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日常に潜む不穏

どうも!スキーです!

今回も手に取っていただき、ありがとうございます!皆さんが見てくれるのありがたいです!

第一幕【天界の異変】


俺は昨夜、考え事をしている最中に眠りへと落ちていた。

深い眠りの中で、俺は不意に聞こえた声に意識が引き戻される。既に外は明るく、目を閉じていても分かるくらいだった。朝なのだろう。俺は目を開ける。

『――ヴィクトニケ様、聞こえますか?』

仲間である天界の戦乙女、ノルンの声だった。

俺は即座に交信を繋げる。

「どうした、ノルン。何かあったのか?」

ノルンの声は沈痛だった。

『ゼウスが……死にました。』

「なんだと……。」

俺は驚愕した。

ゼウスを討てる存在など、天界でも中々居ない。

『痕跡はあるのか?』

俺は鋭い声で問うと、ノルンは静かに首を振った。

『……何も残っていないんです。神々の力を持つ者なら、必ず痕跡が残るはずなのに…。』

神は戦闘後に光の粒子が僅かに残るはず。俺は瞳を細める。

「……天界の者ではない。そういうことか。」

ノルンは小さく頷いた。

『おそらく、そうだと思います。』

「分かった。詳しく調べてまた知らせろ。近い内に天界を再調査する。」

『はい、分かりました。こちらも、我が君のご武運をお祈りします。』

俺は交信を切り、深く息を吐いた。

「俺が狙われているのか…。」

ーー放課後

俺は零矢にゼウスのことを直に伝えた。

「ゼウスが殺された。」

零矢の手にあった酒瓶がわずかに震える。

「……そのゼウスという者、天界の者のひとりか。」

俺は頷く。

「そうだ。そして犯人は天界の者ではない可能性が高い。」

「……ならばここ、下界か?」

零矢の目が鋭く光った。

「この学園の生徒、あるいは教員の誰かが……関わっているのかもしれんな。もちろん、学園外の者の可能性もあるが。」

俺は静かに頷き、覇王の神眼を解放した。これにより、あらゆるものを見透かす。

生徒たちの心音を遠隔で覗き、ここ最近の全ての歴史の記憶を読み解いていく。

だが――

「……誰一人として、天界に触れた記憶を持つ者はいない。」

俺は眉をひそめる。

「裏切り者は、ここにはいない。」

ならば、別の場所に……居るのか。

零矢は重く口を開いた。

「……記憶を抜き取る能力を持つ生徒が、学園には何人かいる。お前の神眼があれば、痕跡の隠蔽を暴けるかもしれん。」

俺はうなずき、その能力を持つ生徒たちの心音を遠隔でひとりずつ視た。だが――やはり、天界に触れた痕跡を持つ者は誰ひとりとしていなかった。

「やはり、関与してないようだ……。」

椅子に腰掛けたまま、俺は目を伏せる。

だがその時、脳裏に浮かんだのは零矢の存在だった。

――ハーフ。

もし零矢のように、人間のオーラを纏うなら、天界に痕跡を残さずに神を殺すことも可能ではないか。

「……ハーフか」

俺はそう小さく呟き、零矢に視線を向けた。

「零矢、この神眼を分け与えよう。これで――人と神のハーフを見分けられるはずだ。」

俺は覇王の神眼の力を少し零矢に分けた。零矢は驚いたように目を瞬かせた。

「確かに…ハーフの者の可能性もあるかもな…見つけ次第、必ず報告する。」

「頼むぞ。」

そう言ってから俺は立ち上がり、校長室を後にした。

扉を開けた先には、七央が待っていた。

「あっヴィクトニケ! 居た居た!」

彼女は小さく笑い、少し頬を赤らめながら言った。

「よかったら、一緒にご飯行かない?」

学校も終わった。考え事ばかりしていた自分にとって、気分転換も悪くない。

「……よかろう。」


第二幕【日常】


七央はルンルン気分で俺の前を歩き、街へと歩き出した。最近は天界のことばかりで中々歩く機会など無かったから俺も少し楽しみにしていた。

向かった先は、古びたが活気のあるうどん屋だった。

暖簾をくぐると、厨房の奥から威勢のいい声が飛ぶ。

