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1章 ー10
「ねぇ、快くん、そもそも白拓はどうして人が嫌いなの?」
嫌いな人間に口づけするとはどういう了見なのか。そもそもどうして白拓は人間が嫌いなのか。
「先の西南戦争で白拓様はご両親を亡くされています」
快が俯く。
「西南戦争……」
九州から離れた地にいる透子にとってそれは、どこか遠い国の出来事のように思っていた。
それに西南戦争は透子の産まれる前にあったものだ。
「朱奈さんの話では焼けゆくご両親に泣き叫んでいたらしいですよ。今にも飛び込みそうで、朱奈さんが必死にそんな白拓様を止めていたんだとか……」
戦火に向い、あの薄茶の瞳から涙を流しがら両親の名を呼ぶ白拓を抱きついて押さえる朱奈が脳裏に浮かぶ。
「朱奈さんも似たような境遇で、化け猫がいるとと隠れ住んでいた村人にバレて……あ、人間の透子さんにとっては嫌な話ですよね」
すみませんと快は眉尻を下げた。
「ううん、教えてくれて有り難う」
透子は首を振る。
朱奈の蔑むような目が思い出された。
(だからあんな態度なのかな?)
自分が朱奈に何かした訳でもないが、彼女は透子を毛嫌いしているのは確かである。
「あと、ばっちゃんは……」
透子はナツが心配であった。




