1章 ー12
布団は透子が使っている古い着物を詰め込んだ物ではないようで、ごわごわしていない。
透子は意を決して布団から出て、襖に手をかける。
そーっと襖を開けると、襖は音もなく開いた。
目の前は壁であり、左右には透子のいる部屋を中心に4つずつ部屋がある。
(思っていた以上に広いのね)
真ん中に囲炉裏のある透子が住んでいる所とは大違いである。
透子はそっと廊下に足を付けた。
途端、ヒヤリと冷たい感覚に襲われる。
そう、本来ならこの季節、これだけ冷たい筈なのである。
そっとそのまま右に向いて歩き出すと
「何処へ行く?」
と、背後から白拓の声が響いてきた。
見ると、左の突き当たりの壁に、妖かしの姿の白拓が気だるそうに寄りかかっていた。
「えっと……」
言いよどむ透子に「老婆の所か?」と、白拓が歩み寄ってきた。
透子は大人しく頷く。
「こっちだ」
すらっとした白拓が横を通り抜ける時、草原のような匂いがした。
透子の右隣の部屋を開けると、行灯の灯った部屋にナツが横たわっていた。
「ばっちゃん」
透子は小声で近づき、彼女を見る。
規則正しい寝息を立てており、透子はふっと顔の緊張を解いた。
「老婆は腰痛持ちだったか?」
「え?」
透子が白拓を振り返り見る。




