エピローグ 天界の覇者
スキーです!
今回も作品を読んでいただきありがとうございます!
ここは――天界。透き通る水が音もなく流れ、巨大な森が静かに広がる。雲の上に浮かぶ平原が果てしなく続き、その中央にはぽつりと城が佇んでいた。
「うむ、今日も天界は平和だな」
名はヴィクトニケ・アレクレル。天界で最も強き者だと、自分でもそう思っている。朝の光が城の壁を温めるのを眺めながら、ヴィクトニケはのんびりと呟いた――。
さて、今日は何をするかと俺は考える。
「……まずは朝食だな。腹が減っては始まらん」
俺は下の階に居るトートに声をかける。台所兼執務を務めるトートが、いつものようにさっと現れた。
「ヴィクトニケ様。今日の朝食は何になさいますか?」
昨日、下界を見た時にたこ焼きという食べ物が気になり、俺はトートに注文する。
「そうだな……昨日、下界で見た“たこ焼き”というものを作ってくれ。生地を焼いて、切ったタコを入れるらしいぞ」
トートは首をかしげ、真剣な顔でメモを取った。
「たこ……ですか。承知しました。では、タコを調達してまいります」
「頼んだぞ」
朝食が出来上がるまでの間、俺は天界の周りを一ひねり運動してこようと外へ出た。朝の空気は澄み渡り、足取りは軽い。
「ふぅ… ふんっ!」
俺は光を超える速度で、時間の層を一瞬すり抜けるようにして天界を駆け回る。こういうことを下界でやれば世界が壊れるらしい。今度下界に降りる機会があれば殺気だけでどうなるかも試してみよう。
「うむ、いい運動になった」
と呟いたその時、どこかで警報が鳴った。天界の放送システムが甲高く叫ぶ。
『ただいま、強大な力を持つ者が出現しました。避難を! 避難を!』
「ふん…強大…か」
俺は鼻で笑いながら広場へ向かうと、そこには三人組のやけに軽口な面構えが並んでいた。爆発の痕が周囲に残り、雑に威勢を張っている。
「ハハハッ! 天界のやつらもこんなもんか!」
「弱いですねぇ」
「期待外れっすよ!」
俺は眉を上げる。見たところ、地獄あたりから乱入してきた類のようだ。
「お前らか? ここを爆破したのは」
振り向いた彼らは、俺の存在に気づいたように顔色を変えた。
「おれは地獄の鬼、バラスだ! お前も俺に殺られに来たのかぁ?」
先頭の男は手に持っている金棒を俺に向ける。
「バラス様に目を付けられちゃテメェもおしまいだな」
隣の吸血鬼2人がそう言う。
「地獄の連中か…もう天界には来ないのでは無かったのか?」
「昔…天界との戦争では地獄のボロ負けだったが…今の俺達はちげぇ! 大体、天界と地獄でなぜこんなに差が開いたのか…知ってるか?」
バラスは俺に聞いてくる。
「俺が過去に地獄を一撃で滅ぼし尽くしたからな…」
俺は50万年ほど前に右手だけで軽く地獄を滅亡させてしまった。それにより地獄で産まれる神や悪魔は天界よりも能力の平均的な強さが弱まっていたのだ。
「俺が…?まさかお前はヴィクトニケか!?」
バラスは驚いたように喋る。
「だったらなんだ?まさか今更、怖気づいたとは言わないだろうな?」
俺は神眼でバラスの動きを捉える。
「はっ!無駄だぜ!俺は不死身なんだ…それにこの金棒は多元宇宙や無限の因果律でさえも砕くことの出来る力を持つ!ヴィクトニケ…お前も骨の髄まで蹴り飛ばしてくれるわ!!」
バラスは俺の神眼で捉えた因果を破滅させ、金棒を持って俺に振りかぶる。
「喜べ! 最初に死ぬのはおまえだ!!」
バラスは大槌を振り上げる。通常の能力者なら、その迫力だけで消え去ってもおかしくない力だ。吸血鬼の一匹が、おべっか混じりに叫ぶ。
「バラス様のチート能力を見せつけてください!」
そんな戯言に、俺は軽く息を吐いた。
「チート能力ってのは、こういうものを言うんだ」
俺はただ一言――呟いた。
「《ノロニ》」
それだけで、地の理が確かに変わった。
「あ?なにしやがっ――」
その瞬間バラスはぐらりと崩れ落ち、動かなくなる。
「えっ!? なんで!?」
吸血鬼の一匹が叫び、もう一匹は恐怖で顔をひきつらせた。俺は当たり前に説明する。
「能力を無効化し、そいつの存在の“概念”を消した。ただの一言でな」
歯ぎしりする吸血鬼が必死に噛みつこうとしてくる。
「これでお前の能力を吸い取ってやる! コピーして終わ――」
言い終わる前に、その吸血鬼の体は内側から爆裂するように砕け散った。俺を敵対する因果に入り込んだ時点で即死するのだ。
残る一匹は、理解できんという感じで虚ろな目をしている。
「なっ、なぜだ……!」
ため息をつき、俺は静かに言った。
