戦いの先へ
どうも!スキーです!
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
第一幕【信頼】
俺は翌日、デルゲ・セントラルの住民全員に、学園へ避難するように指示を出した。だが、全員が俺を居ないもの扱いをするかのように、無視をする。誰も信じようとはしない。そのはずだ。能力を与えたとされる自由神が、このデルゲ・セントラルを支配するなんて…ましてや、特に権力もない俺の話を信じる者なんて居ないだろう。だが、俺は憤りを隠せなかった。デルゲ・セントラルの住民たちもまた、自由神復活のために作られた存在に過ぎないと思うと怒りが湧いてくる。
「お前ら、これは緊急事態だ。」
街のサイレンで俺の声が辺り一帯に響く。
「誰がお前の話なんて信じるか!化け物め!」
以前、ナースやアスガのような実力者と戦い、勝ったため、気付けばそう呼ばれるようになっていたようだ。
「そ、そうよ!それにあなた一人でなんとかできないの!?」
俺自身は正直、生徒達など、どうでもよかった。どうせ再生させることもできる。しかし、デルゲ・セントラルの仲間たちが傷つくことは許せなかった。
そのとき、結弦と野郎が叫ぶ。
「俺達もヴィクトニケに賛成だぜ!!」
「僕も、ヴィクトニケを…信じてやってくれないか!」
その声に生徒たちは一瞬、静まった。それに呼応するかのように、デルゲ・セントラルが揺れる。
「なっ、なんだ!?」
上から声がし、空を見上げる。そこには空に亀裂が走っていた。
第二幕【神々たち】
「では、我々が証明しようか!自由神は…居る!」
その場に声が響く。空から次元を裂いて現れたのは、オーディン率いる天界メンバーとクリスだった。学園の生徒たちは驚き、ざわめく。
「あっ…あれって神話で見たオーディンじゃねぇか!?」
「バカっ…!オーディン"さん"だろ…」
「勝利の因果を決めるっていう最強の…?」
だが、オーディンの声がさらに響く。
「貴様ら!ヴィクトニケ様に従うのだ!これが、私からの命令だ!」
「オーディン達…呼んでもないというのに…」
「ごめん、私が呼んだの。きっとヴィクトニケの言葉だけじゃ皆は動かないと思って…それに、皆が居たほうが心強いでしょ?」
クリスがそう言うと後ろから声が聞こえた。
「俺も…皆に手を貸すとしようか…」
「私もです。」
「僕がヴィクトニケの意見に賛成したら女子は皆ヴィクトニケに従っちゃうよね…☆」
「1年なのに凄いのね…」
そこには零矢、凪海、空兎、弓月がいた。空兎が降りてきて言う。
「ここは僕たちが皆を強制避難させるよっ!☆ヴィクトニケ君は自由神の事で頑張りな?どうせ僕たちが割って入ったところで次元が違うからね…」
強がりながらも背中を押してくれる空兎に、俺は小さく頷く。
「ふっ…そうか。それはありがたいな。じゃあ自由神を止めることに専念させてもらうとしよう…まだいつ復活するかは分からんが、きっと能力者が一番集まる学園に現れるだろう…」
未来予知を使っても、自由神の存在は観測できなかった。いつ現れるか分からない緊張感――JOKERよりも強い存在が来るだろう。それだけで背筋が冷える。しかし、仲間たちと俺の決意に、俺はもう引く道を持たなかった。
「ヴィクトニケ」
零矢が聞いてくる。
「枠を越える能力を使えば…どこの存在階層に居ようとも自由神の存在階層の枠を支配してしまえば自由神を倒せるのではないのか?」
枠を越える能力は、概念すらも越えてしまう能力だ。それが例え、観測不能だろうが、物語そのものの枠だろうが、なんでも超えれる。確かに、存在階層の枠を越えれば見つかってたかもしれない。
