47 まさかの妊娠に戸惑います
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
オスカーと一夜をともにした日、オスカーが寝たのを見届けて、暗いうちにホテルを出た。
最高に幸せな一夜だった。
そして、あの日、私は何もされていなかったと確信できた。
ただ、それを証明する方法は、やっぱりない。
教会に戻る…なんて、嘘。
穢れたとされる聖女が、教会に戻れるはずがないじゃん。
だから、ひとり、森の中に住むことにした。
なにせ、クエストでお金はしっかり稼いでいる。
王城を出るとき、隣国との国境近くに小さい家を買っておいたのだ。
隣国の近くにしたのは、落ち着いたらアリシアに会いにいけたらいいなと思ったから。
森の中の生活は、意外にも私にあっていた。
もともと、体を動かすのは好きだったし。
一応、聖女だから魔物に襲われる心配も少ない。
剣もあるから、なんとか暮らせていた。
必要なものは街で購入しなければいけないから、クエストをこなしながら生活していた。
街では商店のおばさんと仲良くなって、ときどき家まで遊びにきてくれるようにもなった。
オスカーと結婚する前だったから、顔バレしていなかったのが不幸中の幸いだ。
オスカーは…皇太子殿下は、予定通り結婚式をおこなったらしい。
許嫁がたくさんいるって言ってたから、その中のどなたかと結婚されたんだろう。
幸せになってくれたらいいな。
皇太子殿下のことは忘れたと言ったら嘘になるけど、毎日生きるのに必死で、少しずつ思い出にしていけそうな気がしていた。
そんなある日、妊娠していることがわかった。
少し体調がよくない日が続くなと思っていたけど、商店のおばさんに妊娠しているんじゃないかと言われて調べてみたのだ。
思い当たる相手は、皇太子殿下しかいない。
なんていうことだろう。
皇太子殿下は、結婚している。
もし、婚約破棄をした相手に子どもがいるなんてことがわかったら大スキャンダルだ。
悪くしたら、この子は殺されてしまうかもしれない。
それだけは避けたい。
商店のおばさんに、私が妊娠していることは秘密にしてもらえるようにお願いした。
それからは、さらにひっそりと森の中で暮らすことにした。
ひっそりと生活していたからか、問題もなくお腹は大きくなっていった。
街に買い物に行けなくなってしまったけど、ときどき家の前に荷物が置いてある。
商店のおばさんが、必要なものを届けてくれているようだった。
子どもが生まれたら、クエストでがっつり稼いで、ちゃんとお支払いしないと。
今は、厚意に甘えることにする。
薔薇が綺麗に咲き乱れる頃、私は男の子を出産した。




