表裏の平行
どうも!スキーです!
今回も見ていただきありがとうございます!
第一幕【刺客達】
意外な言葉に、思わず眉をひそめた。自由神を倒した今、世界に大きな影響など残っていないと思っていた。
「どういうことだ。俺は今、天界を離れるわけにはいかないのだが…」
「四天使……知ってるでしょ?」
「あぁ、バベルに仕える四人の天使だったか」
バベルの周りにはいつも彼らが居た。
「そう。ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル……その四人がデルゲ・セントラルに向かっているの。」
俺にとっては塵芥にも満たぬ存在。しかし、デルゲ・セントラルの住人にとっては脅威だろう。七央のJOKER化は強力だが、どうやらJOKER化の時間制限は二分しかないらしい。しかも攻撃を通せるのは七央ぐらいで……到底勝算は薄い。
「今、下界に戻れば……その隙を狙ってバベルが動く可能性が高い。……クリスよ、天界人を何人か下界へ送ってもよいか?」
「うん。いいよ」
バベルが不在の今、許可を取る手間もない。俺はすぐにメンバーを集めることにした。
俺はまず、天界の聖水の滝のある所へ行った。
そこには2人の男が居た。
「よう"アース"」
そのアースという男はこちらへと視線を向ける。
「なんだ、ヴィクトニケか…今は隣のこいつに稽古をしているところだ」
隣のもう一人の男が喋る。
「ちょ、待てよ!ヴィクトニケさんじゃねぇかよ!俺はタクヤ・チョ・マテヨって言います!」
このタクヤという男…全く知らない。恐らく一般天界人だろう。
「そうか…ところでアース。今、下界が危険な状態になっていてだな…四天使が下界に降りているらしい」
アースは目を細める。
「なに…?四天使だと?一人一人が自由神より強いというのに、下界基準で勝てるわけが無いだろう」
「あぁ、だからこそ、お前の力を借りたい。下界をしばらくの間、見張っておいてくれ」
アースは手の平を額に置いてやれやれという感じで首を振る。
「俺の手を借りたところで…たかが知れてるだろ?」
「もちろん他の天界人も呼ぶ。それに…人間も悪くない強さだぞ?」
アースはしばらく考え、答える。
「分かったよ…俺も行くとする。タクヤ!お前も実習として連れて行く」
タクヤは驚いて手を振る。
「えー!いやいやいやいや!ちょ、待てよ!俺なんかが行っても瞬殺ですよ…」
アースはタクヤに睨みを効かせる。
「タクヤ。行けるだろ」
「あっはい…」
アースが連れていけると判断したのだから恐らく大丈夫なのだろう。
「ヴィクトニケ。久しぶりに手合わせ願いたい。ヴィクトニケの居ない1ヶ月の間に…俺も強くなっている」
アースは俺が断るわけも無いという感じで、返事もしていないのに構えをとる。
「ははっ…相変わらず…血気盛んな男だ…!」
アースの能力は《ワールド・オブ・フリーダム》。相手の能力をコピー出来る上に、そのストックも出来る。さらに、あらゆる秩序を変えるとこが出来るなど…臨機応変な戦いの得意な能力だ。
「では…行くぞッ!」
その場にはアースの威圧感が広がった――
第二幕【召集】
「まずはヴィクトニケ…お前の秩序を奪う」
俺の全身からありとあらゆる力が抜けていく。
「ふん…それがどうした?」
抜け落ちていく能力は抜け落ちていくよりも速く、俺に収束していた。
「能力回収だ…いつ、奪われてもいいように"今作った"」
アースはニヤリと笑う。
「はっ…相変わらずな化け物だな…!」
アースの周りに光の柱が浮かぶ。
アースは柱に1本触る。これが、アースのもう一つの力である、コピーの能力だ。光の柱に触れることによって、ストックした能力を取り出せる。
「ヴィクトニケ…お前の能力を全て消させてもらう…!」
その取り出した能力で俺の能力は消え去る。
「ほう…中々にいい能力を手に入れたな、アース。…だが、甘すぎるぞ」
俺は失ったはずの能力をアースに見せる。
「んなっ…!?なんで…」
アースは目を見開く。
「《無限の全貌》俺の能力は非可算無限の数を誇る。全て消し去ったとしても…それはお前の能力の観測内での話だ。全貌を見ることは出来ない」
