7 親友にも嫌われてしまいそうで焦っています
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
「それでね。アリシアったら、外国語もぺらぺらなのよ。きっと、諸外国の方とのやりとりなんかも、アリシアだったら完璧よね」
オスカーに誘われたお茶会に、アリシアと一緒に参加する。
「へえ。アリシアは外国語ができるんだ」
オスカーはそれなりに会話にのってくれる。
「そ、そんな…少し、話せる程度で…」
アリシアが恐縮している。
好きな人の前でおしゃべりできない子だとわかっていたけど、想像以上に話さない。
ほとんど、私とオスカーが話している。
「フローラは外国語はできないの?」
「できませんし、習うつもりもありませんわ」
不敬だとわかっていて、ばっさり切り捨てる。
「でも、フローラは聖女の力があるから。むしろ他の国のものがうちの国の言葉を覚えてこればいいよね」
オスカーがそう言って微笑む。
聖女の力って、そんなに強いの?
オスカーは無駄にかっこよくて、不覚にもキュンとしたあの日のことを思い出してしまった。
「ともかく、やっぱり、お嫁さんにするなら、アリシアみたいな女の子がいいと思うんです。そう思いませんか?オスカー様?」
こうやって尋ねたら「そうだね」と言うしかないだろう。
オスカーを見て微笑むと、オスカーも私を見て微笑む。
「そうだね」
ほら、そう言うしかない。
「アリシアを妻にできる人は幸せだろうけど、俺は聖女の力を持ってる子のほうが気になるかな」
そう言葉を続けられてしまった。
さあっと、血の気が引く。
なんてこと言うんだ、この皇太子。
「あ、わ、私、急用が…」
アリシアがそう言って、席を立つ。
「アリシア、待って…」
追いかけようとして、オスカーに手首を掴まれた。
「はなしてっ」
オスカーの手を振り払おうとしたけど、強く掴まれていてはなしてもらえない。
「君はアリシアと俺をくっつけたいみたいだけど、俺が好きなのは君だって、この間、伝えたよね?」
そう言われて、ぐっと息をのんだ。
たしかに言われたけど、それはストーリーの強制力で…とは言えない。
「ともかく今は、アリシアを追いかけさせてください…っていうか、あなたが追いかけてよっ!」
皇太子に対する言葉じゃないことは重々承知している。
ついでに、嫌いになってくれたら一石二鳥だ。
「俺が追いかける理由がないし、今はひとりにさせてあげたほうがいいんじゃないか?」
オスカーにそう言われて、なんだかイラっとした。
私の親友を、私より知ってる、みたいに言わないでほしい。
「…はっきり言うけど、私はあなたのこと、好きじゃないんです!私が好きなのは、ヴァン様なのっ!」
そう言うと、オスカーが私の手をはなした。
「ヴァン?…ヴァン・セドリックのこと?」
初めてみるオスカーの顔に、ぎょっとして固まった。




