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1章 ー09


 ◇


(し、信じられない……)


 白拓が出て行き、透子は一人、布団の上で自分の唇を押さえる。


 まだ白拓の唇の感覚が残っている。


「透子さん、夕餉を……あれ?白拓様が何かしました?」


 顔を出した快が首を捻る。


「な、何かって?!」


 透子は動揺し、掛け布団を握り締めた。


「起きていても辛そうではないから、治してもらったのかなと思ったんですが、違うんですか?」


 快がてけてけと近づき、側で正座する。


(そう言えば、痛くない)


 足も脇腹もどこも痛くなくなっていた。


「それに透子さんから微かに白拓様の妖力が感じられますよ」


 快は無邪気に笑いかける。


 (いつの間に?)


 透子は目を落とす。 


『契約の印な』


 不意に白拓の声が脳裏をよこぎった。


(あの時だわ。きっと、そうに違いないわ)


 透子の自由に出来ないよう怪我を完全に治さなかったと言っていた。でも今は人質がいる。その為、怪我が治しても良いと判断したのだろう。


「良かったですね」


 快の無邪気な笑顔が胸に刺さる。


「良かったのかな?」


 代償のある施し。


 その代償が自分の身を捧げる事をだなんて……そう思うと、手放しで喜べなかった。


(あれ?そもそも身を捧げるって私の認識であってるのかな?)


 色々な事を浮かべて、口づけを思い出し、透子は頬を染めた。

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