俺はそう話している間にアースと俺との間にあった空間を縮めてアースの背後に立つ。
「まぁこんな能力使わなくてもお前など倒せるが…」
光よりも時よりも動いたものとして認識されるよりも速く、アースに向けて手刀を放つ。
「ぐふぅおっ!?」
アースの顔は地面にクレーターを作るほど激しく埋まった。これが天界の地で無かったらアウターバースに風穴を開けるレベルの攻撃になっていただろう。
俺はアースを回復させる。
「うっうう…まだまだだったか…」
アースはよろりと立ち上がり俺の前に来る。
「だが、お前との勝負は飽きないぞ、ヴィクトニケ…」
「あぁ、俺もそう思う」
「アース、俺の城の前に集まっておいてくれ、すぐに合流する」
「あぁ、分かった。タクヤ。行くぞ」
「えぇ…あっはい…」
アースとタクヤは俺の城前へと行った。
俺はその間にクリスと連絡を取る。
「クリス。デルゲ・セントラルはどうなんだ?」
『特に問題は無いよ』
「そうか…分かった。すぐに俺の仲間を呼ぶから、それまでは見張っててくれ」
『もちろん』
俺はクリスとの通話を切る。
「さて、俺も行くとしよう」
俺は自身の城前へとワープする。
瞬きをしている間に俺は自身の城へと辿り着いていた。
「来たか」
「ちょ、待てよほんとに俺も行く――」
「ヴィクトニケ様ぁ!」
「お待ちしておりました」
城の前にはアース、タクヤ、ハデス、アトゥムが居た。
「それでは……頼んだぞ。アース、タクヤ、アトゥム、ハデス」
それぞれ返答を返す。
「面倒くさいが…やるからにはやらせてもらう」
「ちょ待てよ。なんで俺も行くんだよ!メンツおかしいって!」
「ヴィクトニケ様のお願いなら、なんでも聞き入れます」
アトゥム。俺の側近の一人。想像を具現化し、人間の感情を管理する役割を持つ忠実なる臣下。
「ヴィクトニケ様のお仲間さん!絶対に守ります!」
彼はハデス。ゼウスの弟で、魂を扱う力を持つ荒々しい奴だが、その忠義は確かだ。
「このメンバーには下界でデルゲ・セントラル学園の監視をしてもらう。……頼んだぞ」
するとハデスが訝しげに眉をひそめた。
「……タクヤって誰だよ」
アトゥムも同調する。
「誰なんだ……お前は」
さらに横からアースも話す。
「実を言うと俺も適当に連れてきただけでよく分からん」
アースもこう言う始末だ。
タクヤがツッコミを入れる。
「ちょ待てよ!アトゥムさんとかハデスさんはともかく!アースさんはもうちょっと知ってても良いんじゃないすか!?」
「まだ知り合って2時間だぞ…」
ちなみに、俺もタクヤは知らない。
――その頃、下界、デルゲ・セントラルでは――
廊下で七央が一人で歩いていた。
はぁ…今はヴィクトニケがいないデルゲ・セントラルにいるけれど……大丈夫なのかな。
七央がそんな不安を胸にしていると、向こうから元気な声が響いた。
「おう!七央!考え事してるけど、なんかあったか? もしかしてヴィクトニケに会いてぇのか?俺もヴィクトニケに会いてぇぜ!隣の席にいつもはいるけど、今日は居ねぇしよぉ!」
野郎だ。いつも通りの調子で騒がしい。
「いつもはノート見せてもらってるけどしばらくは俺が自分で書かないといけねぇんだよなぁ」
「えぇー!それはちょっと良くないよ」
七央は笑いながら言う。
「あっそういえば、次の授業、始まるし行こっか!」
「だな!」
そこへ教室の奥から声がかかる。
「おーい、野郎!今日は体育の教科書が必要だよ? 机に置きっぱなしだったけど。」
結弦だ。確かに今日は教科書が必要だが、野郎は当然のように手ぶらでいる。
「お!教えてくれてサンキューだぜ!“きょうかしょ”って漢字なんだな!これ、中々覚えられねぇぜ!」
野郎らしい間違いだ。
「あはは!野郎くんは漢字苦手だもんね〜」
結弦は呆れた様子を見せつつも、仕方なく野郎を引っ張って行った――
第三幕【天界人】
スタッ、と授業終わりの校舎に靴音が響く。
四つの影が降り立ち、静まり返った校庭に緊張感が走った。
「……ここが下界か?随分と空気が薄くて、まずいな」
