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序章
(どうして?なんで?)
透子は素足で雪山の道を走る。
慌てて家を出たせいで素足である透子の足は赤くなり、足の感覚は殆ど無くなってしまっていた。
それでも透子には足を止められない理由があった。
「追い込め!」
野太い声が寒い空気に響き渡る。
(すぐ側まで来てる!)
透子は男達に追われているのだった。
「あっ……」
遂に足が縺れ、雪に体を打ち付ける。
着物の裾から見える足も雪に触れ、体全体が凍えそうであった。
「いたぞ」
男の声に透子は慌てて体を起こす。
(でも、駄目だ。こっちはー)
すぐそこは崖であった。
崖の下には白く雪が積もっており、落ちても死ぬことはないかも知れない。
ゴクリと、透子は生唾を飲む。
「よくものうのうと生きてたもんだ。お前のせいで今年の雪はいっこうに止まねぇ。早く山神様の所にいっちまえ!」
男が鍬を振り上げ、透子はその身を後退させ
「っ!」
そのまま崖へと落ちていった。
ドサッ
白い雪が舞う中、男達は崖から落ちた透子を見下ろす。
「放っておけば凍死するだろ」
一人がそう言うと「そうだな」と、他の男達も同意し、その場を去って行った。
残された透子に白い雪はゆっくりと舞い落ちるのだった。