「それはもう試した。自由神は存在階層を越えた所に居るんだろう。姿が確認出来なかった…」
そう言って俺は亜空間を開き、そこにデルゲ・セントラルの住民達を避難させた。
広場では泣き叫ぶ子供、必死に荷物をまとめる老人、混乱する教師たちの姿があった。
「どうして……どうして逃げなきゃいけないんだ!」
「私達の家はどうなるの!?」
「怖い……帰りたい……!」
不安と動揺が渦巻き、誰もが現実を受け入れられないでいた。
俺は声を張り上げた。
「落ち着け! これは緊急事態だ。お前たちを守るためにやっている!」
だが、人々のざわめきは簡単には止まらない。
「信用できるかよ!天界だのなんだの…能力者同士の戦争に巻き込まれてるだけじゃないか!」
「そうだ、俺たちはただの巻き添えだ!」
「化け物能力者の言葉なんか信じられるか!」
――胸の奥が痛んだ。
それでも、立ち止まるわけにはいかない。
第三幕【仲間の覚悟】
そこに結弦と野郎が前に出て、声を張った。
「いい加減にしろよ!ヴィクトニケがどれだけ俺たちを守ってきたと思ってるんだ!」
「僕たちは実際に戦場を見た!ヴィクトニケは命を張って守ったんだ!だから信じよう!」
住民たちは一瞬黙り込む。
だが、不安の種はまだ消えていない。
「本当に守れるのか……?」
「JOKERですら、あんな化け物だったのに……」
その声を遮るように、大地が揺れた。デルゲ・セントラル全体がきしむ。
空に走る亀裂のような光景に、住民たちの顔が一斉に蒼白になる。
「な、なんだ!?大地震か!?」
「違う……これは……世界そのものが揺れてる……!」
俺は低く言い放った。
「これが現実だ。信じる信じないの問題じゃない。――逃げなければ死ぬぞ。」
七央が人々の間に飛び込み、震える子供を抱きしめながら優しく声をかける。
「大丈夫。絶対に守るから……だから行こう。みんなで生き残るんだよ。」
その姿に、群衆の中にわずかな落ち着きが生まれた。
やがて住民たちは互いに声を掛け合い、亜空間への移動を受け入れていく。
デルゲ・セントラルが静かになっていく。
「よし……避難は終わりか」
確認し、後ろを振り向くと七央、結弦、野郎、無羽飛、アスガが居た。
「お前らはJOKER相手に何も出来なかった。つまりお前らは自由神には勝てない。自由神はデルゲ・セントラル住民のパワーを使えないとはいえ、JOKER以上だろう。ピンチになればすぐに引き返せよ。」
仲間は一瞬押し黙った。だが、すぐに口を開いたのは七央だった。
「……それでも、私は戦いたい…癒やすことしかできなかったけど、今回はそれでもみんなを支えるから!」
アスガが手を勢いよく上げた。
「正面からぶつかって負けたの、JOKERには…でも……だからこそ今度は勝ちたい!負けたままじゃいられないの!」
結弦は深いため息を吐いたが、目は揺らいでいなかった。
「冷静ぶってたけど、あの時は心臓が震えてた。……でも今度は逃げない。絶対にだ。」
無羽飛が少しうつむき、苦笑いを浮かべた。
「JOKERに怯えて戦えなかった自分が情けなかった。でも……今は違う。俺も、戦いたい。」
野郎は勢いよく拳を突き上げて叫ぶ。
「仲間を守るってことが、どれだけ重いか知ったんだ!だから戦うぜ!勝つために!!」
その言葉に呼応するように、全員の目に覚悟の炎が宿る。
「ヴィクトニケが居て負けるわけない!」
「そうだぜ!なんかよく分かんねぇけど自由神ってやろーを倒そうぜ!」