アースが不機嫌そうに肩を竦める。
「ちょ、ちょ……待てよ〜!俺、なんで呼ばれたんだよ……!」
タクヤは声を裏返しながら不満をぶつけた。
「タクヤ、と言ったな。」
アトゥムが鋭い眼差しで彼を見やり、淡々と告げる。
「活躍次第では、ヴィクトニケ様の下に仕える資格をやろう。」
「はっ、無理無理。弱そうじゃん。」
ハデスが鼻で笑いながらタクヤを睨み下ろす。
「あなた達が呼んだんじゃないっすか!」
タクヤはぶつぶつ文句を言いながらも、結局ハデスに襟首を掴まれてずるずると引きずられていった。
その頃――教室では。
「はぁ……授業、疲れたなぁ。」
机に突っ伏しながら、七央は小さくため息を漏らす。心のどこかで、早くヴィクトニケに戻ってきて欲しいと願っていた。――ヴィクトニケなら、きっと楽勝でどうにかしてくれる。そう信じて。
次の瞬間。教室の前方に影が走った。
「七央」
「よぉ、七央」
七央が顔を上げると、そこには見覚えのある姿が立っていた。
「あ、アトゥムさん!ハデスさん!どうしたんですか?それに……その人たちは……?」
問いかける七央の前に、ハデスが一歩踏み出し声をかける。
「まぁまぁ、質問は一つずつだ。俺たちはデルゲ・セントラルに近づきつつある四天使とかいう奴らを倒すために来たんだ。
「四天使…?」
「バベルに仕える四人の天使だ。自由神より強いって噂だぜ?」
「それと、この二人の自己紹介がまだだな。」
七央は二人の見知らぬ男へと視線を向ける。
「僕はアース・アーノルドだ。」
「えっと……タクヤ・チョ・マテヨだ」
「私は夢星七央です。あとは……」
教室にさらに四人入ってくる。
「おっ!ハデスじゃねぇか!」
「天界の人達がなんでここに?」
「ヴィクトニケに何かあったのかしら?」
「訃報では無いだろうな…」
野郎、結弦、アスガ、無羽飛が教室に戻ってきた。
「おぉ〜野郎!」
ハデスは野郎と肩を組む。
「ヴィクトニケ様はそう簡単に殺られはしない…今回は四天使という自由神より遥かに強い者達がデルゲ・セントラルにやって来る…それを撃退するために来たのだ」
「そうなんですか…僕達も、手伝えることがあったらしますよ」
「あぁ、もちろんそうしてくれ」
ハデスが低く笑い、空を見上げる。
「――あとは四天使に備えるだけだな。」
その頃――天界では
白い雲を裂くように、俺は静かに歩いていた。
冷たい風が頬をかすめるたびに、俺の足元からは微かな光がこぼれる。
白い霧を裂いて進んでいくと前方に、四つの影が現れた。
「ふむ……お前らも“バベル”の手下か?」
問いかけると、男たちはゆっくりと一歩ずつ前へ進み出た。
「いかにも。我の名は――セイリュー」
「僕は白虎」
「俺は玄武」
「我は朱雀」
四方を囲むように立つ男たち。その身から放たれるオーラは、天界の空間そのものを軋ませるほどだった。
俺は微動だにせず、その力をただ観察していた。
セイリュー――“能力を持つ者すべてを書き換える”力。
白虎――“相手の行動を無に返す”力。
玄武――“全ての根源を操る”力。
朱雀――“因果律を支配し、世界の結果そのものを決める”力。
能力を覗いてみれば…いずれも天界を滅ぼすには十分な、力を宿していた。
「フッ……」
俺は低く笑う。
「調子に乗るな。貴様らの力など、ミジンコにも満たぬ」
「今からなら降伏してもいいぞ、ヴィクトニケ」
セイリューが片手を上げると、空間が歪む。
瞬間、俺の全能力が縛り上げられた。
根源の力が凍結し、白虎がその行動を“無”に返す。
両側からは玄武と白虎が圧を放ち、朱雀が因果を決定する。
「これで勝ったつもりか……?」
――その瞬間、世界が弾けた。
轟音とともに、セイリュー達、四人が吹き飛ぶ。
空が裂け、天界の光が爆ぜる。
「なっ……!? セイリュー、どういうことだ!」
白虎が声を震わせる。
「能力は封じたはずだろ!」
玄武も顔を青ざめさせる。
「俺の根源支配すら、意味をなさない……!?」
俺は、淡々と答える。
「俺は貴様らの影響を、何一つ受けん。」
その声には、絶対的な静寂が宿っていた。
