1章 ー14
「それに違いないな。ここの維持に加え、人間二人を助けるのは思ったより妖力が要るらしい」
透子から目を外し、はぁと白拓が息を吐いた。
丁度、快がやってきて、二人の前に箱膳を置く。
「おっ、酒があるじゃないか。気が利くな」
膳の側に置かれた徳利に白拓は目を細めた。
「それは僕じゃなくて濁ですよ」
透子のお膳を置きながら快が答える。
「だろうな」
ニヤリと白拓が笑うとサラリと髪が揺れた。
「それではごゆっくり」
快が手をついて退室する。
「おい、酌しろよ」
徳利を掲げる。
「お酌なんかしたことないですよ」
「なんだ、手のかかる。こうやって手を添えて……あん?なんだよ一丁前に照れてんのか?」
距離を詰め、実際に透子の手を取りながら説明していた白拓がニヤリと笑う。
「距離感がおかしいのよ」
負けじと白拓の目を見つめる。
「ふ~ん」
白拓が透子の顔を覗き込み、透子は反射的に仰け反った。
「じゃあ適当で良いから注げよ」
お猪を透子に向け、透子は震える手でお酒を注ぐ。
白拓はそれをくいっと飲み干した。
「今日は有り難う」
「ん?」
魚に箸を付けようとしていた白拓が手を止めた。
「私もばっちゃんも助けてくれて」
透子は照れ笑いを浮かべている。
「……お前は馬鹿か?お前は俺に何されたのか覚えてないのか?頭のそれはお飾りなのか?」
次から次へと出てくる言葉に透子はむっとする。