「お、七央ちゃん! 今日は彼氏さんも一緒かい?」

店主はそう言い七央をからかう。

「ち、違うよー! 友達!」

七央は慌てて否定したが、その頬は赤く染まっていた。なにを恥ずかしがっているのやら?未だに人間の感性というのだけは理解が少し出来ない。

俺は黙って席につき、メニューを開いた。数々の種類のうどんがメニューには書いてあった。サイドメニューもあったが俺は1つだけ頼むことにした。

「……ごぼ天を頼もう。」

ごぼうの味深さ…そしてうどんの弾力…俺はこれがお気に入りだ。

「私はえび天!」

七央が元気よく注文すると、店主は笑顔で調理に取りかかった。

待っている間に七央は俺に話しかけてきた。

「ヴィクトニケって…なにか隠してることない?」

隠しているわけではないんだがな…少し説明が面倒くさい。

「分かってしまうか。別に教えれることだ。知りたいのなら聞かせてやる。隠すほどのことではないしな。」

七央は「教えて教えて!」と言う。

「俺は天界人だ。人間ではない」

一瞬、七央の顔はポカンという顔になった。

「えぇと…ヴィクトニケって人間じゃないの?というか天界なんてほんとにあるんだ…。」

いきなりのことで七央は困惑している様子だ。

「体の構造はほぼ同じだぞ?血は流れてないがな。天界だってあるぞ。こんな世界なんだ。正直、天界やら地獄やらあったって不思議ではないだろう。」

七央は確かにという顔を浮かべる。

「野郎と無羽飛と結弦にも言って構わないぞ。野郎は理解出来るか分からないがな。」

少し冗談交じりに笑って言うと七央も笑う。

「ふふ…確かにそうかもね。天界…気になるなぁ。」

七央は顔を上に向ける。

話しているとうどんが運ばれてきた。

「えび天、ごぼ天。どうぞー!!」

店主さんの声が店内に響く。

七央は目をキラキラさせて手を合わせた。

「いただきます!」

俺も手を合わせた。

「いただこう。」

うどんは湯気が立ちのぼり、出汁の香りが広がる。

さっきとは違い。俺達は黙って箸を進めた。ズルズルというすする音だけが聞こえる。だがその静けさは気まずいものではなく、家族と食卓を囲んでいるような、不思議な安心感に包まれていた。食べ終わる直前、七央は喋りかけてくる。

「天界にもうどんはあった?」

俺は首を振る。

「無かったな。でも、仲間の1人がいつもご飯を作ってくれていた。」

「そうなんだねぇ…」

七央はそう言ったあとうどんを一気に啜り、完食した。

「ごちそうさまでした!」

七央は手を合わせる。俺も続いて手を合わせる。

「七央ちゃん!いつもありがとね!」

店主さんがそう言うと七央は自分の分のお金を払おうとする。

「俺が払おう。いい店を教えてもらった。」

俺は自分と七央の分の代金を支払った。

「えっごめん!ありがとう!」

七央は驚いてそう言う。

店の外に出ると、七央が暗くなっている空を仰ぎながらぽつりと言った。

「この世界って、能力や魔法があるのに科学もある。不思議だよね。」

俺はわずかに微笑む。確かに能力や魔法があれば科学に頼る必要も無さそうではあるが。俺は色んな世界を見てきた。確かに、ここのように異世界に科学がある所は無かった。逆も然り、魔法や能力がある科学の発展している世界も無かった。そう考えるとここは便利なものだ。スマホもあれば魔法もある。

「無限の数の多元宇宙があるのだ。そんな世界があろうとも不思議ではない。」

七央は「ふふっ」と笑い、俺達は夕暮れの街を並んで歩いた。

俺は帰路に着き、お風呂に入り、歯磨きもしてそのまま布団に入り寝た。今日はいい睡眠が出来た。

ーー翌朝

俺は軽く指を鳴らし、ワープで学園の校門前へと降り立った。空気は清々しいく、生徒達の声が楽しそうに響き渡るが、俺の瞳には相変わらず退屈の色が差している。世界の監視など飽きた。それに天界の上の者がわざわざ俺に頼むのもおかしい気がしてきた。この世界の者が強すぎて俺でなきゃ監視は務まらんと言われたが、これくらいなら俺以外の者にも務まりそうなものだがな?