「僕も、ヴィクトニケが居たら負ける気しないな。」
「ヴィクトニケ……この戦い絶対勝つぞ。」
「ヴィクトニケは私より強いんだから倒してもらわないと困るわよ!」
仲間達の決意も受け取った。
その瞬間、俺に通信が入る。クリスだった。
『自由神らしきエネルギーを感じる……そして、このエネルギーの余波だけで亜空間にも重い空気が伝わる……無限多元宇宙の証明を一度切る。じゃないとこの宇宙……保たないよ。』
「分かった。」
クリスとの通信は途切れた。
するとすぐに宇宙空間が“無”の空間になった。これなら壊れる空間もない。
――その時、一瞬だけ黒いモヤが見えた。
「なにか、見えたな」
「いや、なにも見えないぞ…」
俺は仲間に伝えた。だが、どうにも見えないらしい。
恐らく俺と同じ“枠を越える力”を持っている。
背筋に寒気が走る。空気が張り詰め、肌が軋むようだ。
仲間たちもそれを見えはしないが、なにか感じ取ったのか、息を呑む。
「な、何この寒気……」アスガが震える声を漏らす。
「ただの敵じゃない………」七央が小さく呟いた。
「最終確認だ。お前ら。挑む覚悟はあるのだな?」
全員が一斉に応える。
「「「「「もちろん!」」」」」
その瞬間、亜空間にいるオーディンの声が割り込むように響いた。
『よく言った、若き戦士たちよ!恐怖を越えて挑む者にこそ、未来を繋ぐ資格がある!――だが忘れるな。相手は因果を喰らい、存在そのものを侵す化け物。決して油断するでないぞ!ヴィクトニケ様も…!お気をつけてください…!』
その声は警鐘であると同時に、皆を奮い立たせる鐘の音のように響いた。
さらに、避難している亜空間からも零矢の声が届く。
「……俺たちはもう戦えない。でも、信じてる。ヴィクトニケ、七央、みんな……必ず勝ってくれ。」
空兎も両手を組み、冗談めかしながらも真剣に言った。
「祈るしかできないなんて、僕らしくないけどね……でも祈るよ。絶対に戻ってきてくれよ!絶対に!」
その祈りが仲間たちの背中を押すように広がり、張り詰めた空気の中で温かい光を宿した。
するとクリスの仕掛けた警報の音が鳴り響いた。クリスは過剰なオーラに反応すると警報が鳴るようにしていた。
『もうすぐ来るよ、ヴィクトニケ』
自由神の異常なオーラに反応した警報は皆の緊張を揺さぶる。
俺は深く息を吸い、仲間たちを一人ひとり見つめる。
――七央、結弦、野郎、無羽飛、アスガ。
皆の顔に浮かぶのは恐怖ではなく決意。
「その言葉……受け取ったぞ。必ず……守る。仲間も、この地も!」
警報音と決意の声が重なり、自由神との戦いの幕が上がろうとしていた。
第四幕【不自由な自由】
警報と共に、自由神が存在を顕現させた。
「こいつが自由神…!」
俺達は戦闘態勢に入る。
「うむ?能力者が随分少ないな…それどころかデルゲ・セントラルが無い…」
その言葉と同時に、全員が一斉に攻撃を仕掛けた。
バンッ!!――銃声が響く。
結弦が躊躇なく銃を撃ち放った。
「確実に命中…それにこの銃弾はお前の存在を引き裂く!」
次の瞬間、弾丸が弾けると同時にアスガが駆ける。
「エンドクラッシュ――!」
結弦の弾丸から生まれたエネルギーを強制的に再構築、そのまま自由神の足元で爆発を起こす。
「喰らうがいい!」
無羽飛が間髪入れず、両手を掲げる。
「――シャッターショット!」
奴を囲む空間そのものを新しい空間で上書きし、閉じ込めにかかる。
「永遠に出てくるなよ…!」
最後に野郎が猛然と拳を振り上げた。
「オォラッ!!」
拳が空気を裂き、亜空間すら震わせる。
