9 親友から秘密を打ち明けられて困っています
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
騎 士 :カイロ・レオン(桃)
賢 者 :ルーカス・ブレイド(橙)
宮廷医師:ジェラルド・クロウ(黄色)
講 師 :ドミニク・フェルナ(青)
「最低なのは、君のほうじゃないか?フローラの話もアリシアの話すら聞かずに、イジメていると決めつけるなんて」
そう声がしたので振り向くと、予想通り、オスカーが立っていた。
ややこしくなるから、そういうことは言わなくていいのに。
これはもうストーリーの強制力なのだから、私がアリシアをイジメていると思われるのは仕方がない。
「オスカー様、ヴァン様、申し訳ありませんが、今はアリシアが…」
そう、2人にかまっている暇はない。
泣いているアリシアを、早く落ち着かせたい。
「それなら、俺が落ち着かせよう。慰めるふりをして、またイジメるつもりなんじゃないか」
ヴァンがそう言ってアリシアの肩を掴む。
推しにここまで嫌われてしまうとは。
諦めたとはいえ、寂しい。
「君はまた、決めつけるんだね。フローラがアリシアをイジメたという証拠はあるのかい?」
堂々巡りしてる。
私がイジメたとかイジメてないとか、どうでもいい。
「2人とも、うるっさい!!泣いているアリシアを、どうにかするのが先でしょ?!」
私が大きい声を出したから、一瞬、シンっと静まり返った。
みんなに見られているのがわかる。
いたたまれなくなって、アリシアを連れて外に出た。
もうすぐ授業が始まるから、教室の外に出ている人はほとんどいない。
学校の庭園につくと、アリシアを座らせた。
色々と騒ぎがあったというのに、アリシアは一言も話さない。
「…どうしたの?」
改めて、アリシアにどうしたのか聞いてみた。
アリシアは下をむいたまま、じっとしている。
私には話したくないことなんだろうか。
「…私じゃない誰かに、話を聞いてもらう?」
アリシアがなかなか話し出さないから、そう伝えてみた。
「ううん。…フローラに、言わないといけないことがあって」
アリシアが震えている。
どうしたんだろう?
「あのね。オスカー様とお茶会をした、あの日。帰りに…ヴァン様にお会いしたの」
そうだったんだ。
それから、アリシアが話しにくそうにモジモジしている。
「それでね、ヴァン様が…私が元気ないからってカフェに連れていってくれて…」
うんうん。
やっぱりヴァンは優しいね。
感心しながらアリシアの話を聞く。
「私の愚痴とか聞いてくれて…すごく優しくて…。それでね、改めて、好きだって、告白していただいたの」
なんと!
アリシアも告白されていたんだ。
「告白されて…泣いてたの?」
そう伝えると、アリシアがまたポロポロと泣き始めた。
これではまるで、本当に私がイジメているみたいだ。
「な、泣かないで、アリシア。私がイジメてるみたいになってるから」
「あ、ごめんなさい。フローラに申し訳なくて…ごめんなさい…」
アリシアに謝られてばかりで、話が進んでいかない。
背中を擦ってあげて、ともかく落ちつかせる。
しばらくして、ようやくアリシアが話してくれた。
「私、ヴァン様のこと、好きになっちゃった」
予想はしていたけど、やっぱりそうか。