「さて、行くか……。」

そう呟きながら教室の扉を開けると、視界に飛び込んできたのは騒ぎの中心だった。

「よーし、落ちろ落ちろ……!」

野郎が友人たちとドアの上に手を伸ばし、ドアを細工していた。

「……なにをしている?」

俺の声に、野郎は自信満々の笑みを見せた。

「決まってんだろ!黒板消し落としだぜ!先生に仕掛けるんだぁ!」

野郎は楽しそうに言うが、俺は呆れたようにため息をつく。

「凪海は心を透かす能力を持っている。お前らの浅い考えなど、即座に見抜かれるぞ。」

その言葉に野郎の顔が青ざめ、慌てて黒板消しを外そうとした――が、遅かった。すでに凪海本人がドアの前に立っており、冷たい視線を投げかけている。

「……まさか授業前からこんな馬鹿をやるとはね。」

黒板消しは当たらなかったが間違いなく凪海の怒りのツボには当たった。

次の瞬間、野郎とその取り巻きは容赦なく叱責された。

「先生にこんなことをして許されるわけないでしょう!まったく…」

「「「すみません…」」」

野郎達は肩をすくめて座り直した。その様子を見ていた結弦が、くすくすと笑いながら俺に言う。

「まあ、野郎は昔からあういう奴さ。僕が止めても聞かないんだ。」

どうやら結弦と野郎は昔から仲が良かったようだ。結弦と野郎が仲の良い理由――ただの馬鹿騒ぎではなく、長い付き合いが生んだ絆がそこにあったのだ。

横目で野郎を見ていたそのとき、普段あまり関わらない女子生徒が歩み寄ってきた。

「ねぇ、ヴィクトニケ?」

アスガ・ヴィートルという女子だ。

彼女は学園の女子をまとめるカリスマのような存在で、綺麗な長めの赤髪を揺らし、背筋を伸ばして俺を睨みつける。

「ちょっと、いいかしら?」

「なんだ。」

随分と上から目線な態度だ。別に気にしないが、その問いに返したのは、挑戦的な一言だった。

「私ね、強い貴方が気に入らないの。貴方自身は自分を強いと思っているようだけど…そんなプライドへし折ってボコボコにさせてもらうわ!」

アスガは強いのだろう。そのアスガの声にざわめく教室。俺は少し笑い、椅子から立ち上がる。

「……能力を実践で見るのも悪くない。」

他の生徒は遠目で見てくる。

「おいおい…アスガだぞ…」

「流石にアイツでもやばいだろ…」

そんな声が聞こえたが、気にせずワープでアスガと一緒に特訓場へ飛ぶと、すでにアスガが構えていた。彼女の能力は神眼で覗くと《エンドクラッシュ》と呼ばれ、あらゆる攻撃を跳ね返し、その跳ね返したエネルギー反動を自らの力に倍へと変換させる厄介なものだった。

「行くわよ!」

先制はアスガ。反射を前提とした自信満々の殴りかかり。

「私はあんたの攻撃を反射し続ける!攻撃しなかったらしなかったらで格闘術で貴方を投げ飛ばすわ!」

格闘もしているとは中々やる。しかし俺は冷静に技を放った。

「事象の反射。そしてそこから発生するエネルギーの放出か。ならばこれはどうだ?」

アスガは能力の詳しいところまでバレていることに少し面食らっていた。アスガは防御しようとした瞬間。音もなく衝撃波が走り、アスガの体を容赦なく吹き飛ばす。反射が発動しなかった理由は対象が“無”であったからだ。俺は攻撃を反射させられないよう、無を飛ばしたのだ。結果そのものが存在しない以上、反射も成立しない。

「ぐっ……な、なにこれ……!」

咳き込みながらも再び突進してくるアスガ。その根性には一目置きつつも、俺は軽やかに避け、ぴとっと額に指先を当てた。

「ここまでだ。」

アスガは糸の切れた人形のように崩れ落ち、意識を失った。俺はアスガを担いで淡々と保健室へ彼女を運び、わざとしばらく眠らせることにした。

「強いが、まだまだ甘いな。」

俺は再び教室へと戻っていった。

保健室にアスガを預け、教室へ戻ると既に一時間目が始まっていた。

だが、この学園では、授業より戦闘を優先する生徒も多い。能力強化の目的なら、遅れて入っても問題にはならない。

今日の授業は古文――内容は『自由神』について。

自由神が人類に能力を授けた存在とされ、別世界の日本というところの建国神話にも似た扱いを受けているらしい。

隣を見ると、野郎が机に突っ伏して気持ちよさそうに眠っていた。起こすか、それとも放置するか――俺が迷っていると、不意に名指しされた。

「この問題を答えろ、ヴィクトニケ!」

暑苦しい声が響いた。担当は社会の斉藤和巳(さいとう かずみ)。熱血漢として知られる教師だ。

問いは「自由神はどこから来たか」。

俺は少しだけ眉をひそめる。

出たな自由神… 天界にいた時もそんな存在は聞いたことがない。存在しないのではないか?

