8 親友の様子がおかしくなったようです
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーが考え込んでしまった。
「フローラは、ヴァンがその…どういう人かわかってるの?」
そう言われて、ハッとした。
私とアリシアは当たり前のようにヴァンの正体を知っているけど、ゲームの世界ではヴァンが隣国の皇太子だということは秘密にされていた。
フローラとオスカーがざまぁされるときに、初めてヴァンが隣国の皇太子だと公表されるのだ。
「え~?違うクラスの男の子、でしょうか?」
私がヴァンの正体を知っているのは不自然かもしれない。
アリシアだったら、聖女の力でそんなこともわかるんですねって言ってくれそうだけど。
ごまかしてみたけど、どうだろう。
オスカーはじっと私を見ている。
「ヴァン様がどんな人でも、好きなものは好きなんです」
そう言い切ると、オスカーがため息をついた。
諦めてくれたか。
そう思っていたらオスカーに手を掴まれて、手の甲にキスされた。
ただの挨拶だとわかっていても、ドキっとする。
「じゃあ、俺も本気で口説かないといけないね」
そう言われて、ドキドキした。
これは、不覚にも…
そう、不覚にもドキドキしただけで、オスカーのことはなんとも思ってない。
だって、オスカーはアリシアの想い人だもん。
私がオスカーを好きになるはずがない。
オスカーの手を振り払う。
皇太子の手を振り払うなんて、不敬もいいところ。
こんなに失礼なことばかりしているのに、どうして私のことを好きとか言うんだろう。
これはやっぱり、ストーリーの強制力なんだ。
きっとそうだ。
走ってその場をはなれて、アリシアを探してみた。
アリシアが席を立ってから、ずいぶん時間が経ってる。
もう、寮に帰ったかもしれない。
私も寮に帰ることにした。
寮のアリシアの部屋を訪ねてみたけど、ノックをしても返事がない。
部屋にいないのか、私に会いたくないのかわからないけど、自分の部屋に戻るしかなかった。
翌日、教室でアリシアを見かける。
声を掛けようかどうしようか悩んでいると、アリシアのほうから近づいてきた。
「フローラ!…どうしよう!!」
そう言って手を握られて、ビックリする。
アリシアは泣いているみたいだ。
何が、どうしたんだろう。
「アリシア、落ち着いて。…どうしたの?」
とても狼狽えていたので、とりあえず落ち着かせたくてアリシアを廊下に連れ出した。
すると、廊下にヴァンがいた。
「また、あなたはアリシアをイジメているのか。教室で泣かせるなんて、最低だな」
なんてタイミングが悪いときに現れるんだろう。