その後方で、俺は冷静に呟く。
「皆…油断はするなよ。」
俺は自由神の能力を無効化し、攻撃が通りやすいように場を整えていた。
だが――
よく見ると、自由神は無傷のままだった。
「ふむ…デルゲ・セントラルの連中か?」
低く響く声が空間を支配する。
「私は自由神だ。お前らが攻撃する相手は――ヴィクトニケだ。」
瞬間、その言葉に言霊が宿った。
野郎、結弦、アスガ、無羽飛の瞳から光が失われる。
「排除すべきは……ヴィクトニケ……」
アスガが無感情のまま歩み寄る。仲間たちが一斉に敵へと変貌していく。
俺は目を細めて吐き捨てた。
「自由神……汚いな」
「そうか?」
「それに、妙だな…なぜ、わざわざ俺は洗脳しようとしなかった?実力を知っているからか?俺を消したいようにも見えるが…?」
自由神は押し黙る。
その刹那、背後から凄まじい速さの斬撃が仲間たちを切り裂いた。
「《洗脳断絶》……!」
洗脳された四人の身体に赤い閃光が走り、四人の洗脳が断ち切られる。
「うぅん…あっ…洗脳されていた!?」
見てみると、そこに立っていたのは白い髪をしている七央
――JOKERだった。
「――ッ!?」
驚きと同時に、俺は即座に攻撃態勢を取る。
「こんな時に…!」
だが、そのJOKERは慌てて両手を振った。
「待って!私だよ!七央だよ〜!」
「七央……? なぜその姿に……」
七央は困惑したように答える。
「私の神の血が流れているところに、JOKERの力だけが残ってて……なんか、私自身がJOKERになったっぽい?」
俺は一瞬安堵の息を漏らすが、すぐに視線を自由神へ戻す。
その七央も、武器を構えた。
その両手に握られていたのは――雲帝霊剣と滅亡剣。
七央の声が空間を震わせる。
「《存在断絶》!! あなたの存在は無くなるわ!」
2つの剣が交差した瞬間、自由神の身体に明確な傷が刻まれた。
「……ほう。JOKERの力を継ぐか。中々厄介だな。」
しかし自由神は、微かに笑う。
「だが、意味はない。」
――次の瞬間。
理解する前に、俺と皆の身体は宙を舞っていた。
「ぐ…は…」
正確には、自由神の攻撃を受けた後の結果が、先に現れていたのだ。
俺達の身体が吹き飛び、空間が震える。
「うおおおお…」
「い…痛い…」
無羽飛と結弦が喋る。
「ぐっ……やるな、自由神……」
俺は光を吐きながら立ち上がる。
「だが、ここで決着を付けるぞ。貴様など……俺からすれば結局は雑魚に過ぎんということを教えてやる!」
自由神がゆっくりと片手を掲げた。
すると虚空から、無数の人影が次々と形を成していく。
それは人ではなく、能力そのものが人型に具現化した存在だった。
時間を操る者、次元を裂く者、相手の力を打ち消す者、そして、意思だけで相手を即死させる者――
「やれ……チート能力共!」
自由神の命令と同時に、それらの能力は一斉にこちらへ襲いかかってきた。
だが、俺は一歩も退かない。
「……くだらんな。概念は俺に逆らえない。俺は概念の頂点だぞ」
そう低く告げた瞬間――
襲いかかる全ての概念が、音もなく弾け飛んだ。
「ほう……ヴィクトニケ。流石だな」
自由神は愉快そうに微笑んだ。それは不吉な予感を感じさせるものだった。
「――これでも喰らうがいい」
その声と同時に、空間が爆ぜた。
凄まじい衝撃波が戦場を飲み込み、仲間たちの身体が闇に呑まれていく。
「きゃあああああ!」
アスガの悲鳴。結弦も、無羽飛も、野郎も――全員の身体が再生不可の消滅の縁に追い込まれていた。
「……まずい!」
俺は叫び、即座に力を放つ。