だが、七央が以前「自由神が人類に能力を与えた」と話していたことを思い出す。

「天界……とかか?」

適当に答えたその瞬間――。

バキィッ!

和巳の頭が裂け、そこから黒い触手が這い出してきた。

「なッ……!?」

それは紛れもなく、ダークのものだった――


第三幕【影の侵略】


教室は一瞬で地獄絵図に変わる。

七央、無羽飛、野郎、結弦が即座に反応し、残りの生徒たちも悲鳴を上げて逃げようとした。だが、教室の扉も窓も、すべて影で塞がれている。

「出られないぞ……!」

次々と生徒たちは触手に絡め取られ、バラバラに切り裂かれていった。教室には生徒たちの肉片と血が飛び散った。

生き残ったのは、俺、七央、結弦、野郎、そして無羽飛だけだった。

「……ふむ。せっかくだ。こいつで修行をしてみよ!」

俺は皆に冷静に言い放つ。

野郎はすぐに顔をしかめた。

「うおお…なんだコイツ!キメェぞ! 寝起きだけど……!行くぜ!」

野郎は壁や天井を縦横無尽に駆け巡り、強靭な肉体で触手を蹴り飛ばす。

一方、七央は両手を組み、仲間に治癒の光を送り込む。七央の力は回復だけではなく、究極的には「転生」すら可能とされる希少なものだった。他の生徒達の体はどんどん癒やされていく。肉片や血は元に戻っていく。

結弦は銃を構え、特殊な弾を込める。

「くらえ!」

ガンッ!という音が放たれた。弾丸がダークの触手を撃ち抜き、全身をビリビリと痺れさせる。電磁が込められている弾のようだ。

和巳及び、ダークの体は痺れて動かないようだ。

その隙を見逃さず、無羽飛が手をかざした。

「《シャッターショット》!」

世界の背景を書き換え、触手の存在を消去する。ダークの肉体が無くなった。

俺は静かに目を細める。

「……本体が残っているな。量からして、これは一部にすぎない。」

さっきの状態から見て、そう思った。そして俺は指先を軽く弾き、和巳の肉体を修復した。今いる俺達以外の皆の記憶をまとめて消去した。

何事もなかったかのように、教室は元通り。

和巳は頭を掻きながら黒板を見つめ、生徒たちは何事もなかったように授業へと戻る。

俺もまた、椅子に腰を下ろした。

……まだこの世界に潜むダークの“本体”を見極めねばならんな。そして、やがて午前授業は終わり、昼休みになり、俺は自分で創造した食べ物を静かに口にしていた。他の皆は自分か親が作ってくれたもののようだった。周囲では生徒たちが彩り豊かな弁当を広げ、笑い合っている。そのとき、保健室で眠っていたアスガが目を覚ましたらしく、教室に戻ってきて自分の弁当を食べ始めた。特に気取る様子もなく、静かに食事をとる彼女の姿に、俺は少し意外さを覚える。

「俺はナメられていたようだな…。」

そして隣から野郎が自分の弁当を自慢げに差し出してきた。

「ヴィクトニケ!見ろよ!俺の母ちゃんが作ったんだぜ!」

無邪気な声に俺は思わず目を細める。弁当を見てみると栄養のバランスも良く、食材の質も申し分ない。野郎の親は料理の才能があるようだ。

「良かったな。」

そう微笑み返すと、野郎は嬉しそうに頷き、もりもりと弁当を食べ続けた。

食事を終えた俺はアスガの席へ向かう。

「体調は大丈夫か?」

声をかけると、アスガは素っ気なく「別に大丈夫よ」とだけ答える。その強がりを見抜いた俺は、ふっと笑った。

「諦めない精神は大事だな。もっと頑張れ。」

するとアスガは一瞬きょとんとし、すぐに視線を逸らして照れくさそうに答えた。

「……諦めるわけないでしょ。貴方は私が倒す。」

昼休みは終わり、午後、五限目は体育の授業だった。握力を測定するための特別な水晶が用意され、生徒たちは次々に挑戦する。水晶の前で力を入れることにより、測定出来る道具のようだ。前を見てみると野郎の番だ。野郎は力強く握りしめ、計測値は10トン。周囲からは「おおっ!」と感嘆の声が上がる。

