1章 ー11
「白拓様が折れていた骨を治しましたが、まだ……」
「骨が折れてたの?!」
透子は快の顔に自分の顔を近づける。
「多分、倒れた時に折れたんだと……」
快は両手で透子との間に壁を作り、後退する。
「でも、白拓様が治して下さったのだから大丈夫だと思いますよ。今はただ寝てるだけで……」
手を少しどけて透子を見る。
「そう……」
透子はほっと胸をなでおろした。
「……快くん、白拓はどうやって傷を治すの?」
まさかと思うけど、口づけは治すのに必須なのかと透子はドキドキしている。
だとするとばっちゃんにも……と、要らぬ想像をしてしまう。
「手をかざして、自分の妖力を注いでいるのだと思いますよ。僕は出来ないので正確な事じゃないかも知れないけど」
透子が身を引いたので、快は手を下す。
「そうなのね。教えてくれて有り難う」
透子は笑顔を繕い、快に向ける。
「いえ、いえ。僕で良ければまたなんでも聞いて下さい。それでは夕餉を持ってきますね!」
快は透子の笑みを見て、安心して出て行った。
閉まった襖を見つめながら(なんだ、良かった……?)と、透子は複雑な気持ちになる。
透子は唇に手をやる。
(白拓が分からない。親の仇だと人間を憎んでいるのは分かる。だけど、私を助けたり……そうかと思えば、ばっちゃんを助ける為に身を捧げろって言うし……)
薄茶の瞳を薄めて妖艶に笑う彼の顔が脳裏に浮かぶ。
そしてやっと、透子は気がついた。
今が冬であるのに、ここは寒くないと言う事に。
辺りを見渡す。
部屋には窓がなく、白拓達が出入りしている襖以外に出入り出来るところはない。




