自分と差のないお膳。暖かい布団。白拓が人間嫌いとは本当なのか疑ってしまうくらいだった。
「あれ?白拓って睫毛は黒いんだ」
薄茶の瞳を縁取る睫毛は長く黒い。
普段伏している睫毛が、目を伏した時に、肌の白い白拓の顔にとても綺麗に映える。
「お前は全てが黒いな」
白拓は透子の頬に手を添え、瞳孔と虹彩の区別の付かない透子の瞳を覗き込んだ。
この世の者とは思えない-事実、人ならざる者である-白拓の顔は整い過ぎて、まるで作り物のようだと透子は思った。
ふと気づけば、白拓の髪は金色になり伸びて耳が立っていた。
クイッと顎を上げられ、透子ははっとして白拓の顎を両手で上に押しやった。
「お前なぁ……」
白拓がつまらないような苛立ったような声を出した。
「今のは白拓が……」
「あ、僕、お邪魔でした?」
両手で顎を押しやる透子と、透子にくっつく白拓を見て、襖を開けた快が顔を赤らめ襖に顔を隠す。