野郎が強いだけなのか。この世界では平均より上くらいなのか。

俺の番が来たので水晶の前に立った。そして何気なくスッと力を込めると、瞬間、水晶は粉すら残さず粉砕されてしまった。

脆いな。赤子の手を握る感覚だったのだが…。

体育教師が慌てて声を上げる。

「こ、壊すな!てか…壊れたことないのに…壊れるのか…」

先生や生徒は啞然として俺を見つめる。俺は軽く手を翳し、《サリナム》で水晶を修復してみせる。だが、先生はまだ唖然としたままだ。

その後も様々な種目をこなしたが、どの競技も俺は測定不能という結果に終わる。手加減のために《オーラリム》を使ってもなお、数値は常識を超え、教師は頭を抱えてしまった。授業の終わり際、零矢が授業の様子を見に現れる。

「ハッハッハ…!流石だな…まぁ…ヴィクトニケの記録は、デルゲ・セントラルの最高値と同じにしておけばいい。」

そう一言告げると、体育教師は分かりましたと頷き、俺は結局、最高点を与えられることになった。そのまま帰りの準備をして俺は帰る。最近はダークの正体を探るために早めに帰り、準備をしている。

俺は、世界規模で犯人を探すために、あらゆる手段を用いた。人々の心に微細な洗脳をかけ、真実を探ろうとしたのだ。しかし、それでも痕跡はまったく見つからなかった。

……やはり、常識の範疇ではないか。不審に思った俺は、天界に戻る決意を固め、ノルンへと交信を繋ぐ

「ノルン、昨日言った通り、天界へ一旦戻りたいのだが…」

だが、ノルンは了承しなかった。

『今はダメです、ヴィクトニケ様。ゲートの座標が乱れています。そちらから天界へは繋げません』

「なんだと……?」

俺は眉をひそめた。天界ゲートは、通常であれば寸分の狂いもなく繋がるはずだ。座標が定まらないなど聞いたことがない。

俺はやむなく交信を切り、考え込んでいると、背後の影から五つの気配が現れた。七央、無羽飛、結弦、野郎、そしてアスガだった。

「……お前たちか」

無羽飛が率直に聞く。

「ヴィクトニケ、天界って…どうなってるんだ?」

「私も気になるわ。貴方の様子を見てると、何か重大なことが起きてるんでしょ?」

アスガが鋭い目を向ける。

俺は一瞬だけ考え、そして答えた。

「もうすぐ休みが来る。その間に、天界へ連れて行ってやろう」

その言葉に五人は目を輝かせた。特に七央と無羽飛はソワソワと落ち着かない。

「ほんとにヴィクトニケは天界人だったんだね…」

結弦はそう言う。詳細を七央から聞いたのだろう。

横で野郎は「天界メシ食ってみてぇ!」と騒いでいる。

俺はその後、一応零矢に天界へ行く旨を伝えた。零矢は「分かった」と短く頷くだけだったが、その瞳には一瞬、複雑な光が走った。俺は言う。

「必ず無事に帰らせるさ。」

零矢の不安げな顔はすぐに自信のある表情になった。

「それもそうだな、少し危険だが…旅行として行ってきなさい。」

俺は皆に『今はまだ行けない』と説明すると、五人はそれでも楽しみにしている様子で小声で談笑を続けていた。

だが、その場を見つめる視線がもうひとつあった。木陰に潜む、鋭い瞳。

――生徒会長、イーノル・コーラウド。

彼は静かに息を潜めながら、俺達の姿を追い続けていた。


第四幕【影からの追跡】


「やはり……お前はただ者ではないな、ヴィクトニケ。奴の命令通り…ここで壊滅させる…」

イーノルは胸の内で呟き、決意を固めた。俺達を監視する。その後を追うことを決めた。

「ダークの一部を使ってやつらに仕掛けたが…瞬殺された…ここは、私が行くしかない…」

イーノルは俺の仲間たちが散っていくのを確認すると、静かにその後を追った。

イーノルの胸にあるのは一つの確信――正式に学園へ入らなかったヴィクトニケは危険な存在であり、処分しなければならないという思いだった。そしてなにより、天界人であること。放ってはおけない。