「消えるな……矛盾により、再生を許す!」
崩壊しかけた仲間たちの身体が、軋みながらも元に戻っていく。
皆の命を繋ぎ止めた俺は、自由神を睨み据えす。
「――永久に死に続けろ!」
放たれた言葉が、概念そのものを縛る。
しかし、自由神は微動だにせず笑う。
「死んだ程度で、我が消えると思うか……? ヴィクトニケ」
やはり、常識は通じない。
「我の認めぬものは、この世に適応されない」
「そんなものはただ、自分の楽な方向へ逃げているだけだ。俺も同じ能力を持っているが…使ってないぞ?」
俺の挑発にも、自由神の声色は冷静そのものだった。
「我は……全ての支配者だ。この座を奪われるなど、決して許されぬ。自由を司る者に――貴様ごとが自由を語れるか」
俺は中々どうして挑発に逆に乗ってしまった。苛立ちを隠せず、言い返す。
「お前がやっているのは自由ではない。支配だ。 ここに居る者たちを、自分の駒にするだけの独裁……やはり、“ワガママ神”に過ぎない!」
その瞬間、自由神の身体がふっと霞むように消えた。
存在そのものが視界から外れ、超越した次元に退いたのだ。
「おい……どこに行ったんだ?」
「見えねぇ……!」
「ちょっ……消えたわよ!」
「空間の上書きが効かない……」
仲間たちは困惑し、敵の姿を探す。だが――視えない。
「ねぇ…ヴィクトニケ。私、見えるよ。JOKERの力のお陰かな?」
俺も存在認識の枠を越えて自由神を捉える。
「超越存在になった恩恵だろうな…」
今、自由神を認識できているのは、俺と七央だけだった。
「……七央。手を貸してもらえるか」
隣を見ると、七央は二振りの剣を握りしめ、力強く頷いた。
「もちろん……!一緒に戦おう!」
俺達は並び立ち、自由神へと狙いを定めた。その狙いは、次元すらも消し飛ばしてしまうような力を放っていた――
第五幕【枠を超えし者】
七央は静かに目を閉じ、自らの存在を《クリア・スモーク》に溶かし込む。
次の瞬間、幻影が幾重にも生まれ、無数の七央が戦場を駆け巡った。
「どれが本物か、分からないでしょう!」
その声と同時に、自由神へ向けて無数の斬撃が奔る。幻影と本体の区別すらつかない猛攻。
だが——
「ふむ……やるな。しかし…」
自由神は冷静だった。因果律そのものを「観測されない事象」として処理し、何も起きていないという解釈にすり替える。
結果として、七央の攻撃はすべて空を切った。
「そんな…」
七央は《クリア・スモーク》と《ラグナロク・ビヨンド》を握りしめる。
「生意気な小娘よ……それはJOKERの力に他ならん。」
次の瞬間、自由神の手が空を握る。すると眼の前に居た七央の喉が締められる。
「うっ……あぁ……くる、し……っ」
七央の呼吸が途切れかける。
俺は自由神の拳を断ち切る。
「触るな……贋物…!」
その瞳は鋭く、冷たい。
「《存在断罪》…!」
自由神が攻撃を放つ。
俺が割り込み。七央の身体を透明化させ、その攻撃を空に逸らした。
「さっさと地獄に堕ちるんだな。」
俺は自由神そのものの定義を書き換えようとした。
しかし、自由神も対抗する。
「ならば、全ての観測を上書きする!」
自由神の声が響き、次の瞬間、俺は観測されないものへと置き換えられた。
「んなっ…!」
身体が音もなく光の粒子へと分解されていく。
「七央…少し…戻るまでに時間がかかり…そう…だ…」
抗う暇もなく、俺は戦場から消え去る。
「そっ……そんな……!」
七央の瞳に絶望の色が宿る。だが、それでも必死に声を絞り出した。
「っ……でっ、でも……!ヴィクトニケは……死んでも生き返る!すぐにね!矛盾を使えば、蘇生不可だって……意味が無いはず!」
