5 推しに嫌われているようです
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
「図書館に一緒に行ってあげるから、今度のオスカー様とのお茶会、フローラにも来てほしいの」
アリシアにそう言われて首をひねった。
「え?私…いないほうがいいんじゃない?」
そう伝えると、アリシアの顔が真っ赤になる。
可愛い。
「ふ、ふたりきりになると、何を話したらいいのかわからないんだもん。オスカー様が気をつかって色々と話してくださるけれど、申し訳なくて…」
なるほど。
好きな人の前ではおとなしくなっちゃうタイプか。
「うん、オッケーだよ。盛り上げつつ、アリシアの魅力をオスカーに伝えてあげる」
そう伝えて、2人でキャッキャとクエストを終わらせた。
翌日、アリシアと一緒に図書館に行く。
すると、いた!
やっぱり、ヴァン様と図書館で会うにはアリシアが必要だったみたいだ。
「あ、ヴァン様。偶然ですね」
全然、偶然じゃないけど、偶然を装って話しかけてみる。
ヴァンがチラッと私を見て、アリシアを見た。
ふうっとため息をつかれる。
イケメンのため息は美しいと初めて知った。
「…君は、アリシア・ヴァレリを召使いのように使っているのか?」
思いがけない言葉に、きょとんとする。
「フ、フローラは、私の大切なお友達です!」
私が何も言い返せないでいると、アリシアがそう訴えてくれた。
「君も、聖女様のご機嫌をとる必要はないよ。この間も、階段から突き落とされたんだろう。もう少し距離をとるべきだと思うよ」
ヴァンは、私のことをチラリとも見ないで図書館から出ていった。
これは、もしかしなくても、私、ヴァンに嫌われている。
アリシアをイジメていると思われていて、アリシアを階段から突き落としたとも思われている。
どうしてそんな勘違いをされてしまったのか。
いや、そういうストーリーのゲームだからなのかもしれない。
私は本当にアリシアをイジメていないけど、イジメたことになるのかもしれない。
オスカーと恋人になるつもりはないけど、いつの間にか恋人になって、ざまぁされて、処刑されてしまうのかも…
「私、ヴァン様に話してくるから!」
アリシアがそう言って、図書館から出ていった。
涙が溢れる。
ヴァン様だけじゃない。
クラスのモブたちも、私のことを悪く言ってる。
きっと、アリシアをイジメていると思われてるんだ。
何もしていないのに、いつの間にかゲームのストーリーと同じになってく。
…ヴァン様を諦めて、逃げようかな。
呆然と床を見ていたら、肩をたたかれた。
「フローラ!ここにいたんだ。君が本を読むイメージはなかったけど、何か調べものかい?」
オスカーだ。
やばい、泣きそうになってたから、ヒドイ顔してると思う。
慌てて顔を隠す。
「お、オスカー様。私だって、本くらい読みます。もうお城に帰られるお時間でしょ」
早く、ひとりにさせてほしい。
そう思っていたら、オスカーが私の顔をのぞきこんできた。
「え?泣いてたの?」
王族だからなのか、デリカシーが無い。
こういうときは、そっとしておくものじゃないのか。
「オスカー様には関係ありません」
そう伝えると、手をとられた。
「俺は君のことが好きだから、関係なくはないよ」
そう言われて、不覚にも、きゅんとした。