「罰を与えよう……まずは仲間からだ…!」

イーノルは慎重だった。野郎を先に狙った。自身の能力を正面から使えば、野郎に逆に殺されかねないことを理解していたからだ。

彼の力――《アトミックオペレーション》は理屈と現象そのものを操作する力。だが、相手は野郎。理解されなければ逆に死ぬ。そこで、イーノルは知恵を働かせた。

道端にそっと置かれたお菓子。

「おっ、うまそうじゃん!」

案の定、野郎は飛びつく。だが、それは罠でその瞬間、地面に穴が開き、下から赤黒い溶岩が噴き出した。野郎の身体は一瞬にして焼かれ、跡形もなく消えた。

「一人…」

イーノルは呟く。

次に狙うは七央。回復役は後回しにすれば厄介だと分かっていた。背後に回り込み、声をあげる前にその命を断つ。

「……!」

七央は現象を操られたことによって声を上げる前にやられてしまった。

「七央さんは流石に余裕でしたね…あとは…3人…ですか。」

イーノルは次にアスガの背後へと寄る。イーノルは手に武器を持っている。斬ったものを即死させるという力だ。

「即死させれば…反射もクソもない!」

アスガは後ろから聞こえてきた足音に気付いたが、遅かった。既に即死させる剣を腹に突き立てられていたのだ。

「…!?生徒会長……」

アスガはバタリと倒れる。

次にイーノルは結弦の元へと歩む。

「気づいてるよ。」

結弦はなんと最初から気づいており、銃口をイーノルへ向ける。

「ほう…気づきますか…」

「生徒会長がここでなにをしてるのかな?」

イーノルは眼鏡をくいっとあげる。

「教えると思いで?」

イーノルは即死剣を構える。

結弦がの方が早く、銃がイーノルの肩に被弾した。その後も2発目…3発目とイーノルに降り注ぐ。

「…!《アトミックオペレーション》!私を守りなさい!」

イーノルの能力で現象を操られ、銃は結弦の頭の方へと命中してしまった。

「はぁ…はぁ…流石…ですね…ですが、私の方が上手ですよ。」

次にイーノルは無羽飛を仕留めにいった。

「慢心はしません。確実に…!」

イーノルは無羽飛の上から襲いかかる。

「ッ!?コイツ…」

気づいた頃には遅く、即死剣は無羽飛の頭に突き刺さる。

「うぐっ…こんなこと…」

イーノルは結弦から撃たれた傷口を押さえながら言う。

「くだらない……。これで残るはヴィクトニケ一人…そして奴からの報酬が……!」

イーノルは満足げに笑みを浮かべ、俺の歩いていった方向のもとへと歩み寄った。

だが――その先に広がっていたのは、信じがたい光景。

そこには、殺したはずの野郎、七央、アスガ、結弦、無羽飛が立っていたのだ。

「な……ありえない!」

「ありえないじゃねぇよ…よくも俺をお菓子で釣ってくれたな!」

狼狽するイーノルの背後から、冷たい気配が忍び寄る。振り返る間もなく、顔を手に掴まれた。見てみれば後ろにいるはずのない俺だった。皆の死を感じ取った瞬間に俺が皆を復活させ、後ろから殺す機会を伺っていたのだ。

「っ……!」

必死に能力を発動させ、俺を消し去ろうとする。現象を操っても俺に効かない。俺は現象として観測されない。

――その瞬間、彼の中の反逆の意思がふっと消え失せた。

「抗う…意思が…消えてく…?」

イーノルの意思を俺は消し去った。

「久しぶりだな……この力を使うのは。そして、俺を怒らせたのは――お前が初めてだ。」

俺の声は冷ややかで、深い怒りに満ちていた。

次の瞬間、支配の頂点という俺の能力が発動する。

その前では、あらゆる概念も存在も逆らうことはできない。イーノルに抗う術は存在しなかった。理屈すらも俺の前では無意味だ。イーノルは俺の支配の力に縛られ、一切の行動が出来ない。