「俺は自らの能力の“定義”を変えた。もはや能力ではなく“俺自身の性質”として存在している。そして、元々俺は根源を持たずとも活動は可能。根源を捨てれば支配もされない。因果律には囚われず、俺自身の行動は“無”として扱われる。行動が無に帰ろうとも、それ自体が意味を持たぬ構造になっている。」
四人の体が震える。
その恐怖は、力の差という言葉では表せなかった。
「さぁ、この世から消えるがいい。」
俺はゆっくりと右手を上げ、言葉を紡ぐ。
「《グロリアス・ゴーキネクシスレア》」
一言、唱えただけで天界の空気が変わった。
光が炸裂し、四人の存在は音もなく消え失せる。
《グロリアス・ゴーキネクシスレア》は始まりを持つ者、形を持つ者をすべて無に帰す能力だ。
俺はただ、静かに天を見上げた。
「この俺に勝てると思うなよ――“バベル”」
その俺の宣言は、天界に響きうるほどに殺気が籠っていた――
第四幕【力の解放】
それにしても――先ほどのセイリューたち。あの四人は、四天使よりも強かったのだろうか。分からぬことだが、まぁ、どうでもいい。
俺は歩を進めながら思案した。
天界の光が足元を照らすが、心は少しだけ曇っている。
「……とりあえず、七央たちに連絡しておいた方がよさそうだな。」
そう呟いた瞬間、前方の空気が揺れた。
数百の影が姿を現す。
「ヒャハッ!ヴィクトニケ!お前はバベル様には勝てねぇんだよ!」
見るからに雑兵――だがその数は百を超えている。
その視線が、一斉に俺を射抜いた。
「多勢に無勢、と思っているのか……? 贋物どもが」
俺は一言呟く。
「《ザクシス・アーナイト》」
静かな一言とともに、世界が裏返った。
無限の根源が操作され、バベルの手下たちは光に呑まれて跡形もなく消え失せる。
「……ひとまず片付いたか」
軽く肩の埃を払い、俺は通信端末を開いた。
「七央たちに、連絡を入れるとしよう」
――デルゲ・セントラル学園に戻る。
「あっ、ヴィクトニケ様からの連絡だ!」
ハデスが端末を取り出し、通話をつなぐ。
少しの沈黙のあと、ハデスは口を開いた。
「ヴィクトニケ様がバベルの手下を四人、撃破したそうだ。四天使ではないらしいがな」
アスガが腕を組み、少しだけ不安げに眉を寄せた。
「それにしても、なんで私たちを狙うのかしら?」
「“ヴィクトニケの仲間”ってだけで狙われているんだと思う」
私はそう答えながらも、胸の奥に不安が広がっていくのを感じた。
「確かにね、僕達は既に自由神やバベルの存在を認識してしまっている…ただじゃおかないだろうね…」
野郎が拳を握る。
「んまぁ、四天使とかいう奴もちゃっちゃと倒そうぜ!」
その瞬間、アースが無言で野郎くんのスネを蹴りつけた。
「いってぇ!なんだよぉ…!」
野郎はスネを抑える。
「そんな簡単に倒せる相手じゃない。油断するな」
「わ、わかったよぉ……」
場の空気が引き締まる。
結弦がふと口を開いた。
「四天使に……僕の銃弾は効くのかな?自由神に効いたなら、もしかしたら――」
アースが首を振る。
「どうだろうな。自由神ですらバベルの“手下の一人”に過ぎない。四天使には称号が与えられている。それだけで格が違う。」
アスガが青ざめた。
「ちょ、ちょっと……自由神であれだけ苦戦したのに!?そんな相手、勝てるわけ……ああもう!なんでせめてオーディンさんとかクリスさんを呼ばないのよ!」
アトゥムが豪快に笑った。
「ハッハッハッ!うむ、勝ち目はない!」
「笑いごとじゃ……」とアスガが呟く。
だがアトゥムは真剣な顔になり、七央を見つめた。
「だが――七央。君が今回の作戦の中心だ。」
「えっ……わ、私が?でもJOKER化は少ししかできないし、あの力じゃ四天使に敵うかは……」
ハデスさんが腕を組みながら言う。
「何を言う。JOKERは確かに自由神から生まれたアポストルだが、実力としては天界上位。自由神より強い。産みの存在に逆らえないだけで、戦闘技術も《ラグナロク・ビヨンド》特有の断絶能力も自由神を凌駕している。勝算はある」
アトゥムの言葉に、七央は息を呑んだ。
「あとは七央――力に頼るな。技術を磨け。お前自身が強くなるんだ」
「……はい!」