その必死の叫びを、自由神は冷淡に踏み潰す。
「無駄だ。これは蘇生がどうのこうのの問題ではない。復活しようとしたところで、観測されなければ存在出来ない。それを矛盾させたところで、意味は無い。蘇生は許されても……二度と、この場には現れぬ」
「そんなっ……」
七央の表情が苦痛と怒りに歪む。
七央の両手に握られた剣が、振り上げられる。
「ヴィクトニケの仇……!!」
七央の怒号とともに、七央は自由神へ斬りかかっていった。
七央は大きく踏み込み、両手に握った二振りの剣を交差させる。
「——存在断絶!」
刹那、無数の斬撃が光の雨のように自由神へと降り注いだ。
一瞬で千にも及ぶ斬り込みが生まれ、自由神を確かに刻んでいく。
「くそ…俺達にはなにが起こっているのかなにも分からない…」
無羽飛、アスガ、野郎、結弦にはこの戦いが全く見えてはいなかった。
七央の攻撃に自由神は動じなかった。
「……やるな。しかし、それで我が揺らぐことはない。」
その言葉と同時に、自由神が手をかざす。
周囲の空気が重く軋み、見えない圧力が七央の全身を襲った。
「——っ……ああっ!」
七央の身体は地面に叩きつけられ、息が詰まる。
視界が揺れ、手にしていた剣の輝きが一瞬かき消えた。
「……くっ……だれか……」
七央は声を絞り出すが、JOKERの力は発動しない。
絶望が胸を締めつける中、自由神は冷ややかに言葉を続けた。
「七央。我はヴィクトニケを討った。デルゲ・セントラルは我が手に入れる。そうすれば秩序は保たれる。……ヴィクトニケもそれを望んでいたはずだ。ならば、我がやろうとヴィクトニケがやろうと変わらんだろう?」
否定するように七央は首を振るった。
「……違う……!ヴィクトニケは貴方みたいな人じゃない!」
七央は力を振り絞って立ち上がり、剣を握り直す。
「ヴィクトニケは、秩序がどうのこうのとか思ってない…!私達、能力者を守るためにこの世界に居るの!だから、あなたのその意見なんてただの解釈違いよ…!」
七央の瞳に強い光が戻った。
「私は……ヴィクトニケの全部を知ってる!優しいところも、強いところも……だから、あなたに彼の意志を語らせはしない!」
彼女は二振りの剣を高く掲げ、まるでヴィクトニケのような鋭い眼差しで自由神を睨み据えた。
七央の身体から迸る光は、もはや人の域を超えていた。
『私はどうなってもいい…!だから…JOKERの力を最大限利用させて貰うわ…!』
そう七央の心の声が響く。
人間の血と神の血、その両方に宿るJOKERの力を極限まで引き出し、七央は高らかに叫ぶ。
「――根源の覚醒!!」
七央のJOKERの力は再び、体から湧き出ていた。今度は限界を越えた力で――
スキーです!今回は七央をメインで書いていったからかなり楽しく書けました。JOKERの能力って万能だから戦闘とかで使いやすいんですよね。JOKER本人と違って七央の意識状態だと戦闘経験とかで動き方も変わってきたりするんですよね。これがJOKER本人だともっと前線してたかもですね…
能力解説
「枠を越える能力」
これはほんとに概念とか観測不可とかなんでも越えることが出来て、例えば物語が終わったあとのことだとしても枠を越えてまた新しく観測外のところから物語を再スタート出来るみたいな感じの能力を持っていて、なおかつ、ヴィクトニケは全ての枠に属することが出来るため、全ての存在階層内のものはヴィクトニケの枠内のことになるってことなんですよね。
次回は未定です。




