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1章 ー01

 透子は老婆のナツと二人暮らしをしていた。


 本当の家族なのか知らなかったが、透子にはそんな事はどうでも良かった。


 山で暮らしている透子にはナツが全てであったからだ。


「人間とは恐ろしいものだな」


(……だ、誰?)


 凛として美しいが、冷たい声に透子の意識が覚醒し始めた。


 痛む体はあまり動かさず、声の方へと目を向ける。


 そこにはこの世のものとは思えない美しい青年が立ち、透子を見下ろしていた。


 青年はニヤリと口角を上げ、透子の側に腰を下ろす。


「意識が戻ったか。だが、体中痛むだろう。お前は大事な身だ。ゆっくり休むが良い」


 青年の薄茶の瞳が透子を覗き込む。


 透子は薄茶の瞳を見たのは初めてであった。


「あ、お目覚めですか?」


 ひょこと少年が開いていた襖から顔を出す。


 こちらはどこにでもいそうな普通の男の子だ。


白拓はくたく様、朱奈しゅなが来てますよ」


「面倒な客だな。もうバレたのか?」


 白拓と呼ばれた美しい青年が立ち上がった。


「どうでしょう?僕では相手出来ませんので早く行って下さいよ」


 男の子は白拓の背を押し、部屋から彼を出す。


「あっー」


 透子は見てしまった。


 白拓の背を懸命に押す男の子の頭部にぴょこと何かが飛び出したのを。


かい、お前、気を抜くなと言っただろう」


 白拓は、はぁと溜め息を吐いた。


「えっ?……あ!」


 快は頭に手をやり、やっと現状を知った。


 快の頭には犬のような耳が生えていたのである。


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