タクヤがぼそっと呟く。
「ちょ、待てよ。俺、完全に話から除外されてない?」
その言葉にアースが笑みを浮かべた。
「タクヤもだ。七央は実力を磨く。結弦は銃弾という特性を極限まで活かす。野郎は“自分を知る”こと。アスガは《エンド・クラッシュ》の解釈を広げるんだ。そして、無羽飛も、“背景の上書き”の解釈を広げるんだ。」
無羽飛が首をかしげる。
「背景の上書きの解釈を広げる……? それって、どういうことだ? 俺の《シャッター・ショット》はまだ何か進化を残しているのか?」
アースの目がわずかに光る。
「それを――今から教える。」
第五幕【神の力】
アトゥムが服から黒い球体のものを取り出す。
「これは……“強制限界進化核”だ。能力者の能力強度を無理やり限界まで引き上げる。だが――失敗すれば命を落とす」
その声に、全員が息を呑む。
「とはいえ、四天使がすぐ来るだろうという時にこれ以外の方法は使えない。覚悟を決めろ」
アトゥムはデルゲ・セントラルの皆の前に黒いコアを掲げる。
「――いくぞ!」
瞬間、全員の体から光が溢れた。
それは眩いというより、痛みを伴う閃光。
細胞が、根源が、能力そのものが悲鳴を上げる。
「くぅっ……!」
七央は歯を食いしばり、なんとか光が収まるのを待った。
そして――光が静まったとき、身体が軽くなっていることに気づく。
「な、なんか…変わった…?」
アースは頷いた。
「能力の“強度”を高めた。これで無効化の影響は受けにくくなるだろう。」
皆が無事なことに全員が安堵の息を漏らす。
アトゥムが野郎に歩み寄る。
「お前には能力がある。それを理解しろ。そうすれば、お前自身が最強の盾になる。」
「ん? オレにも能力? どんな?」
アトゥムは言った。
「“お前の理解できない能力を持つ者を即死させる”――それがお前の能力だ。」
野郎はポカンと口を開けた。
「なるほど……だから今までオレに喧嘩ふっかけてきた連中、すぐ倒れてたんだな。」
だが、野郎は眉をひそめた。
「でもさ、それって……どうやって使うんだ?」
その場に居た全員が説明に詰まった。
「え…?能力…まぁ…力を入れればなんか出来る…?」
「別に使えると思って使ったらなんか使えるからそうしただけで…なんで使えるのとか考えたことなかったな…」
アスガと無羽飛も曖昧な説明をする。
その時、ハデスが割って入った。
「野郎!必殺技のビームみたいに、全身から“バーンッ”て出す感じなんだぜ!」
「なるほど!分かったぜ!」
その理解力の謎さに、全員が一斉にそれで分かるのか……?と心の中で突っ込んだ。
無羽飛が腕を組む。
「俺の能力“背景の上書き”の解釈を広げろって言ってたけど、どういう意味だ?」
「あぁ…お前の力は、空間そのものを書き換えるという力だったな?だが…やり方によっては概念や能力すら“上書き”できるはずだ。解釈次第では、神にすら届く」
「……そういえば、考えたこともなかったな」
続いて、アースは結弦に視線を向けた。
「結弦。お前の銃は悪くないが――“それ”では足りない。」
彼は懐から一丁の黒銀の銃を取り出した。
「天界の銃 《カイゼル・リボルバー》。持ち主によって性能を変える。お前なら、神すら撃ち抜けるだろう」
結弦は目を見開き、深く礼をした。
「ありがとうございます……!」
次にアースの目はアスガに視線を向ける。
「アスガ、お前の《エンド・クラッシュ》は十分強い。だが、近接が致命的だ」
そう言って、アースは黒い剣をアスガへと差し出す。
「これは天界の物ではなく地獄の魔剣、《エイクルシス》というものなのだがな…少々使いづらく、その性能はこれで攻撃すれば攻撃した者にダメージが返るという一見意味の無い力なのだが…お前の能力であれば…?」
「…!返ってくるダメージをさらに倍にして相手にぶつけれる…!」
「そうだ。お前の能力の性質上、この剣が一番だろうと思ってな、お前にこれを託す」
「さて…これで準備は整ったな…」
その言葉に周りにはさらに緊張感が広がった。その緊張感は今までのものを遥かに越える。目に見える殺気のようだった――