「俺の能力も、存在も、コピーも吸収もできない。俺に敵対した者は、概念だろうと不死だろうとただ死ぬのみだ」
言葉を受けて、最後の吸血鬼は急いで後退する。
「二度と、天界になんかに来ねぇ!」
俺はそれ以上相手をする気などない。吸血鬼は震えながら逃げ去った。残ったのは破壊の跡と、朝の静けさだけだ。
「あぁ、来なくてよいぞ」
俺は、そっと呟く。
散歩を終え、城に戻った俺は椅子に腰を下ろした。
「なるほど…これがタコ焼き…か」
机の上には、すでに香ばしい匂いを漂わせる料理が並んでいた。丸い形をしたそれが、下界の"たこ焼き"というものらしい。
「中々に美味しそうだ…」
興味深そうに眺める俺に、トートが口を開く。
「そういえば先ほど警報が鳴りましたが、何かあったのですか?」
「あぁ。地獄の雑魚どもを相手にしていた」
俺の答えに、トートは静かに頷いた。
「なるほど……それはご苦労さまでした。そういえば、タコ焼きはどうでしょうか? 上手く作れているとよいのですが」
促されるまま、一つを口に入れる。外はこんがりと香ばしく、中はふわふわとしている。そして、タコの弾力ある旨味が広がり、焼きたての香りと共に口の中を満たした。天界の料理にはない、新鮮で力強い味わいだ。
「あぁ…上出来だ。美味いぞ…流石、トートだな」
その言葉に、トートは胸を張り、深く頭を下げた。
「ありがたいお言葉です……」
その時、奥から騒がしい声が聞こえてきた。
「おっ、なにこれ? 下界の食べ物? いただきまー……」
のんきに現れたのはハデスだった。だが次の瞬間、隣にいたイムホテプが無言で蹴りを繰り出す。
「ぶぅっほぇぁぁぁぁぁああああ!?」
「それはヴィクトニケ様の食事だ。ガキが手を付けていいものではない」
ごうん! と鈍い音が響き、ハデスは遠くへ吹っ飛んでいった。
「イムホテプよ……忠誠心は素晴らしいが、そこまでせんでもよいぞ…?」
イムホテプはいつも行き過ぎるのだ。
「すみません……ヴィクトニケ様。これでも手加減したつもりなのですが」
思い返せば、以前も似たことがあった。アトゥムの話の最中に、ハデスが俺の肩で寝入った時など、イムホテプは終焉魔法を使いかけ、天界を滅ぼしかけたことさえある。
「まぁ、そうか……。だが、次からは力ではなく言葉で伝えてやれ。言葉で伝えることも大事なことだ」
「承知しました」
イムホテプは神妙な顔で頷いた。
その時、天界の上位機関――バベルからの呼び出しが入った。
「なんだ……? すまない行ってくる」
俺が立ち上がると、トートとイムホテプは俺に手を振って見送った。ワープで空間をねじ曲げ、次の瞬間にはバベルの元に到着する。
「今回は何の用だ? バベル」
カーテンの向こうに座るバベルは、用件を告げる。
「ヴィクトニケ。今回の任務は下界に降りてもらうことだ」
「ほう、何の用でだ。下界程度のことなら他の神や、クリスでもよかろう」
俺の言葉に、バベルは眉間に皺を寄せる。
「今回はかなり難しい任務でな。デルゲ・セントラルという一つの世界線、一つの地球だが、そこに“チート能力者”が蔓延っておる。調査し、最後には支配していただきたい」
面白そうだと思い、俺は頷く。
「分かった。行ってくるとしよう…一度、城で準備したいことがある。戻ってもいいか?」
俺はバベルに聞く。
「あぁ、分かった」
バベルは承諾する。
俺は自身の城へと戻る。
「みんな、俺は下界へと行ってくる。天界のことはよろしく頼んだ」
そう言うと仲間全員が俺を見る。
「ヴィクトニケ様なら下界くらいどうってこと無いでしょう…」
イザナギが薄く笑いながら言う。
「検討をお祈りします…」
オーディンも頭を深々下げて言う。
「皆、最強とは、最強を創り上げるのは、何か――」
皆は一斉に答える。
「それは、ヴィクトニケ様です!」
「そうだ。俺に不可能も限界も無い。俺がそう、認めたからな」
そう言い、俺は再びバベルの所へと戻った。仲間達の目線は熱いものだった――
天界の仲間の能力一覧
オーディン 戦いの神であり、戦いの運命を操り、絶対的な勝利を操る。
ノルン 運命を変えることが出来る。過去や今や未来を知っている。
アメノミナカヌシ 宇宙の根源を操る。
アトゥム 想像を具現化する力を持っており、人間の感情の管理をしている。
イムホテプ 知恵と医術と魔法を使うことが出来る。人間に知恵を与える役割。
トート 著述を操る。世界を書き換えることが出来る。
ゼウス 天候を管理をしており、雷、雲、雨、風を操る。
ハデス ちょっと子供っぽい荒い性格で死者の魂を管理をしている。
イザナギ 縁の起源を操る。