そして俺は空間を裂きそこに手を入れる。そこから赤黒いオーラを放つ一振りの剣が姿を現す。

それは神剣と呼ばれ、超越存在という全ての概念と存在を超越した者しか扱えぬとされる武器。その中でも上級の強さを持つ剣。その名も――

「――破滅剣 《エクスルート》」

《エクスルート》はオーラを全開放するだけでも天界ですら荒れ果てるほどの力を持つ。俺はその刃をイーノルの口へとゆっくり入れていく。

「やめろっ!正気か…!うおあっ…」

イーノルの顎を上げ、その刃はイーノルの口から突き刺さり、尻へと突き抜けた。

「がああああああああああああああ!!」

絶叫にもならない断末魔が、夜の森を震わせた。イーノルの体からは大量の血が噴き出ており、体はガクガクと震えている。

その時、《エクスルート》の力が走る。概念も、能力も、意味や存在さえも、理屈や無限も永遠に破壊し続ける呪いの力。それが《エクスルート》の力だ。

イーノルの体から《エクスルート》を抜き取る。だが、呪いの力で死んでも死に続けており、体が震えている。その間に数百メートル分の穴を掘り、イーノルを布で縛りあげ、その穴の中へと閉じ込める。

もはや死も許されない。待っているのは、無限の苦痛と、終わりなき破滅だけ。《エクスルート》を使って殺めらた者はさぞかし不便だ。イーノルに関しては全くそうは思わないが。

アスガはそれを見て「ヴィクトニケがどうせ私たちを復活させてくれるんだからそんなに怒らなくても…」と言うが、仲間を傷付けた代償は大きい。コイツは許せない存在だった。

「そういう問題ではない。傷というのは体だけの問題ではない。心の傷だってある。心の傷ばかりは俺にもどうしようもない。」

全員が息を飲んだ。


第五幕【近づいてくる影】


ーー翌日

俺は零矢に全てを語った。

「イーノルは天界の手先の可能性がある。」

零矢は驚き、手を口に近づける。

「明らかに俺たちを狙っていたからな。にしても、心音を覗いた時点ではなにも感じなかったからな…覗いた後に、誰かに動くよう命令されたのか。」

「ところで…イーノルはどうしたのだ…?」

俺はその問いに迷わずに答える。

「イーノルは俺が殺した。」

もっとも、"殺した"という表現は正確ではない。

イーノルは今もなお、《エクスルート》の力によって死に続けているのだ。

零矢は深くため息を吐く。困惑と怒りを隠せていない。

「あの優等生が…なぜだ…なにを唆されたんだ…」

その眼差しには悲しみと憤りが混じっていた。

俺は言葉を返すことなく立ち上がり、静かに校長室を後にした。

「すまないな…零矢。俺がこの世界に来たのも…1つの原因かもしれんと言うのに。」

零矢は首を振った。

「いや…裏切りは裏切りだ。人も殺していることには変わりない。正当な行為とする。イーノル側の責任となるだろう。」

その後、学園中にイーノルの訃報が伝えられ、学園内は騒然となった。信じる者、疑う者、恐れる者、それぞれが混沌を抱え、学園の空気は揺らぎ始める。俺は、ただ沈黙しながらも心の中では皆と同じ不安を共有していた。『まだ裏切り者が潜んでいるかもしれない』その疑念は誰の胸にも渦巻いていた。

やがて一日が終わり、俺は城に戻る。深い静寂の中、俺はひとり考え込んだ。心音を覗いたとき、誰も嘘をついていなかった。それなのに今、裏切り者が現れたのはなぜか。答えは出ず、重い疑念だけが残る。やがて瞼を閉じ、疲れを帯びた体をベッドに沈め、静かな眠りへと落ちていった。

今回はどうだったでしょうか?今回は天界がどうなっているのか。下界でのことは天界と繋がっているのか。というところでしたが、まぁ、今回もこれと言って進展は無し…とはいえ、イーノルとダークが繋がっているということが分かりましたね!ダークの正体はなんなのか?あと少しで暴かれるはずです!

それと今回は日常パートもかなり意識して書きました!七央のシーンはヴィクトニケだったらどう思うか…というのを考えて書きました!僕がヴィクトニケなら七央との沈黙は暖かみを感じるものになるだろうなと思いました!七央のキャラ像は『お母さん』を意識して書いているのです!七央は友達でありながらも、ヴィクトニケの知らないことを教えて、ヴィクトニケをみていく。すごくお母さんっぽくないですか?笑 だから、僕なら七央がこうやって見てくれるのは暖かく感じるだろうな〜と思いました。

さて、今回もヴィクトニケの一部能力紹介と行きましょうか!

《多元根源》

自分の根源は無限多元宇宙の数だけあり、全ての多元宇宙に1つ存在する。

《創造具現》

自分の想像を実際に起こす。

こんな感じです!

次回は2025年12月17日の水曜。17時頃に公開予定です!お楽しみに!

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